「あ、それ駄目食べちゃああ!!」

半分になったまんじゅうを涙目で見ていれば、
食べた犯人は、
横にむごむごと口を動かしてハムスターみたいな動きをしているもんだから、
母性本能攻撃されて、キュンと来ている。
はっ、駄目だ。私、しっかりしろ。見かけに騙されるな。
と決意を新たにして綾部くんを見れば、口を開けて。

「あーん」

「・・・・・・なんなの」

「それ食べたい。早く」

早くって、くそぅ。口を開けている姿が、
昔に見た動物園の動物に似ていて、つい。

「ほら。あーん」

ぱっくん。
一口で彼の口に収まった。
意外と大きな口に、まんじゅうをあげてしまった。
あげたあとには、後悔。

「私の馬鹿。あれは気に入りだったのに、三木がわざわざ買ってきてくれたのに、
くそぅ。三木に頼めばもう一個ぐらいあるかな?」

ぶつぶつ、言っている私にびしっと指をさして、そのまま頬までぐりぐり
突いてくる綾部くん手から逃れようとしていると、一番端の柱まで来てしまって、
なんだ!!ときつい目で訴えれば、大きな綾部くんの目が私を映す。


「三木の話ばっかりしないで」

なんで?どちらかというと、三木に貰って綾部くんに食べられたまんじゅうの話をしているのに、
しかも話って、独り言だし、けれど、どうみてもふてくされている綾部くんに、
ああ、なら。

「じゃぁ、平くんにする」

「それもいや」

「じゃぁ、タカ丸さんは?」

「んー」

「じゃぁ、誰ならいいの」

「私がいるじゃない」

一瞬言われたことを理解するのに遅れた。
だけれど、納得。
目の前にいるのは自分だから話しかけろということだったのか。
こほんと一呼吸整えて、なぜか正座で私は綾部くんに話しかけた。

「綾部くん、私の昼飯を食べるのはやめてほしい」

「却下です」

「綾部くん、私の部屋の前穴だらけですが、誰がししたか知ってますか?」

「いいえ、知りません」

「そうですか。あなたです。綾部くん」

「違う。綾部くんです」

「・・・綾部くん、私は今とても変なことを言われました綾部くんに」

「そうですか」

「そうですよ」

「・・・・・・綾部くん、私は今お腹がすいていますから、どこか出かけようと思います」

「ついて言ってやらないこともない」

「おごりませんよ」

「ケチ」

そう言って私たちは、そのまま甘味屋に行った。
恋人デーで半額だったので、二人でいって良かったと満足そうに言えば、
帰り道、彼も珍しいことに、鼻歌を歌っていた。

「わたしが持つ」

「綾部くんが食べたら困る」

そうして、学園にいる友人の彼らのお土産の紐を二人で持った。
夕日に照らされて伸びた私たちの影は手をつないでいるように見えた。


と、その様子を覗いていた彼らの保護者もとい、
滝夜叉丸と三木ヱ門そしてタカ丸さんの三人は、なんともいえない顔をしていた。

「・・・・・・あれって、無自覚なの」

そう言ったタカ丸の言葉に、三木ヱ門は答えた。

「そうですよ。あれで無自覚にイチャつかれているんです。
しかも、時々、私の部屋だったり、滝夜叉丸の部屋だったりで、
居心地が悪くてしょうがないんですよ」

「ふっ、甘いな。三木ヱ門。お前、膝枕しているとことか、見たことないだろう?
甘い台詞と耳かきとか」

「何おう、それだったらな。喜八郎が、踏子ちゃん壊して、なぜか用具委員に行かずに、
のところ行った話とか。その時偶然一緒にいた僕を睨んで超怖かった。
なんでは気づかないの?」

「知っているぞ。二三日二人で、互いの部屋に行き来し、
喜八郎の手にあう踏子ちゃん4代目を探していたからな!!
あれは、居心地が悪かった。完璧、部外者で何度お前の部屋に行きそうになったか!!」

二人で、苦労自慢が始まったのをタカ丸は聞きながら思った。

「休日はいつも一緒だし。休み時間も一緒。
もう、ほとんど付き合っているのと変わらないよね。二人とも」

あーもう、早くくっつちゃえばいいのに!!
そしたら、後ろからついていくとかしなくてもいいのに!!













2010・3・17

【うん。バカップルというか、迷惑カップルだ。お気に召したら幸いです】