神様神様。僕は絶対叶えたい夢があります。
神様神様。もしそれを叶えてくれないのなら、僕は。
小さな僕が彼女に言う。
「ぼくおおきくなったらねぇさまといっしょになる」
「あらま、雷ちゃん。駄目よ。そう簡単に言ってしまってわ」
「うーだって、ぼくねぇさまよりも好きな人いないよ。だいすきだよ。
ねぇさま、ぼくじゃぁだめ?」
うーんと腕を組んで真剣に悩んでいる姉さん。
「そうねぇ、じゃあこうしましょう」
姉さんは昔から不思議な人だった。
向かいの姉さんはいつも大きな石の上に座って、
周りの子達が遊んでいる姿を微笑んでみている人だった。
僕と一つしか違わない、なんて嘘のように彼女は落ち着いていて大人っぽかった。
彼女は大体周りの人に優しい人であったけれど、特に僕に優しかった。
優しいと言っても間違えたことをすればちゃんと正してくれるし、
危ないことをすれば鬼のように怒って説教が終われば優しく抱きしめてくれる。
三郎に言えば飴と鞭の使い分けがうまい人だといったけれど、
八方美人だと三郎は言わなかった。
僕が4年で気づいたことを、三郎は僕について彼女に会った二・三回で気づいていたんだ。
みんなに優しいけれど、他の人の優しさと僕への優しさの質が違っていたことに。
気づいたときは、恥ずかしさよりも優越感に浸って
彼女のところへいつも何かと用を作っていっていた。
彼女は僕を否定することはなくて、いつも前へ前へ進ませてくれる人だから。
三郎が時々いじけて、私と先輩どっちをとるんだ!!と言えば、
悪いけど姉さんだ。
彼女は僕の世界の全てで、何もかもで、彼女がいない世界などありえなかった。
彼女と幼い頃に交わした約束もそろそろ時期が来る。
「そうねぇ、じゃあこうしましょう。
この日から十年たっても私が好きなら一緒になりましょう」