ウザイ人1
自分に自信がないって、それって自分自身との戦いなわけでして、
比較対象はいつだって他人でしょう。
なら、
なら、
私が自分に自信がないのは、しょうがないことでしょう。
自分自身との戦いでして、自分の分身との戦いでして、
その癖、その分身を愛しいとも思うので、
攻撃なんてできなくて、抱え込んでいます。
つまり、ねじれ曲がって、行きついた末の答えは、私は私のことが大嫌いってことなんですよ。
私の分身こと、双子で妹な郁は、
私の手のひらをしっかり掴んで、微笑むのです。
その手は、鎖のようなもの。
重くもなく、感触もなく、しかし、何よりも切れることのない。
だって、見えないけど、中に確実に存在しているんですよ。
血って。
双子だから、同じ人をスキになるのか?なんて単純な質問に、
そんな馬鹿な、双子っていっても、違うと言っていた頃が懐かしい。
ご紹介って、言われた人紹介しなくても知ってるよと、
軽口を叩けるのは、私の最後のプライドみたいなもんですかね。
良かったね、幸せそうだね、不幸したら許さないなんて、
妹思いの姉を偽るのは、簡単。
私はいつだって、自分に自身がない・・・いいえ、妹?,討覆ぁ?
同じ顔をして、同じ服を着ているのに、私は敵わない。
それって、私自身の問題なんですよ。
あはははは。
自らの惨めをさらけ出すには、自尊心が邪魔して、
代わりに、仮面をかぶることにした。
自分じゃ持ち得ない白い仮面にした。
汚れがついたら、すぐ拭えるようにした。
息ができるように鼻のところには穴がある。
でも、目だけは、片目だけにしといた。
そんな仮面をつけていることなんてみんな知らない。
そうだろう。現実に見えることのない、私の心の仮面なんだから。
物事が流れるのは早くて、妹が私の好きな人の彼女になった日から、
丁度ぴったり一週間後に、私に私が好きだと伝えに来た人がいた。
馬鹿だな私なんて、私のこと大嫌いなのに、
それなのに、私が好きとか(笑)
「それで、付き合ってくれないか?」
私、私が嫌い。
君は私が好き。
それだけで、もう理解し合うことなんてできないね。
だけど、君の顔は私の好きな人だから、
「うん」
と頷いた。
その安直な考えがそもそもの間違えだった。
綺麗な人が空からおっこちて来た。
名前を、天野 凛子っていうらしい。
凛子さんか、天女さまかどちらかで呼ばれている。
そんな存在に、妹が泣いた。
妹の彼氏が浮気して、凛子さんに、メロメロで、
妹のことを忘れてしまったらしい。
私も泣きたい。
理由の3%は、愛しい人への嫌悪。
6%は、愛しい人を嫌悪した自分への嫌悪。
30%は、悲しんでいる妹への愛情。
その他は・・・・・・・。
「でなでな。聞いてくれ。
私ほど、格好良くて、いい先輩はいないというのに、
後輩らときたら、え、それ本気で言ってるんですか?ってドン引かれた。
もそう思うか?私は6年以上の天才だって言われてるのに、
努力とかしてるのに、あ、ちょっと、無視とか、泣くぞ!!」
いや、私が泣く。
そう、この男・鉢屋三郎の存在。
今、自慢を軽やかにしかまってちゃんな、
なにより、私と正反対な、自分大好きな人間。
こいつ、最初は普通だったのに、どんどんどんどんうざくなってくる。
というか、私がイエスの返事をしたのだって、
取っ換え引っ換え、遊び人の鉢屋で有名だったからなのだ。
私が顔だけを眺めて、飽きるころに「じゃあね」が好ましいと思ったのに。
「!!!!鉢屋三郎は、今猛烈に、のデレを求めてます!!」
と私の背中から腕を回していた鉢屋が、腕に力を込めた。
「あ」
いきなりの行動に、筆がすべって、書き終わった課題に、墨が飛んだ。
そんなこと知らないとばかりに擦り寄ってくる男を、きっと睨む。
「さっさと、私の前から、消えろ!!」
「嫌だ!!だって、私、を愛しちゃってますから」
私の泣きたい主な原因は、鉢屋三郎は、
その凛子さんに気に入られたというのに、私のところから離れない。
そして、私を、愛してるなんて、信じれないこと言うんですよ。
うざくてしょうがない!!
2011・1・25