そして始まった奇跡からの物語。始まりは誰かの叫び声。
ここからの私の立ち位置は、物語の行方を見るただの読み手。
さぁ、見ていましょう。神が起こした奇跡と人が作為的に起こした偶然を。

愛されたいと思っていた子は、運のいいことに神様に愛された。
私はそれで十分凄いことだと思うのだけれど、
彼女は奇跡を望んだの。私はそういう欲望の多い人が大好き。
私が欲望が少ない分、そういう人に憧れるの。
だから、これから私のノータッチ。
どうなるか行方だけ見て流されるまま流されてみたいと思ったの。
愛されたい子。そのまま愛子という作為的なものを感じる名前の子は
みんなの心の隙間に入った。可笑しなくらい自然で、
可笑しなくらいみんなあの子に敵わないと泣いているわ。
私?私は、残念な結果が出ました。

「ねぇ、雷ちゃん。みんなと一緒のところへ行かなくても大丈夫なの?」

「何言っているの。姉さん。みんなは行きたい場所へ言ったのだから、
僕はちゃんとみんなと同じように行きたい場所へ来ているの。
それとも、僕は邪魔?」

いいえと返しながら彼の人よりも多い髪を撫でた。
ふさふさ。
呆気にとられるくらい簡単に雷ちゃんは私を選んだ。
それほど私は彼に毒を飲ませ続けていて、もしかしなくても
私はとりかえしがつかないことをしてしまったのかしら。
だって、愛子ちゃんの愛されたい願望はちゃんと作動しているのに、
現に彼女に恋人を取られたくのたまたちが、泣くだけで終わるのよ?
効かないほど私を愛してくれているのかしら。
重いと言えばいいのか分からない彼の感情に私は揺らいだ。
なんてこと。人の死を初めて見たときも、素敵な人が私に口付けをしても
敵に囲まれて死にそうになっても、揺らいだことなんてなかったのに。

でも。

異常はとても気づかれやすいから私は普通を装っていたのだっけ。
奇跡を与えた神様が気づいたみたい。
おかしいのよ。彼女、みんなから愛されたいはずなのに、
急に雷ちゃんを狙い始めているみたい。
私の友人はギリっとそれを羨ましそうにみて、
女は手に入りにくいものを欲しがると喚いていたわ。
そうね。みんながあなたに夢中なのに
彼だけがあなたに落ちなければ欲しくなったと言うのもあるけれど、
優しくてどこか包容力もある。もともとくのたまに人気な子だから、
それは当たり前じゃない?と言えば、友人は目を見開いて、
お前それはノロケかと言われた。失礼な真実を口にしているだけなのに、
なんでそんなことを言うの。と怒れば一つのデコピンと助言を言って帰っていった。

「これでお前は好敵手と認められたわけだ。気をつけろよ」

私の立ち位置は読み手から変わりまして主役のライバルになりました。
格上げおめでとう。
ありがとう。何故か全然嬉しくないわ。