TOP  愛の終末  終末の結末

愛の終末



ある日綺麗な女性が空から降ってきました。
名前を、あさこさんとおっしゃるらしいです。
ああ、でもあさこさんと言っている方は少なくて、
天女さまとあだ名で呼ばれる方が多いでしょうね。
今日もあの方はきゃきゃと下級生と遊んでおられます。
上級生がくれば、彼女の奪い合いが始まるのでしょう。
馬鹿な事です。
ですが、この学園には女の子人なんて少ないし、その女も、
女としてカテゴライズしていいの分からない男よりも男前のくのたま
なのですから、実質、おばちゃん以外の女の子なのです。
それに群がらないわけがないといったところでしょうか。
私ですか?私は、そうですね。
男も女もいけるタチなので、どちらでも構わないのです。
ですが、あさこさんは若干好みではなかったので、
私は群れの中にいかなかったそれだけなのです。

さて、今学園内のことをいいましたね。
では、次に私の愛しい人の話をしましょうか。
ノロケ話は聞きたくない?
大丈夫です。私と彼は確かに恋仲でしたが、それは偽りなのですから。

私は、忍たまの5年生でした。
そして彼も同じ年で同じ組でした。綺麗な顔立ちに、たおやかな黒髪、
成績も優秀で、ちょっと天然な彼は、とても人気で、女からも男からもモテました。
でも、彼は、そっちのほうは不真面目で、いつも取っかえ引っかえだったのです。
そして、そのとっかえひっかえのなかに私も加わっていたのです。
告白は、私からではありませんでした。
彼からでした。
彼は、私に気があるならば、どうだ?と言われたのです。
私は、正直、ただならぬ思いをいだいておりましたから、一にもなく頷きました。
それから、幸せな未来を考えて、その夜は眠れなかったものです。
ですが、ですがです。
自分で言うのもどうかと思いますが、私はモテません。
告白も一年に一回あるかないかぐらいなのです。
一週間に一回絶対告白される男に、なんで私なのでしょうか?
疑問をいだいていましたけれど、最初は幸せだったので気づきもしなかったのです。
答えが出たのは、何人目かの男か女かが別れたあと、
彼はどうして私だけを傍に置き続けるのか不思議で、私は特別なんて
メルヘンチックな言葉を期待してましたけれど、友達に零した言葉。
私は、安全パイでした。
安全パイというのは、あまり嫉妬もせず、うるさくもなく、何かあればすぐきて、
何かあればすぐして、絶対服従。
稀におきる、人の切れた目のつなぎでもありました。
ようするにとてもいいコマなのです。
そこには、愛情嫉妬憎悪そんなものないのです。
無機質なんです。コマですから。
それを聞いた日。私は泣きました。
泣いて泣いて、何に泣いているのか分からなくなりました。
愛されていなかったことを泣いているのか。人扱いさなかったことを泣いているのか。
そのとおりだったことに泣いているのか。
分からなくなりました。
だから、彼のそばにいることにしたのです。
彼はとても寂しがり屋で、一人なんて耐えれないらしいです。
だから私をそばに置くのです。それはなんて哀れだと思いませんか?
それって、満たされてないのですよ。それって、誰も好きじゃないのですよ。
ずっと人を愛せないではないかと、あの人は時々怯えているのですよ。
だから、私はその姿を素知らぬふりして、
彼の背中をポンポンと優しく撫でるのです。

そんな毎日をおくってきました。
私は、いつも地獄のような天国のような気持ちを持っていました。
なんでお前がずっといるんだ。と嫉妬されても、
嬉しいのと悲しいのを二つ味わうのです。
いくら傍にいられても、心は手に入りません。
むしろ、一晩かぎりの体の関係の方が上で、
一週間続いた相手の方がもっと上なのです。
だって、彼は、別れられたり別れたりしたあとには、
絶対その人を思って泣くのですよ。
そして、自分を恨むのですよ。なんで、長く愛せないのかと恨むのです。
でも、私は、泣きもされないのでしょう。コマですから。
都合がいいものがいなくなった、しょうがない代わりを探すか、
ぐらいのものでしょう。
一瞬でも、彼に愛される彼等が羨ましいです。

だから、私は誓いました。
その誓いが来ないことを祈り、来て欲しいと祈っていました。
矛盾した気持ちを抱いて、長い間彼の傍にいましたが、
あさこさんが来て、ようやく誓いきそうなのです。

ずっとここに行きたいとかワガママを言ったことがなかった私は、
昨日彼にここに行きたいと言いました。
だけれど、あさこさんと一緒に買物をしたいらしいのです。
あさこさんに今度に出来ないか聞きますので、
と言った私の言葉にようやくしぶしぶ承諾してくれました。

「楽しかったですね」

「まぁな」

人ごみが嫌いな私が、朝顔市なんてと不思議に思っているでしょうけど、
あなたが、この市を好きなことは知っています。
きっと次も行くのでしょう。その時は私じゃない誰かなのでしょうね。
手には朝顔。そのお土産はきっとあさこさんのものでしょうね。
私の手にも朝顔。これは、思い出です。
空は、手に持っている朝顔と反対の色。
はしゃぎすぎたようです。ふふ、でも楽しかったです。
きっとあなたと付き合って一週間と同じくらい楽しかったです。
ですが、始まりがあれば終わりもあるのですよ。

「兵助」

前を歩くあなたに。

「私も大分疲れてしまいました」

兵助は歩みを止めません。私は立ち止まりました。

「あさこさんが、あなたが泣かなくてもいい相手だということを祈ってます。
さようなら、兵助」

兵助は最後まで歩みを止めませんでした。今はもういません。
暗い闇のなかで、私は微笑みました。
私も哀れです。
最後に、彼が私にちょっとでもすがってくれたら、嫌だと言ってくれたら、
すぐに撤回しようと何回も脳内シュミレーションしてきましたが、
必要なかったようです。
やっぱり。の感情が強すぎて、涙も出ません。
前ので分かったのですが、泣いても泣かなくても、
誰も見てなければ同じなのですよ。

そのあと、あさこさんと兵助の姿を見かけました。
微笑んでいる二人に、
切れる合間のつなぎ、なんでも言うことを聞くコマであった私は、
早く別れてよかったと思うのです。
彼から、お前はもう要らないと言われたら、もっと深手に違いないのです。


これは、下らない恋の話です。
ずっとずっと一方通行だった恋がようやく終われたお話です。
天女さまを恨んでいるお方。特に、兵助を愛していたお方。
憎いと思わないでください。むしろ、チャンスです。
諦められるチャンスなのですよ。
だって、愛されても、彼は一瞬だけしか愛してくれませんから。

ああ、でも私よりはましなのでしょう。

そんな人物に助言されるなど、おかしな話ですね。
でも、このお話は最初から最後までおかしいのですから、それでいいのかもしれません。
おっと、もうこんな時間ですか。朝顔の世話の時間です。
このところ、世話をしていたら、長次先輩と仲良くなりました。
なので、待たせては悪いので、これで失礼します。
では、さようなら。







2010・08・05



NEXT  TOP
Copyright (c) 2011 ruri All rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-