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おっとオタクなおたくさん 1



拝啓 母上様

元気ですか?俺は元気です。
友達も出来ました。いえ、ちょっと言い過ぎました。
友達だと一方的に思ってるかもな同級生です。
彼らは俺に恐る恐る近づいてくれて、ええ、行事にも無事に参加できるようになりました。
進歩。
ところで、母上様が時々送ってくるあちらの世界の漫画を
小説にしたものですが、
今日読んでたところを主人公に見つかりました。
意味が分からないと思いますが、俺もよく分かりません。
黒髪つり目美人の主人公の名前を立花仙蔵先輩というらしいです。
俺が隠していた書物と趣味をみんなにバラされたくなければ、
下僕になれと言われました。
現実世界にもこんな人いるのだなと感心したものです。

。茶」
「ある」
「あるじゃない。淹れろ」

意識を飛ばしていた俺に長い足が俺の脇腹を蹴った。
痛くはないが、これ以上放っておくとイライラオーラが視れるくらい機嫌が
悪くなるので、俺はそそくさとお茶セットを棚から取り出す。
お茶をいれる振りをして6年先輩の立花仙蔵先輩を見た。
黒髪サラサラロングに肌白いし細いし、
胸の中に入ってる主人公の姿そのものだけど、なんでこの人男なんだろう。
本当は男のふりした女ってことないだろうか。

「おまえ、今何か変なこと考えなかったか?」
「別に」
「お前が別にという時はそういうときだ。ちゃんと言わないと、
この本燃やすぞ?」

立花仙蔵先輩の切れ長の目が光った。
この目はヤる目だ。俺はすぐさま土下座をした。

「立花仙蔵先輩が女との疑惑をかけた。すまん」
「ほぉ、いい度胸だな」

ぐりぐりと頭を足で上から押さえつけられてる。
俺はMではないけれど、これくらいなら別に平気だ。
それは、きっと。
「立花仙蔵先輩は綺麗だから」

そういえば足が止まった。
「・・・まぁな。おい、この本の続きは!!狸がダメ男にみつでいるやつ」

立花仙蔵先輩は、本を掲げた。

「これ」

続きの本を渡せば立花仙蔵先輩は奪い取るように横から取ってた。
それからぺらりと長い指で捲る。

「立花仙蔵先輩。
狸は貢いでるわけではない。ダメ男の未来を信じてるだけだ」
「言われなくても分かってる。だが少々甘やかせすぎだ。これではダメ男がもっと
ダメになるだろうが」
「ダメ男は狸のおかげで早撃ちを覚えた」
「その能力どこでいかすんだ?」

オタクなのがバレて立花仙蔵先輩の下僕になった俺だが、今の生活は気に入っている。
趣味の話なんて母上としかできなかったのに、
立花仙蔵先輩が本好きだったおかげで、今ではこうして話すことが出来る。
まぁ、母上のくれる本は前世の記憶+で変わってるから二次創作だから、
あっちの世界の人達でも?っていう点あるけどね。
毎日俺の部屋に来て喋ってくれる。しかも、趣味の方で。
なんて下僕になってもお釣りが帰ってくるくらい嬉しい。
それに俺ぼっちだし、4年の彼らは友達?ぽいけど
本当かどうか聞くには俺のハートはガラス製だから
無理。
てっかあの目立つ彼らが俺なんて地味で根暗なオタクを友達認定するわけないよ。
という気持ちが強い。
一緒にいるとすごい目で見られる。
はぁとため息を吐きたい泣きたい気分でいると、視線を感じた。
立花仙蔵先輩が睨んでいる。

「おい。。なに変な顔してる。ちょっとはいい顔しろ」
「元からこの顔だ」

元からブサメンです。イケメンにはこんな気持分からないだろうが。
とささくれた気持ちでいれば呆れた顔をされる。

「いいか、。変なこと考えず私のことだけ考えろ、
そしたら、・・・見れなくはない」

ふいと顔をそらす立花仙蔵先輩に、なんとも言いがたい気持ちを抱く。
それと一番俺が下僕になっても何を言われても別に構わないのは、
立花仙蔵先輩が意外と優しいからだ。

「おい、。菓子。山中屋のがいい」
「ああ」

だから俺は今から街へおりて菓子を買いに行くのも別に苦ではない。








2011・10・3

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