ウザイ人3
パチリと目を覚まして、違和感を感じたので
くるりと回りを見渡した。
背中を伸ばして、ん〜と唸り、目をこする。
一番目は私の行動だが、二番目は私の行動ではない。
「おはよう。今日もの美しさにやられてしまって、
私は心臓停止しそうだよ。
目覚めのキスをしなくても起きてしまう
お転婆なお姫様だな。
いや、もしかして私が姫でが王子様か?
そんなことしなくても、私はいつでも受け入れ体せ
「変態去れ」」
違和感の正体に鳩尾に、前体重かけた足を入れ、
悶絶しているやつをそのまま、私の部屋から追い出した。
いつの間に布団の中入ってきたのか。
こんなことがよくあるから、対鉢屋用の罠を仕掛けたはずだが、
見れば、二三個起動している。そして鉢屋の無傷な姿。
よく料理場に出てくるかさかさ言う茶色の物体並のスピードだ。
いや。
「の生着替え、はぁはぁ」
しつこさが。
「はい、あーん」
「え、があーんを、してくれるなんて夢のよう」
「何言ってるの。私たちは恋人でしょう?
これぐらいで恥ずかしがっちゃうなんて可愛い」
「可愛いって、
私はかっこいいのほうが嬉しいんだけど」
「夜は素敵じゃない?
ねぇ、ご飯よりもっと美味しい物食べ「何一人芝居してる?」」
ドスっと、脳天チョップをしたら、黙った。
それから、やってやってとせがまれ、味噌汁が、善法寺先輩まで飛んだ。
そんな毎日を送っていると、さすがにストレスがたまるもので、
縁側で、私の横でにこにこしている尾浜に愚痴をこぼした。
尾浜とは、鉢屋と知り合う前からの友人で、
男仲間のうちでは一番仲がいい。
「だったら、別れてって言えばいいのに」
私の愚痴をひと通り聞いた尾浜は、
まるい目玉で私を覗き込む。
そこには心底不思議そうな顔をしている。
私は、はっと嘲笑した。
「言っていないと思ってる?何十回も言ってる」
脳内の回想。
それは、一回目から始まる。
「鉢屋」
「なんだいハニー」
今日こそはと意気込んで、鉢屋を呼び出した。
人気のない裏庭。風が冷たくびゅーと木枯らしが吹いている。
一瞬、決闘のようだなと思ったが、そのようなものだと思い直す。
そのころは、まだ今より酷くはなかったが、鉢屋の好き好き攻撃に
酷く疲労していて、死活問題に関わっていたからだ。
私は真っ直ぐ鉢屋を見る。
「お前と別れたいんだが」
そういうと、鉢屋は、いつもの飄々とした顔から、真剣な顔になった。
「・・・・・・・理由は?」
「私はおまえが嫌いだ」
これが、一番シンプルで、かつ一番どうしようもない理由だと思う。
好きな人とが出来たと言えば、
鉢屋はその相手をさがすかも知れないし、バレたときのほうが鉢屋を傷つける。
話がこじれるくらいなら、ずばっと言った方がいいのだ。
こういうタイプは。
「じゃぁ、永遠にさようなら」
そうして恰好よく去る前に、
鉢屋がどんな顔をしているかみようとすれば。
「!!そ、そこまで・・・「そこまで私のことを、嫌いでいたなんて。
嬉しくない。すごく嬉しくないぞ。永遠にさよならだ!!」
鉢屋は、涙やら鼻水やら、水という水を流し、至極嬉しそうに抱きついてきた。
「いや、なんで抱きつく。離せ」
「うん。離す離す」
そういって、抱きつきがひどくなった。
「おい、こら、言っていることが」
「まさかがこういうことしてくれるなんて、
やっぱりは、ツンデレだ。
ツンなあなたも好・・嫌いだけど、
デレのとき、威力二倍になって帰ってくるから、もっと大嫌い」
一回目の回想を話し終えると、
シーンと、尾浜と私の間に沈黙が出来た。
「日付に気付かなかったとか、
