ある日、愛子が天から降ってきた。その名のとおり降ってきたのだ。
愛子は、皆から「愛される子」だった。
心の底で決めた人がいる俺ですら、彼女の傍は心地よいと行った事もあった。
その中でやはり異常な奴は、愛子など見ていなかった。
異常であっても俺達にとっては当たり前の事実は、愛子が奴に助けられ
恋をしたところで変わってしまった。
は不破と愛子の姿を、どこか一歩遠い所で見守っていたけれど、
奴が倒れたことで、自身の気持ちに気づいたは、気持ちに整理をつけたようだ。
失恋だと泣いたに俺は真実を言えなかった。
寧ろ好機だったんだ。
徐々に不破が愛子を好きになって離れるたびに最初は愛子に気があったから
面白くはなかったけれど、と以前よりもそばに入れる事実に気づいてからは
もっと、早く、すぐに、今すぐにくっついてしまえと祝福するほどだ。
つまりだ。俺は愛子よりもが好きだった。
もちろん、憧れではない。
抱いて、孕ませて、誰も手の届かないところへ隠して、
俺だけのものにしたい狂気の愛と、
口付けして、夜手を握って、二人笑いあって、
帰る場所はお前だと言える恥ずかしい愛を両方持っていた。
だから、俺は彼女が失恋だと言った不破の感情を憧れだと思っている勘違い
を訂正せず事の成り行きを傍で見ていた。
そして、ちゃんと終わらせなくちゃね。
と言った彼女は、不破と愛子を見て、今に至る。
・・・・・・・・・抱きしめてみた。温かくて生きている彼女に、
俺の涙が彼女の頬に伝って、泣いているように見えた。
「、お前はそんなに不破が好きなのか?俺じゃ駄目なのかよ」
答えなど帰ってくるはずもない一人芝居は、
「あらま、あなた私のことが好きだったの?」
と気の抜けるほどあっけらかんな音で帰ってきた。
パクパクと色々言いたいことは一杯あったが、彼女は朗らかに笑って、
「まぁ、隈がますます酷くて、今度はあなたが倒れるんじゃないの?」
「バカモンが」
「ええ、私馬鹿なの知らなかった?」
「知ってる。心配したんだぞ」
「知ってる。あなた泣いてるから分かるわ」
「っ俺は、もう二度と目を覚まさないと」
「ええ、ごめんなさい」
「お帰り・・・」
「ただいま。文次郎」
俺は強く抱きしめた。もう二度と帰ってこないことがないように。
今度する恋こそにとって最後になるように。
自分のせいだと泣かせない結末を二人で作っていこう。