幸せって2
ぶつかってみました。
「兵助私はやっぱり駄目かしら?」
そういえば、睫毛の長くて多い彼は困った顔をした。
ずきりと胸が痛んだけど、このまま逃げるのは苦しくなるだけだから、
私は前を向きました。
「駄目ならばなにが駄目かちゃんとすっぱり・はっきり言って私の頬を殴りなさい。
そんぐらいしないと目が覚めない馬鹿な女なのです。
知っているでしょう?」
唖然とした顔。それ、私があなたに距離を置こうって言われたときと同じ顔していたわ。
お揃いね。
「簡単な話よ。兵助。私を叩いて全て終わりにしましょう?
曖昧なんて優しさではないわ。
優しいなら私をここまで混乱させないわ。
兵助。私負けたのよね。あなたはあの子が好きなのよね。
知ってるわ。だから、私を別れさすのは一発ぶって会っても
名前呼ばなくて完全縁を切るぐらいじゃないと私は駄目なのだわ。
幸せを取り戻せないし、ものすごく泣いて胸を借りることも出来ないのだわ」
フンと息を荒げに吐きました。なんだなんだと集まってきたのは元友人達で、
私は彼らにも言いました。黒か白か。間があればいいと思っていたけど
曖昧なのが一番苦しい。
だから、今回だけは黒か白か。
「さぁ、あなた達も私を叩くといいのだわ!そうすれば全部全てまるっきり
私はあなた達を忘れて幸せになれるのだわ」
なんて言葉でしょう。彼らは呆れました。一瞬間があいてポカンとしましたが、
彼女の目がとても真剣だったので、空笑いしか出ませんでした。
「俺はお前と別れたつもりはないぞ?」
兵助の言葉に、は顔をゆがめました。
「でも、あなたは私じゃない子と一緒にいるほうが楽しいのだわ。
最上級の豆腐を私じゃない誰かにあげたのでしょう?
彼らも私と前からしていた約束よりも彼女をとったのでしょう?
あなたは私と別れましたよ。そして、彼らも私と別れたのです
それがなんであるか分からないなぞと忍びのたまごで優秀である
あなた達が気づかないわけないのだわ。いいこと?
二つで満足できる女がいいなら、私以外を探して。
私は無理だわ。受け入れれないわ。
だから、あなた達と一緒には入れないのだわ。幸せではないのですもの。
私は幸せが一等だから、あなた達と共に笑いあえないのだわ」
「でも、彼女はとても弱い人だし守らなくてはいけなんだ」
「そう、だからどうした?
なんであなた達が守らなくてはいけないの?
彼女が守ってとでも言ったかしら?
彼女がそういって守っていても駄目だけれど、そうでなくて守っているのならなおだわ。
私は駄目だわ。それでもいいという子を探して欲しいの。
私を血も涙もない非情なのよ?知っていた?
ああ、もういいわ。殴って終わりすれば、こんな不快な気持ちならなかったのに、
穏便に平和で終わってさようならだったのだけれど、もう限界だわ。
私は優しい終わりなぞできないわ。
終わってみれば、いなくなっているなんてそんなの真っ平ごめんだわ。
ああ、そろそろ昼寝から起きて、探しづらいから行くわね。
さようなら。幸せをくれた人たち、大好きだったわ」
と誰かの胸に向かって、真っ直ぐ姿勢を伸ばして去っていきました。
負けたようで悔しいから、涙は出さないかったわ。
当たって砕けたわ。ボロボロよ。さぁ、貸してくれるのよね?
は、俺の彼女はそういって真っ直ぐどこかへ行った。
急に言われた言葉は俺達の思考を止めて、雷蔵が妙に焦った顔をして、
兵助すぐに、追いかけて。本当に終わってしまうよ。と言われた。
そういえば、と雷蔵は幼馴染だったな。
よく彼女の性格を知っている彼は青ざめていて、どうしようどうしようと頭を抱えていた。
俺は、雷蔵に走れといわれてようやく走って彼女の後を追いかけたのだけど、
どこにもいない。好きだった場所全部探したけれど、
彼女の長屋も探したけれどどこにもいない。
日向ぼっこを好きで良くしている木の下へよれば、
兵助と声が聞こえた気がしたけど、風の音だった。
部屋に帰ってくると、みんながみんな神妙な顔をしていた。
雷蔵が俺を見てすぐにどうしたと聞いたからさがしてもいなかったといえば
そのまま崩れ落ちた。三郎が雷蔵をあやして。
「大丈夫だ。だぞ?ちゃんと明日謝ろう?明日にはきっとケロっと忘れてしまっているさ」
「うん、そうだね。三郎」
雷蔵は三郎の声を聞いてとうとうポロリと大粒の涙を流した。
「忘れているさ」
俺は妙な胸騒ぎがしたのを押し殺した。
だって、彼女の言い分は納得いかなかったからだ。
俺は、別に別れたい訳ではなかった。急に学園に現れたあの子は、
本当に素人で危なっかしくて見てられなくて、俺達が手を貸してやらなくては
死んでしまうのに。どうして分かってくれない。
あの子にそういう感情はなくてどちらかというと雛をかえすような気持ちだと言うのに、
距離を置いてというのも、くのたまがあの子にあまりいい感情を抱かず、
悪戯ばかりさせているうちに、くのたまを見れば怖がるようになったからで。
徐々に、慣らして大丈夫なようにするつもりだったのに。
なんで、そのちょっとが待てない。
ごろりと布団のなかで寝返りを打って、
明日に会ったら、ちゃんと、彼女と保護するものの差を話しておこうと思って目を瞑った。
そう意気込んで二日後。
彼女はボロボロな姿ででもどこか清清しい笑顔で現れた。
シナ先生に怒られているなんてなんのその、目を輝かせては言った。
「楽しかったわ。まさか、あんな道があってあんなものがあるなんて!!」
シナ先生は、説教をやめ、貴方が元気が出たならそれで良かった。
だけど次はちゃんと報告をしてから言って頂戴と、お風呂へ連れて行った。
忍たまのほうでは、3年の次屋が富松に泣くほど怒られていたけれど、
「しょうがない。作兵衛だって先輩が方向音痴なんだ」
「方向音痴はてめぇだ!!
