「思ひわび さても命は あるものを
 憂きにたへぬは 涙なりけり」

今日、私は死にます。もう、耐え切れないんです。
でも、私が死んだことで、あなたが、嘆き悲しむ必要なんてないんです。
私は、今ならまだ幸せに死んでいけるのですから。
まだ、彼の笑った顔を、覚えてますから。
涙が枯れ果てた後に出てくるのは、笑みだけなんです。
そんな思いを、あなたはしてくださいますな。
あなたのこと心残りではありますが、
少々早く、空の上から、あなたの幸せを祈っております。
それでは、そろそろ、黄泉の国へ旅立ちます。
さようなら。






目が覚めたら、大勢の人が泣いていた。
お通やみたいと思ったけれど、私が目が誰かの目とが合うと、
彼女は、赤く晴れた瞼を、大きく開いて、
叫んだ。

が、が生きている!!」

さてはて、死んでいたのは、私だったようだ。
しかし、難儀なものだ。
私は、私ということを忘れてしまったようだ。
そんな日々から、一週間もすれば、周りから言われた情報に
より、という人物の出来上がり。
私は、。忍術学園のくのいちの5年生。
両親は健在。健康すぎる体に、普通の女の子では、出来ないことも少々出来ます。
どうやら、白の色が大好きだったようで、髪紐も、筆入れも、服も、白の服が多かった。
白の服、死装束みたいだ。と思って、他に服がないかと探すと、薄青色の服を見つけた。
それは、奥にしまってあり、大切に大切に保管されていた。
それがどういう意味か分からず、私はそれを着た。
それを見た友人たちは、口元を隠して、顔を青くさせる。

「それを、脱ぎなさい」

「これが、どうかしたの?」

「・・・・・・あのね、聞いてちょうだい」

そっから聞いた話は、まさに夢物語。
私は愛しい男の人がいて、その男と恋仲になった。
しかし、天の上から降ってきた、それは、それは美しい人、
天女とやらに男の心はとられてしまった。
私は、泣いて、泣いて、泣いて、部屋にこもってた。
何をしても、何を言っても私は部屋から出てこなかった。
そんな日が続いて、急に私は外に出ていくと、彼女らと街へ出かけたり、
遊んだり、楽しそうに話をし始めた。彼女らは、私の様子に喜んで、
ようやく心の傷が癒えたと、思ったらしい。
けれど、次の日私の部屋に行けば、私は手首を切って。
現実とは思えない。私がその物語の主人公だととてもじゃないけれど、信じれない。
私のキョトンとした顔に、彼女らは、肩を落として、安心した様子で言う。

「忘れてしまって良かった」

「   なんて忘れてしまえばいいのよ」

誰か一人が行った名前に、もう一人の子が口を隠す。
周りがちらりと私を伺っているけれど、私は、
何がなんだか理解できない。

「   を、覚えている?」

そう、恐る恐る私に聞く彼女らを、これ以上心配かけれないと、
私は嘘をついた。

「いいえ、覚えていない」

彼女らは、肩から荷を下ろしたかのような顔をして、

「次のお休み、服を買いに行きましょう」

彼女たちが、いいと言った服を買って、暖色の色
蜂蜜色、薄桃色、青竹色、水柿色。
薄青色の服は、紐をくくって、元通り奥へ隠しておいた。

それにしても、私は思う。
小さい白い花が、いつも私の部屋の前の廊下に置かれている。

最初は、気のせいだと思っていたけれど、目が覚めてからこう毎日だと、
流石に私宛と分かる。
これは、私の好きだった人とやらが、置いていってくれているのだろうか。
その花を手にとって、本の中に挟んだ。
そして、違う本から取り出した同じ花の押し花を、小さな箱にいれようとしたけれど、
箱の中は、一杯で、今日買い物のついでに買った新しい箱に、そっと大事においた。

彼女らに、嘘をついてしまった。
私は、覚えていないのも、あるけれど、
私は、私がそこまで愛した男の人の名前を、聞くことが出来ないのだ。
私の好きだった人とは一体、誰なのだろうか?
一杯になった小さな箱を見て、決意する。
だったら、調べればいい。
だけど、くのいちの彼女らは、私を大切にしていて、
忍たまに近づかそうとはしない。
なら、私は、その天女さまとやらを、観察していればいい。
彼は、そこに現れるはずだから。












2010・4・7
【女主で傍観、天女様を至極どうでもよさそうに眺めてる話。
うん、この次から】