bad week
「Hello!
You are very lucky Cinderella.
I will present you time for one week by me. 」
それは、それは、幸せの招待状。
「It is time of the selection.
Do it become Cinderella?
Yes.?No.? 」
彼女は嬉々として、YESのボタンを押した。
だって、この物語は、シンデレラストーリー。
夢から覚めれば全ておしまい。永遠なんて続かない。
一週間だけの、あなたの恋人。
もちろん、相手がいようがいまいが関係ない。
あなたは、ただ幸せを得る。
そんなお話。
当事者の彼女は、一人を選んだ。
招待状を送った主は、彼女の選んだ人を、王子にした。
王子には、余計なことなど考えさせずに、ただ単純に、彼女を愛す人物にした。
もちろん、鐘が鳴って、全て終わった頃には、
彼女は消えて、彼の愛した記憶も消えた。
周りの人達も、一体なんだったんだと、
口を開いて終わってしまうほどの時間だった。
誰も死にはしない。誰も悲しみはしない。
送り主は、そういう時間を設定したから。
それほど、短い時間だった。
だけど、今、例外が起こってしまった。
積もり積もった恋文を、友人が必死に土の中から、
掘り当てて、悲劇にくれる友に渡した。
綺麗な和紙が貼られた箱は、土によって汚くなっていたけれど、
彼が愛した人の恋文は、真っ白で、
きっちり真ん中に、「喜八郎へ」と書かれた愛しい人の字を見て、
彼は、一枚目の紙を開いた。
Oneday
『どうしてだろうね。
君といれた時間は今より全然長いのに、とても短くて、
今の一刻が死ぬほど長いんだ。
ねぇ、届いてる?喜八郎。
僕は、君の一個年上の5年生。
1年前まで作法委員にいて、今は違う。
つまり、君といたのは、3年間その間に、罠を仕掛けて、
年上、年下、同学、関係なしに困らせてきたね。
君は、無表情だって言われてるけど、僕には嬉々としている君が分かったよ。
僕と君の連鎖反応に困って、とうとう僕は違う委員会になってしまって、
君は憤怒していたね。僕は、君が静かに怒りながら、鋤を振り回す姿に、
妙に感動していたのを、今でも覚えてる。
僕は、その時から、君が好きだったから、離れたくないって言ってくれて、
手を握りしめてくれて、幸せだった。
僕ら恋仲になって、順調だったのに、どうして?
どうして、君は僕の側にいないで、そんな身元も不明な女の側にいるの?
今日、友達に祝われたよ。お誕生日おめでとうってね。
だけど、いつもなら、君が一番に言ってくれる言葉じゃないか。
ねぇ、喜八郎。僕は、ここにいる』
Twoday
『友人に、口で言えって言われたよ。
だけど、僕は君の最初の冷たい視線に、
もうダメになってしまったみたいだ。なんで、無関心な顔で僕を見るの?
なんで、僕を無視して、あの女へ幸せそうな笑みをしているの?
その顔は、僕のものじゃなかったの?どうして、実習が終わったら、
最初の「おかえり」を言ってくれないの?
僕が、間違っているのかな。教えてよ。喜八郎。』
Threeday
『ハッピーバースディ。喜八郎。
君が、また一つ大人になって、生きてきてくれたことに感謝。
だけど、おかしいな。この日は、一緒にいようって言ってたのに。
喜八郎。月が曇って、見えないよ。』
Fourday
『君の誕生日の後だったね。僕らが二人好き合った日。
誕生日も記念日も近いから、一緒にしようって言ったけど、
楽しいことは、何回あっても楽しいでしょう?って君は言ってたね。
僕は、この日を楽しみにしていたよ。
君は、覚えてなかったようだけど。
この頃、一日何をしていたか分からないんだ。鐘の音が響いて今日も終わる。
ねぇ、喜八郎。雨が降ってるよ。』
Fiveday
『喜八郎。
僕は、短気じゃないけど、長い間待つことに意味を感じないんだ。
今日、一日、あの場所で待っているから。
来てくれたら、何もかも、全部許すから、
お願いだ。僕をまだ好きなら、来て欲しい。』
Sixday
『・・・・・・あと、一日待つよ。』
Sevenday
『これが、君の答え?
君の心はとっくに決まっていたんだね。
僕の手紙は、どうやら開けられてもいなかったみたいだ。
ごめんね。しつこくて。
この手紙は、僕の思いとともに穴に埋めておくよ。
書いても君は読まないから意味が無いけど、
きっと最後の恋文だから、書くね。
僕は、もう、二度と君の前に現れない。
前に、僕は君に絶対嘘を付かない。って約束したよね。
だから、本当の本当に現れない。誓うよ。
僕は、かくれんぼ得意なんだ。だから、大丈夫。
君の全てを、早く忘れられる日を祈ってる。』
全ての手紙を読み終わった喜八郎は目を大きく開けただけで、
その姿に、滝夜叉丸は詰め寄った。
その姿は、綺麗なことに重きをおく彼自身の姿ではなかった。
「なぜだ。喜八郎。なぜ?
先輩は、この一週間のために、必死に、任務を全て終わらしていたのに。
それは、お前だってそうだっただろう?
何にも邪魔されずに、幸せな一週間を過ごすと、あんな幸せそうに言っていただろう?
それなのに、なんでだ」
「・・・・・・先輩は、待っていてくれたの?」
「ああ、友人たちが、もう、やめろと言うのも聞かず、外で、二日間待ち続けていたよ」
「・・・・・・そう」
「そうじゃぁ・・・」
それ以上の言葉は、滝夜叉丸は告げれなかった。
「・・・・・・すまない。お前の方が、よっぽど辛いのに」
ポタポタと声を出さずに、喜八郎は泣き続け、手紙に水滴をたらした。
「先輩は、女が消えたことは知ってると思うから、幻術にかかっていたと言って、
ともかく話しあおう。お前をあんなに溺愛していたんだ。きっと、元通りになるさ」
「無理だよ」
紙が濡れると思っても、一向に水滴は広がって、染みをつくるばかり。
「やってみなければ分からないだろう」
「滝だって知ってるでしょう?先輩は、私に嘘をつかないんだ。
だから、もう、終り」
じわりと、とうとう文字が溶け出した。同じように、記憶も溶け出した。
柔らかな自分を呼ぶ声はもうなくて、文字だけが、連なっている。
何か食べ物を取ってくる、それからまた考えようと食堂へ行った滝夜叉丸の
声に何も反応せずに、喜八郎は、ただ恋文だけを見続けていた。
涙で滲んで全部消えそうだから、箱の中にしまおうと箱を見れば、
最後に一枚だけ、底に張り付いている薄い紙を見つけた。
『それでも、僕は、喜八郎を愛してる。』
本当の恋文は、誰にも届かず終わるはずの思いだった。
だから、最後の最後に本心を奥へとしまい込んだ。
だけど、皮肉にも届いてしまった。
喜八郎は、とうとう涙を捨てて声をあげた。
Happy week day?
2010・6・22
【VOCALOIDのワンコール・ラブコールからの衝動書き】