4月1日のイベント決めたやつ、尻に爆竹つけて、
下半身晒しながら、異常な性癖を暴露して、消えればいいのに」
そんな私の悪態に、尾浜は疑惑の目を向ける。
「気づいてないだけで、わざとその日にしたとか?」
そんな上手い話がないとばかりだ。失礼な。
「そういうと思って、ちゃんと日付を確認して言ったさ。そしたら」
二回目の回想。
「こんなことするなんて、もう別れよう」
「もしかして嫉妬?私が違う女を抱いたから。
でも、それは任務で、しょうがなかったんだ。
いや、それでも嫌だよな。私だって、がそんなことしたならば、
相手は八☆つ☆裂☆きだけれども。
あ、もちろん。前の気持ち悪い相手は、
四分の三☆殺☆しにしといたよ。
に抱きつくなんて最悪だよね。私ったら超有能。
だから、が言いたいことはわかるよ。
以外で興奮しない私に、こんな酷な任務をいれた、
学園長を半☆殺☆しにしろってことだよね?行ってくる」
「☆をつけたら、ちょっとはマシになってるとか思うなよ。
というか、行くな。マジで行くな」
本気で、学園長を半殺しにいく顔をしている。
こんな馬鹿げたことで、暗殺とかまじしゃれにならないと体を張り、
抱きついて止めれば、鉢屋は感動した顔をして。
「こんな穢れてしまった私を抱きしめてくれるなんて、もうどこにも行かない」
沈黙が一回目よりも重くなった。
三回目の回想。
「お前なんて嫌いだ!!別れる」
「」
鉢屋は酷く傷ついた顔をしていた。
言い過ぎたか?と思ったものの、いつもの私の被害を考えて、
これで別れれるのだからとぐっと我慢すれば。
「は、優しいな。そうだな。こんなことでくよくよしてなんていられない。
私は変装名人にして、天才な鉢屋三郎なのだから。ありがとう。
私らしくあれないところだった。やっぱり、はすごいな。
一言でここまで、私を私に変えてくれる。大好き」
回想が全てすむとさわっと木々の音だけが響いていた。
「・・・・・・三回目以降、そういう言葉は、
愛を育むちょっとしたイベントだと思い始めて、なにを言っても効かなくなった。
しかも終わったあと、いつものウザさの2.5倍になるという、拷問が」
「・・・・・・それは、それは、
愛が足りないってやつ?良かったじゃない。愛されてて」
尾浜の肩が微妙に揺れている。
「・・・尾浜、笑いを耐えるのやめてよ。もう笑われたほうがまし」
そういえば、尾浜はよっぽど我慢していたのだろう。
「ぷっくくく」
よく分からない笑い声で笑われた。
「あ、やっぱり笑われるのもむかつく」
やめろと言おうとしたのだけれど、
背中の重みと、見知った気配と匂いに、青ざめる。
「なーに、勘ちゃんと話してるんだ?
私がいないところで、知らないやつと話しちゃ駄目でしょう?」
「いや、尾浜は、友達じゃ?」
私の話を聞かずに鉢屋は、尾浜に詰め寄る。
柄が悪いチンピラのような形相で。
「いいか、勘ちゃん。はやらないぞ。
いくら、の可愛さが世界規模でも、
見つめられるだけで魂取られそうになっても、駄目だから。
私のだから。そんで、私がのだから。
両方向に進みまくってるから」
なんだそれは、ほら、みろ尾浜が呆気にとられている。
しかしそんなことを気にせず、こっちに振りむきなおした鉢屋は私の手をとって。
「言っただろう?
男は狼、女は女豹。友達でも気をつけろ。
どこにいても、の可愛さは世界共通だから。
それと私がいるのに、他の男の名前出さないで」
「ごめん。笑ったの謝るね。
これはこれは大変ウザいね」
そういった尾浜は大変可愛そうな目で私をみた。
2011・3・12