私の隣に友人がいる。
別にいなくてもいいと言えば、ここまで来てそう簡単に捨て置けるか。バカモン。
とデコピンされた。私は額をさすって、彼がいる場所へ行こうとして、
なんでだろう。5年生と愛子ちゃんと笑っている彼の姿を見て、
ちゃんと考えていた言葉が消えて、ちゃんと終わらそうと思った言葉が消えて
「          」と口が動いて、それが音になって誰かの耳に入る前に、


フリーズ。


無理やり、電源のコードの根元を引っ張られ落ちた。
遠くで、聞こえた友人の慌てた声が聞こえた。
抱きしめられている。大きな声でと言っているから、
目蓋が落ちる前に彼に言った。
声が大きい。私は寝るだけだから大丈夫。
このことは雷ちゃんには言わないでと目を瞑って落ちていった。





起きろ。起きてくれ。起きないとどうするか分からないぞ。
お願いだ。真実を言うから起きてくれ。
お前のことを探し始めている奴がいるんだ。
そろそろ俺がお前を隠しておけるのも限界なんだ。


お願いだ。
起きてくれ。


昔から、彼女の場所だけが何か違った。
何かがなんだか説明できないから何かなのだが、仙蔵に言わせると彼女は歪らしい。
仙蔵は彼女をあまり好きではなかった。
いいや、仙蔵の抱いている感情が何か分かる。
俺も抱いていたが、最終的に俺と仙蔵は違う方向になった。
くのいちでも浮いている彼女は、喋る人がいないというほどではないけれど
どこか一線置かれていて、友達と呼ぶ人がいなかったようで、
俺がなんだかんだ言って傍にいるうちに彼女の中で俺は友達になった。
その姿を、面白くなさそうに見つめていた仙蔵は、
一時、俺と彼女を無理やり離そうとしていたが、
彼女が二年になった時、彼女が幼馴染に出逢った時、邪魔するのをやめた。
全ての歪みが彼に向かっている、だからお前がそうなることはない良かったなと
わざわざ余計なことを知らせてくれたが、俺は彼女の友達をやめなかった。
付きまとうことをやめなかった。時にいつも温和な幼馴染は化けの皮を脱いで
仕掛け・からくり・制裁・忠告をされたが、
一年上で学園一忍びをしている俺にとっては可愛いもので、
鼻で笑って一笑した。彼の目には俺に憎悪しかなかったが、
彼女が現れ奴に笑顔を見せるたびに立場は逆転した。
 と不破 雷蔵はお互い依存しあっていた。
それは俺の目から見ても確かであった。
一度、なんでそんなに奴に執着するのか?と聞いたことがあった。
昔、が好いた男と良い関係になり、恋仲になる前に、
不破は二人を引き離し、最悪で幕を閉じさせた。
男が一般人だったのが悪かったのか、が好きになったのが悪かったのか、
彼女は、帰ってくることのない男の終末を知って、ポロリと一粒の涙を流したときだった。

彼女は不破に憎しみを抱かずに、終末を知らない顔をして、
次からはしてはいけないと注意するだけだった。
なんで許せるのか俺は理解できなかった。
だって、彼女は本当に男を好いていたのだ。
男に貰ったものを花が綻びような顔で喜んで、
会える日を数えて心待ちにしていたのだって知っている。
俺は不破を殴った。彼女が殴らないから殴ったんじゃない。
彼女は殴らないだろう、ただ俺が心底ムカついたから殴った。
鉢屋の殺気よりも、俺の殺気のほうが強くて、それと鉢屋も知っていたのだろう。
黙って、俺を睨むだけだった。その帰りでもあったのだ。
彼女の部屋に行くと、彼女は男から貰った手紙を焼きながら
ポロリと泣いたから、俺もポロリと口にした言葉に彼女は困った顔をして。

「だって、文次郎。きっと悪いのは私なの。だって、私は」

ここから記憶がない。
何を言われたのか記憶がないが、衝撃を受けたのは覚えている。
静かに眠っている彼女の横を勢い叩いてみた。
ダンと大きな音を立てたものの、彼女は目を開くことがなくて、
彼女の倒れる前に言った言葉がなければ、保健室に連れて行っただろう。
いいや、本当は一週間も目を覚まさないのだから連れて行ったほうがいいのだ。
分かっているが、彼女の不在を隠す協力をしてくれた仙蔵にも言われたけれど、
彼女の体の不調の原因を知っている俺は、原因たちが来る可能性がある場所に
彼女を連れて行きたくはなかった。