『人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり。
一度生を享け滅せぬもののあるべきか』
人生50年。だけど、あそこは、80年。
滅びないもの?そんなもの決まっている。人の思想だ。
俺は、その中で幸せな夢を見続けていけると、思い描いていけると信じていたのに。
どうして、こんなギスギスと楽しくもない場所に入れられているのだろうか?
神様、あんた俺のこと嫌いだね?
だったら、二次元化してやるよ。
ツンデレで、女王様キャラにしてやる。
そしたら、いくらあんたが、俺を嫌いでも愛せそうだ。
はぁー、とため息を吐けば、周りがビクリと動いた。
なーんて、自意識過剰だろう。
俺がため息を吐いたところで、葉っぱ一枚落ちてこない!!
俺のことなんてみんな、気づいているはずがない。
と、重い気持ちのまま、木上に登った。
もう帰りたいよ。
家でもいい。あの世界でもいい。なんだっていいからここから俺を連れ出してくれ。
ああ、でも、助け出してくれるなら、可愛くて、強くて、ちょっとドジな子希望。
って変な妄想を考えてしまうほど、俺の頭は、疲れてしまっているわけじゃない。
元からこんなんだ。
元からというのは、前世というのか、未来というのか、
平和な世界でしか繁栄が無理だと言われる、
漫画とかアニメとかゲームとかが、溢れている世界。
その中で、仲間と見たものの話で盛り上がり、
時には泣き、時には笑い、時には怒り、毎度幸せであった。
だけど、ちょっとした手違いで、俺は死んだ。
なんで死んだか?
その理由は不明だが、生まれかわっても俺が、
俺のことを、忘れなかったのは、
最後の時に、まだまだしたいことが一杯あるのに、
まず、今日は、放送日だ。明日発売の本を買っていない。
あの漫画の最後を読まずには死ねない。
次に出ると噂のアニメ、漫画、映画、全部見てない。
ゲーム、あと一面でクリアだった。
そろそろ合同で本を出す予定日が近かった。
というか、死んだんなら、死んだで、
パソコンの画像ファイルと、ブックマークを全部消してくれ。
携帯のメールの中身も、全部消去でよろしく。
俺の秘密の隠し場所にある本も、燃やしてほしい。あ、あと。
などなど考えていたから、きっとツンデレ神様が切れたんだろう。
「あ、あんたなんて知らないんだからぁ。
もう一回勝手にやり直しなさいよ。バカァ!!!!!」
と、フフフと口元から笑みが出てくるが、現実に戻れば、
涙しか出てこない。現状を言おうか?悲しいぜ。
二人一組で組めと言われている実習で、一回も誰とも組めたことなくて、
話しかけると時でさえ、目をみて話してくれないし、
テストとか、実習の連絡を時々回されない。根本、みんなからは、無視。
三年からの中途入学をして一年たったけど、俺の周りは変化なし。
おかしい。今年、同じく中途入学した斎藤さんは友達たくさん出来ているのに、
俺と彼の何が違う?わかってるよ。全然違うさ。
俺はキモオタ。あいつは、髪結い。
ありんこと、みじんこの差ぐらいある。
髪の毛を金に色にしたら、ちょっとは明るくなるかもしれないけど、
失敗したら痛い感じ。それとパクリって言われるのも嫌だし。
それにしても、すごくないか。
だって、長屋生活で、風呂とかトイレとか飯さえ共同だって言うのに、
普通仲良くなれるはずの空間で、俺、一人だぜ。すげー。笑える。
一人教室の端っこで、読んでもいない本を読んだり、
眠くもないのに眠っていたり、昔の仲間に会うまでの俺の行動をしてんだぜ。
いや、昔よりもひどい。
前だったら、音楽や漫画、小説、ゲームというとても楽なものがあったのに
ここにはないのだから。休み時間のたびに、手持ちの本・忍ともを読むうちに、
もうすでに読むページが無くなって、図書室の本を読む有様だ。
・・・・・・はー、もうオタクの友達欲しいとか言わない。
誰でもいいから友達になってくれ。
【オタクのおたくさん 三木ヱ門】
バクバクと心臓が動きすぎて、痛い。
手だってじわりと汗をかいている。
彼が近くにいるだけで、こんなに緊張する。
今度こそは、一緒に、組んでくれと言えるだろうか。いや、言える。
僕はなんだ?学園のアイドル田村 三木ヱ門だ。
よし、と意気込んだけれど、「はぁー」と深い溜息と
凛々しくて切れ長の黒い彼の目が、失望を映し出しているから、
僕は伸ばしかけた手を一度引っ込めようとした。
でも、それじゃ、一年間何も変わらなかったのと一緒じゃないか。
と拳を握って、彼の名前をよんだが、そこに彼はいなかった。
そんなに、僕と組むのが嫌なのか、そうだよな。
と暗く落ち込む僕の肩に、手が置かれ、
振り返ればろ組のみんなが、やけにキラキラした目で僕を見る。
「田村、お前はスゲーよ」
「ああ、ただの武器オタクだと思っていたけど、見直したぜ」
「あの、に声をかけるなんて勇者、俺たち、ろ組にいるとは!!
よし、俺、田村と、が仲良くなるのを手伝う」
「俺も」
「お、お前ら」
へへへと鼻をすっている同級生に、一瞬感動したが、
色々な矛盾に気づき、口元が歪んだ。
「僕が、友達になって紹介してもらおうという魂胆だろう?」
へへへと、彼らは悪びもない笑顔で、肯定した。
はぁー、と深い溜息が出る。だけれど、しょうがないことだ。
彼のいた場所をじっと見る。
同じ組である4年ろ組。 。
3年の中途入学だが、彼は入った時から、強く美しかった。
彼の右に行くほど短くなる独創的な前髪に、
サラスト二位となった腰まである真っ直ぐな鳥羽色の髪。
薄い唇に、高くも低くもない鼻に、大きく切れ長の吸い込まれそうな黒い瞳。
美しい容姿に、しゃんと背筋を伸ばした背中。
先輩にも臆することのない態度。それに実力。
彼の最初の授業である3年と4年の合同実習で、
二人組を異例の一人でこなし、それで課題をクリアするのもすごいのに、
なおかつ、一番いい成績を出した。
僕は、その時の感動を忘れない。青い空の中で、真っ黒な羽を持った覇王の姿を。
それから、一年間。
彼は彼と同等のものがいないことを嘆きながら、孤高な覇王であり続けた。
実習で彼はつねに一人で、そしてトップ。
もちろん、彼は馬鹿でもなく。筆技もトップ。
授業中、忍ともを出すこともなく、違う本を持っているあまりにやる気の無いに、
一度先生が怒って、数十ページあるページ数を言われ、
彼はそのままスラスラと鐘が鳴るまで言い続けたことがあるので、
中身を全部暗記しているようだ。
それから、は、時々授業をサボっても、実技をサボっても、
先生からなにか言われることがなくなった。
そんな彼に嫉妬するものも多いが、僕は、彼が図書室で勉強している姿を知っている。
努力している姿を人見せず、誇示してもいいほどの能力を誇示をしない彼に、
好感を持たない方が間違いなのだ。
いいや、そんなことよりもなによりも
最初の、青空を支配する覇王に、一目惚れしてしまったというのが一番強い。
僕は、掴むこともそれどころか、見てもくれなかった存在に、吠える。
絶対、仲良くなってやるから、見てろよ!!
2010・3・31
【転生・勘違いを考えた結果。
4年を攻めることに。40万だし語呂いいよね。まずは、三木で】