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友情なんて呼んだ




残念なお知らせです。俺。
泣かないで下さい。俺。
俺は俺が大好きだから泣かれたら、たまらない。
笑ってください。笑って、事実を受け入れましょう。

俺の好きな奴には、好きな奴がいます。
きっと両思いなので、好きな人の好きな奴もいい奴なので、
もはや言うことないのですが、ちょっとした長年の思いとかで、
酒の酔いにまかして抱いてもらちゃいました。
そこで終わればよかったのですが、ずるずる体の関係です。
彼はまだ恋心を打ち明けれなくて悶々とした肉欲があったので、
俺も、そんな彼に悶々としていたので丁度良かったのです。
だけど。
俺は抱負を立てました。もう酒なんて飲まない。
特に彼らと飲まない。勢いに任せてこんなに後悔することをするから、
次は、彼の好きな奴に俺と彼の関係を暴露してしまうかも知れない。
それは、恐ろしいので、酒禁止と部屋に貼り付けときました。
俺の部屋は一人寂しいんだぜ。
しかも虐めかと思うほどみんなと離れた場所にあるんだぜ。
だから、時々寝付けなくてしょうがない後輩とかが
泊まってくれると凄く嬉しいんだぜ。
俺と竹谷の夜は、一定のリズムがあるから来ない日は分かっているから、
俺から会いに行くのはご法度。だって、俺らが望んだ体の関係は、
俺が彼の元へ請いに行けば、崩壊してしまう。俺、だって竹谷に恋してんだぜ。
区切りがつかないからそういう関係になってからは、
名前だって呼ばないようにしてるんだぜ。
奴が来ない間の寂しさを満たしてくれる後輩は大好きだぜ。
だから。

先輩好きです」

なんて嬉しいことを言ってくれる後輩に、
俺はいつものように笑顔で、彼の頭を撫でながら。

「そう、俺も好きだよ」

と答えた。後輩は嬉しそうに俺に抱きつく。ちょっとでかくなったか?
と言えば、先輩はもっと肉をつけるべきですよと言われた。
今度、美味しいつくね屋さんに一緒に行くことを約束して、
上を仰ぎ見る。どうしようもないほどの青空に、
どうしようもないほどの思いのたけをぶつけ吼えてみた。
後ろからあんたは犬か煩いですよと竹谷の後輩から苦情が来た。

「犬だったら良かったのに。そしたら発情期とか決められているし、
年がら年中発情期中な俺ら人はどうしろって言うの?」

「下品」

と首に毒蛇を巻いた少年は顔を歪めた。

「お前は発情とかすんの?人に」

「僕をそういう対象に見ないでくれますか?
せいぜい竹谷先輩ぐらいで止めといた方がいいですよ」

「人が嫌いなくせによく見ているね。なに俺に興味でもある?」

にやりと笑えば、少年はなおも顔を歪めて俺を蔑むような目をして。

「あんた本当に馬鹿だね」

それは本当・心底思われていただろう言葉に、
とうとう俺は笑い袋が切れて笑い転げた。

「あはははははは、そうだ。その通り。俺は馬鹿なんだ」

馬鹿じゃなければ、こんなことするわけない。
俺の部屋に訪れた竹谷 八左ヱ門に、一瞬声が上ずった。
昨日してまた今日もするなんて思ってみなかったので、
心の準備が出来てなかったし、風呂も入っていないし、なしだ、なしと言う前に、
彼の雰囲気が違っていつもと違って、
もう終わりだなんて言葉への恐怖と背中に刺さる視線に
必死に震える手を手ぬぐいなんてもので隠していた。
だから。
言われた核心の言葉につい正直に語る。

「目の前にいるけど、そうがどうかした?」の目の前を消して、

動揺する顔を見られなくて良かった。
自分の言った言葉で急速に覚めていく自身の熱に、
ようやくお前対応の笑顔を装備して、
俺はいつもの俺で、彼の言葉をするりと抜けて、
最初の質問に戻り俺は答えのかわりにそのまま抱かれた。

手を伸ばせば届く距離。今日もお前はとてもカッコいい。
どうしようもない感情を抱いています。
消化不良なこの感情を肉欲に任せて処理してます。
他の奴じゃなくてちゃんと好きな人に、
それはとても幸福じゃないかと思っていたのですが、どうやら地獄です。
減るはずの思いは徐々に溢れてくるばかりで、終わりが見えているのに、
ずるずるずるずる。


隣で豆腐を食っているいい奴に、本当のこと言って壊してしまおうかなんて思ってます。
でも、現実では友情だなんて呼ぶことしか出来ないんです。















2009・12・30

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