こんにちわ。
私は、2年B組 26番 二宮 芙美子
芙美子って名前あんまり好きじゃない。
蓮のように美しい子供って意味だから、
蓮って、仏様の代名詞だよ?
私そんなに、できた人じゃないの。
だって、ここに来た理由は不純。
前の世界で、子供向けアニメを見ていた。
昔からずっとやっていたんだけど、時代がようやくあったのか、
今や、ミュージカルとかになるほどの勢いがあるアニメだ。
私の属性は、聖とは逆の、腐。
脳内は腐りきって、かってに妄想した登場人物の恋愛事情に、悶える。
ああ、この世界に入って、彼らを見れたら、とても

とても、素敵なのに。

なーんて、考えて、テレビのブラウン管に手をあてると、
コプンと音がして、そのまま私は穴に落ちるように、画面の中に落ちていった。
う、嘘でしょう?

目が覚めたら、夢みた場所。
ううん、きっとこれは夢に違いない。
私が、こんなに行きたい行きたいと願っていたから、
こんな夢を見ているんだ。

だったら、と色々の幸せな妄想のために、色々な人物と仲良くしよとしたけれど、

「お前は、不審者だ。俺たちに近寄るな。曲者め」

文次郎が、一括。あ、あれ?
後ろにずらりと並ぶ6年生の瞳はみんな冷たいもの。
おかしなぁ。ここは王道に好かれるはずなのに。

「い、いたぁ」

あ、あれ?
穴に落ちた私が感じるこの痛み、それにぬるりと生っぽい感触。
赤、赤、赤。
ああ、くらりと視界がゆがむ。

私は、本当にこの世界の住人になってしまった。
なんてこと。閉じ込められた。

目が覚めると、草の匂いが強い。
ここは、どこ?いいえ、きっと私の部屋だわ。
匂いからしてそんなことはありえないのに、一抹の期待を込めて起き上がると、
そこには、優しそうな人がいた。

「どうですか?痛みますか」

「いい・・・え」

「そうですか。でも、あなた涙を流していますよ」

「え」

目から、ポロポロこぼれ落ちていく涙。
嫌だなぁ。初対面で、泣くなんてみっともない。
そう思って強くこするとする、手はその人につかまれて。

「怖いですか?大丈夫。ここにあなたに危害を加えるものなんていませんから」

なんて、優しく私の背中をなでるから、ついに嗚咽が止まらなくなった。
私、二宮 芙美子。
落第忍者の世界に、閉じ込めれた。
帰りたいけど、方法が分からない。
私のよく当たる第六感が告げている。
もう、二度と、帰れないと。

ああ、なんてこと。
泣いている私を慰めてくれたのは、 くん。
彼の存在は私に癒しと絶望を与えた。
私はこの世界を知っているけれど、彼の存在は知らない。
この世界が、二次元じゃないと知らせる存在。
ここは、リアル。人を殺して、生きるかどうかの世界。
私が味わったことのない過酷な世界。

どうやって、私は生き残ればいいかしら。
どうやって、と包帯を持って考え込んでいたら、
白い腕が見えた。ゆっくり視線を動かして、私はくんを観察した。

ああ、こうすればいいのね?

私は必死だったから、私のしたことが、どういうことだかなんて知らない。
悪いことなんてした?
知らない世界で閉じ込められて、
助けてくれた人は、永遠に私を助けてはくれない。
だから、私は私を助けるしかないの。
近づいていけば、すんなりと私の望むようになる。
その理由を追求して、知り得たこの能力。
私は、対象物に、近づけば近づくほど、
彼らの大切な人と取り替る事ができる。
一人に、二人はできないから、一人に一人だけだから。
前の人への感情は薄れて、消えていく。
絶望に見合うだけの能力を、使ってなにが悪い?
くんは、たくさんあるでしょう?
だから、ちょっとだけ、ちょっとだけ頂戴。








2010・4・25