ああ、先輩まで巻き込んで、本当どうしていいか分かんねぇよ」
それを俺達は遠くで聞いていた。
が帰ってきたことを知っていたけれど、結構待っていてかなり考えていたのに、
雷蔵だってこのごろ食欲が落ちたのに、本人が元気で嬉しそうだから、
つい苛立って、行くのを止めた。
つまらないプライド。それがなければ俺達は元通りだっただろうか。
今、俺の横をが通った。
は、俺とお揃いにしていた長い髪を半分に切っていた。
俺達に向けていた笑顔を3年に向けていた。
俺を見れば嬉しそうに呼ぶ名前が今では違う奴になっていた。
「三之助、今度はどこへ行くのかしら?」
「、いや、今度こそ長屋でのんびりしようぜ」
「それ何回目だ?」「無理だな無理」
「そうだなは方向音痴だから」「だから、方向音痴はお前だ!!」
と3年の笑い声が聞こえてきて俺は拳を握り締めた。
俺がお前と会わない間に、次屋とは名前を呼び合う仲になっていた。
違う。違うんだ。。お前は恋人で、彼女は保護するもの。
次屋だって、彼女が危ない姿を見れば、きっと。
きっと。
ある日、彼女は穴に落ちてしまっていた。俺は助けようと手を差し伸べる前に、
次屋が歩いている姿を見て、助けるのを止め、屋根の上に登った。
「助けて、助けてください」
あの子の声が聞こえている、次屋はきっと助けるだろうと思っていた。
助けてその姿にが絶望して、俺達のように終わればいい。
そう目論んで上から口を覆って次屋の動きを見ていたが、
次屋は、あの子の声が聞こえているはずなのに、そのまま無視して歩いていた。
なんでだ?なんで。
俺はその感情をコントロールできず、そのまま次屋に聞いた。
次屋は俺のことを見れば、呆れた顔をしていった。
「だって、がそこで俺のこと待ってるんっすよ。
助けてって声を出さずに、じっとそこで待ってるんっす。
見えますか?あそこ」
指された方向に、が見えた。
ぽかぽか日差しが当たって温かいであろう場所で、
初めて見た背筋が凍るような無表情で、
次屋が手を振れば、ぱぁと明るくなって笑顔だ。
「あんたのときも、ずっとそこで待っていた。
それに、俺は、助けたいと思う女は好きな女一人だけなんでね。
じゃぁね、偽善野郎。ああ、あとには近づかないで下さいね。
あれでも、結構傷ついているんですから」
そういって去っていた次屋に、俺は膝をついた。
完全敗北で完敗したのは、ではなく俺だった。
「三之助!!何か言われたの?」
「いいや、箸にも棒にもかからないことだ」
「う〜〜〜む、どうしてかしら、彼らは私と別れて
前と変わりないのなんで幸せそうじゃないのかしら?」
「さぁ?そんなことより、今度行く場所は、外にしねぇ?」
「あらまぁ、・・・・・・それは逢引かしら?初めてね。三之助がそういうの」
「まぁ、ちゃんと考えがまとまってからにしようかと思ったけど、
あの人俺嫌いだわ。それじゃ俺損だなって思って」
「?損?嫌い?どういうことかしら?」
「つまりだ、俺と最後まで手を繋いでくれますか?ってこと」
「・・・・・・・・・ふふふ、本当キャラが崩れているわね」
「はいかいいえで答えろ」
ふふ、照れないでいいわ。
あなたらしくない告白の答えなんて、決まっているもの。
この場所で私をちゃんと見つけてくれたのはあなたなのだし、
手を繋げば色々な場所とか色々なこと知れてとっても楽しいから、
幸せと言うのは、毎日それとなく平凡なこと、
日向ぼっこ、一杯の水、みんな笑っている。
改め、
幸せと言うのは、毎日エキサイテング、
日向ぼっこ、たくさんの水、あなたと私が笑っていること。