ねぇ。とたわいもないことを話しているとき、
縋るように見つめる目はまだ私を見ていて、
でもやめて!!って拒否することは一生ない。
つまりところ、私はあなたと結婚するけど、
あなたをちゃんと真剣に好きだけれど
あの子への思いを捨てきれていなくて、
きっとこのまま持ち続けて結婚して、死んでいくでしょう。
あなたそれでいいの?なんて・・・・・・言えるわけなかったから、
たまたま聞こえた声に身がすくんだ。
立花 仙蔵は私が聞きたくても聞けないことを文次郎に聞いていた。

「あれは最後の最後まで不破が好きなままだ。お前はそれでいいのか?」

その音色は、急に指を指され、私はお前が嫌いだと宣言されたときと
同様の棘を含んだものだったけれど、そこにほんのわずかの心配が入っていて
口の端が上がった。文次郎。あなた私より好かれているようよ。
でも、私が嫌いなのだから、あなたは普通になるのかしら?
と、違うことを考えなければ、私は今すぐにここから走り去っていっただろう。
仙蔵の言っていることは、何一つ嘘偽りなく正真正銘に真実であり、
二人の間で一番のネックであった。
異能者であることよりもそっちのほうが大きすぎて、口に出すことすら出来なかったのを、
・・・・・・立花 仙蔵は嫌いだといいながら本当は私のことが好きなのではないだろうか。
じっと体育座りして音を立てないようにするのは気が疲れる。
早く言って欲しいようで、何も言って欲しくはない気持ちが交じり合って、

「俺は」

と文次郎の声が聞こえたとき、なぜか目を瞑った。

「俺は約六年間あいつの傍にいた。だから、お前に言われなくてもちゃんと分かっている」

「なんだ、随分聞き分け良い。お前、自分以外思っている女がいいのか?」

「馬鹿言うな。いいわけないだろう?だけど、それは他の女の場合で、
不破とを見たときあれ以上にはなれないと分かっていた。
だけど、傍にいて、好きだ言い合えて、一緒に歩めるのならば、俺は二番でも我慢できるさ」

ああ、もう。この人はどこまで。どこまで。
口元を隠して、私は
ぽかんと口を開けている仙蔵を思いっきり上から叩く。

「あなた、時々男前過ぎて嫌になるわ」

本当に私みたいな阿呆と結婚して幸せって言ってくれるのはあなたぐらいね。
とお決まりの嫌味を言えないほど真っ赤に茹蛸。
でも、馬鹿に出来ない。私も同じ顔しているから。