白い包帯片手に、私は微笑む。
そうすれば、彼らは私を認めて、愛してくれる。
愛されれば、私の居場所は手に入るのでしょう?
だけど、それでもまだ弱い。
一番強いのは、情とは、愛情だと思うの。
だから、私を誰にも渡したくないほど愛してよ。
そう、望んだ私は、彼らの望む姿を演じてきた。
それなのに、金髪の髪の色をした彼は、私に背を向けた。
「どうして、何がいけなかったの?」
答えは、返ってこない。
もしかして、お菓子がダメだったのかな?
そんなこと望んでいなかったのかな?
こんなんじゃ、駄目だ。
どうにかしなくちゃ。と、4年生の長屋に向かっている時だった。
茶色の癖毛を、風に遊ばせて、彼は優しく微笑んだ。
「ちょっと、いいかなぁ」
ほわほわとした彼の姿に、焦っている心が緩む。
一、二もなく即答で是を言った私に、彼は破顔させる。
「僕、芙美子ちゃんを、好きなんだ」
まっすぐこちらを見てくる目と、少し赤く染まった顔。
拳は、白くなっていて、彼が真剣なことが分かったから、
私は、次の予定を全て白紙にした。
ああ。私はこれで。
そう、思うと、ポロポロと涙が、頬を伝う。
慌てている彼の姿に、私は、手を横に振り、違うのと答えた。
「私も、私も好き」
絞り出した声に、彼の表情が見る見る変わっていって、
彼で良かったと心の底から思い、
そして、私はようやく、この世界に私は受け入れられた。
私を愛してくれた人は、ふわりと綿菓子のように笑う。
二人、手を繋いで、伊作くんと呼べば、すぐにこちらを向いてくれる。
目には、私だけ。
幸せだわ。そう思ったのは、数日間で。
「どうしたの、芙美子ちゃん?」
「え?」
「あそこで、怪我した人がいるよ?」
彼が指さした人を見る。
確かに、傷ついているようだけれど、私たちこれから、街へ出かけるから、
そんな暇なんてないのに。
動かない私をみて、伊作くんの眉毛がおかしいなぁと、いうふうに動いたから、
慌てて、懐から白い包帯を出した。
しゅるしゅると白い包帯を、巻きつける。
横で、私を愛しそうに見つめる彼。
ああ。なんてこと。涙が零れそうだけど、耐える。
全て終わったあと、忘れ物しちゃったから、ちょっと待っててと、
部屋に帰って、白い包帯を投げた。
息が荒く、「なんでよぉ」と声にならない音が出た。
あんたは、もういらないの。
白い包帯から連想される白い腕の優しく微笑む人。
何も悪くないけど、心の底から憎くてしょうがない。
白い包帯が、コロコロと部屋の隅まで転がっていく。
目を乱暴に擦って、大きく息を吸い込むと、
鏡で、自身の姿を確認して、部屋を出て行く時、上から声が聞こえた。
「忠告するよ。お嬢さん。最後は逆らってはいけないよ」
そんなこと、どうでもいいわ。
それより、私、彼にいなくなって欲しいのよ。
それには、どうしたらいいかしら?
周りをみれば、私を睨む女の姿。
どうすればいいか。思いついて、ニヤリと笑った口元を隠して、
足軽く彼の元へ急いだ。
2010・5・4