幸せって1
幸せと言うのは、毎日それとなく平凡なこと、
日向ぼっこ、一杯の水、みんな笑っているそれでいいの。
それだけでいいの?
欲しがりなわけじゃないわけではないわ。
ただ大きな幸せが一発ドカンとくるよりも小出しに毎日暮らしていけたら
いいなって思う性格なのよ。
分かるかしら。
そうなの?分からないや。
そう膝を抱えて半分顔を膝で覆ってじっと彼らを見ているあなたに
私は、そっと髪を撫でて同じ場所で彼らを見た。
世界はとても複雑に見えて簡単だ。
私、綺麗じゃないから可愛くないから、
そうなるために一生懸命頑張ってけれど、天然には負けます。
私、性格そんなによくなくて我が強くて直そうとしたけれど、
それでいいって笑って私を受け入れてくれたから、
貴方に特別な笑顔をあげれました。でも、性格のいい子の笑顔には負けます。
全部駄目。全部負け。
私が悔しいのは、愛しい恋人を取られたことかしら、それとも全部負けたことかしら?
女にはプライドがあります。私はまだまだ子供だけどれっきとした女。
私の横では片手をあごにかけてみんなを見下した目をした子が私に言う。
良かったじゃない。性格も顔も自分以下の女に取られるよりは全然マシじゃない。
ねぇ、知ってる。裕子も捨てられたのよ。あの子のせいで恋人に。
同じお揃い。ねぇ、今から彼女の所へ言って愚痴でも話して、
そうね。次はもっといい男を捕まえてもっと綺麗になって馬鹿なことしたなって
思わせてやりなさいよ。
私は、そっと彼女の髪をなでて睨んでいる場所を見た。
とても幸せそうね。
いいえ、幸せなのだわ。
私がいなくても世界はまわるのだわ。そんな単純なこと全然気づかなかったわ。
だって、世界は私のために動いてなくても私の世界は私のために動いていたのだから。
ねぇ、おかしいのよ。
日向ぼっこ、一杯の水、みんな笑っている。
それなのに、私ちっとも幸せじゃない。
いつもなら、幸せだと思えることも全然幸せだって思えないの。
どうしたのかしら。分からないわ。
裕子は、確か部屋に篭って泣いているのだわ。
私もそうしようかしら。
でも、そうしたらもう私は私の感じていた幸せを感じることは出来ないのかしら?
無表情な目をして膝に半分顔隠した幼い私。
傷ついた顔してイライラと片あごを掴んでいる私。
二人とも彼ら、元恋人と元友人と彼らが愛しいと思っている子への視線を止めて
私を見た。
選択は今日も出来そうにない。
ただ膝を丸めて日向ぼっこ彼らを上から優しく眺める。
不思議だな。と三之助は思った。
不思議だなと三之助は口に出した。
「何がだ三之助?」
「左門。どうして先輩は一人であそこに座っているんだろう?」
「うーん、分からん!!分からんなら聞けばいい!!」
俺達が向かった場所は行方不明で、彼女に会えたのは三日後だったけれど
まったく大差ない格好でそこにいた。
ぼーっとしている先輩に後ろから声をかけると、先輩は昔のような先輩ではなくて、
どこか疲れた死んだ目をしていた。
「何をしているんっすか?」
「何を?そうね、何をしているのかしら?しいて言うなら迷っているの」
「何を迷ってるんっすか?」
「何を?そうね、私は幸せを考えているのよ」
「幸せ?」
「そう、幸せ。私幸せってとっても重要なことだと思うの、ほら、ご飯が美味しいとか
なんだか鼻歌が出るとかそんなことにも関わってくるのよ?」
「はぁ」
心配して損した。帰ろうと思ったけれど、足が疲れたのでそこに座った。
座って気づいたことなのだが、そこは5年生がよく見える場所だった。
変なの。この先輩は5年生と仲がいいのに、久々知先輩と恋仲なのに
なんでこんな遠くから眺めているのだろう?
さわっと風に草木が揺れて、温かく丁度いい場所にあくびを噛み締めると
「ねぇ、三之助君。ここはいい場所よね」
「まぁ、そうですね」
とっても昼寝がしたくなる場所だ。日当たり良好。
今度からはここが昼寝の場所にしようかと思うほどだ。
「だったら、彼らがここを嫌うはずないからやっぱり私のせいなのかな」
「・・・・・・なんでっすか?」
ちょっとネガティブ発言にビックリした。この先輩は何かあるたびに幸せだ。幸せだといって
暗い話をしたことがないから、先輩らしからぬ発言に、顔を向けて、なお驚いた。
「私ね、負けず嫌いなの。だから負けを認めるの凄く悔しい。
だけど、本人に向かっていく勇気もないの。どっちつかずで最悪」
先輩は膝を抱えて、顔を伏せて震えていた。
きっと泣いているのだと思う。でも、こんなときですら涙を見せない先輩に、
俺が頼りないと思われているようでムッとして。
「そうっすね。先輩は毎日毎日見てるだけで、そりゃ気味が悪いだけっすよ。
仲が良いぶん気づいてもあっちも何もいえないでしょうし?
顔を見るぐらい嫌いになってるってのも本当かも知れないし?」
震えが大きくなってけれど、ちょっと言いすぎたことも分かったいたけれども
なぜか俺は止まらなかった。
「だけど、全部もしかしてです。
けど、このまま進まなければ全部本当になりますよ。
だから、先輩。もういいじゃなっすか?
当たって砕けて、玉砕して、そんでボロボロになったら、いいじゃないすっか」
あそこで一人でいる先輩を見たときから思っていた。
きっとこの人は放っておけば壊れてしまうだろう。
「そうしたら、俺の胸くらいは貸してやります」
俺の最後胸を指す決めポーズを見て、いつの間にか膝から顔を上げていた
先輩はぷっと吹きだした。
「笑わないで下さい」
「だって、三之助君のキャラ変わってるんだもの。おかしくて」
あはははは。と腹を抱えて笑った彼女は、うん。と一回頷くと
「胸、ちゃんと貸してよね?」
そういって、真っ直ぐ一直線に、歩いていった。
2009・12・25
【メリークリスマス?な話はできなかったので、なんかかっこいい三之助を書いてみた。
いきなり現れた人に自分の恋人と友達全部取られました。泣くとか嫉妬とかよりも呆然
私が悪いのかと悶々と悩んでいる所で、カッコいい三之助登場!!というか面白使用な三之助。
この後本当に突っ込んでいくあたりがとても馬鹿。左門属性な主人公!!メリークリスマス!!】