全てを語る前に、私は一つの質問をしなければならない。
「私の好きな花はなんですか?」
言われた質問に、一回目を大きく開いて、簡単な質問とばかりに
食満 留三郎は答えた。
「お前の好きな花は、白椿だろう?」
「ざーんねん。
それは、前のの答えです。
実習に失敗して、みんなの足を引っぱった時にあなたがくれた花です。
食満 留三郎先輩」
「前のって」
「前の私、あなたのことが大好きな私は、あなたがたに殺されました。
塵ひとつ残らず消えました。
あなたとの記憶、あなたへの愛情、あなたへの態度、全てなくなったのです」
「巫山戯るな。お前は今目の前にいるだろうが」
本気に怒った顔、怒鳴られる行為、初めてだから、恐怖がめぐったけれど、
それ以上に、前のへの哀れと、彼らへの怒りが勝った。
「巫山戯るな?こっちがいいたい」
ジロリと睨み返す。
どうやら私の表情は、食満 留三郎がたじろぐほどのようだ。
「私は、あなたが言うほど、貶される覚えはない。
なにがシノさんが、健気、美しい、可愛い?
皆に甘やかされて、何もできない、何もしない、
帰ろうという意思さえみえない。
周りが見えない、自分しか見えない、
仕事を増やすような女に、負ける私などではない。
だけど、人の価値観は色々で、あなたが言った、
手がボロボロが嫌いな男と、それを好きな男がいる。
だったら、私は、ボロボロな手を愛してくれる男のもとにいく。
だから、
愛していましたよ。
さようなら。食満先輩」
私は最後に食満 留三郎を思いっきりグーで、顔を殴った。
「それと、これは慰謝料です。人の事思いっくそいいやがって、
お前だって、小松田さんよりも、ちっとも格好良くも、いい男でもない」
そして、小松田さんの手をとると、そのまま、走ってその場から離れた。
後ろから、鼻から血を流している食満留三郎とか、
顔を青くして立ち尽くしている天女とか、見えた。
くノ一の領域に入り、自分の部屋に来ると、手を離し、
思いっきり畳の上に足をついた。
「だ、大丈夫。ちゃん」
「・・・・・・・あ、あはは」
「あはははははははっは。みた?あの顔、見た?
あはははははは。イケメンが、鼻血出すと、笑える。
あはははははっははっははは」
私の姿をみて驚いている小松田さんの肩をガシッと掴む。
「なによ。笑うときは笑ってくれるんでしょう?ほれー」
「ちょ、ちょっと、脇の下は弱いんだよ」
「あー、そんな感じ。ほれー」
脇の下をくすぐると、想像以上に笑い始めた小松田さんに、
あわせるかのように私も笑う。
「あはははは」
「あははははは」
「「あはははははは」」
二人で涙がでるほど、笑って、畳の上に大の字で寝転ぶ。
「ごめんね、ありがとう」
「なにが?」
「疑ってごめんなさい。小松田さんっていつもマヌケで、ドジでどうしようもないから、
変なところで鋭いこと忘れて、私、小松田さんが私のことちゃんと見ていてくれたこと、
気づかないで、勝手に無視してた」
「え、僕って無視されていたの?」
「うん」
そうなの?と今更、ショックを受けている小松田さんを無視して話を続ける。
「ありがとうが、色々、ずっと私を支えてくれてのありがとう」
「大げさだなー。逆に僕がいつも助けてもらっていたよ」
「ははは、これのこと」
「え」
小松田さんが慌てた様子で胸元を確認して、
私の手を、見る。くるくる回しながら、私はそんな彼に、苦笑する。
「小松田さん。忍びなのに簡単に取れるのはどうかな」
そういって、白い小さな菊。白菊を見つめて、これまでの日々を思い出して、
涙がつぅーと溢れてきた。
「私、これのおかげで、生きてこれた。
飲み込まれそうな暗い闇も、これがあるから、耐えれた。
小松田さんにとって、なんでもないことだと思うけど、
私とって十分大切なこと」
だから、という前に、強く抱きしめられた。
「僕、頑張るから、絶対幸せにするから、
だから、だから、笑って」
ぎゅーと意外と厚い胸板にちょっと頬を染めながらも、
私は疑問を口にする。
「あのさ。小松田さん。さっきから思ったんだけど。
それは、愛の告白ですか?」
「え?」
私に言われて、これまで言われた言葉を思い出して、顔を真赤にさせた。
「ええーでも、僕に取ってちゃんは、姉で、あ、あれでも、
それは、前ので、今のは、泣かせたくなくて、笑って欲しくて、
あれそれって?えーと、えーと、つまり?」
答えを一生懸命考えている小松田さんに、私は笑った。
心の底から、幸せと感じた瞬間に出る笑顔で、
何も考えていないから、綺麗でも、なんでもない、純粋な笑顔。
「頑張らなくても、小松田さんは、十分私を幸せにしてる」
そういえば、彼は惚けたような顔をしてから呟いた。
「ああ、そうか。これが、恋だ」
2010・4・20
【傍観で、眺めている話だったけど、途中から完全小松田さんの話に、あれ?
・・・・・・・気にいってくださったら幸いです。】