「え、そうかな?ちゃん。私って、頑張ってる?」
と首を少々傾け私可愛いでしょうと言わんばかりの笑顔でこちらを向く彼女。
彼女の正体は、ある日突然天の国から落とされた天女様。
至極納得。天にこんなわがままなのがいたら、いっぺん落としたくもなる。
私、 。彼女の世話係に任命されてはや数日。
みんな頑張ろうねと血反吐を吐いて5年間頑張ってきた学園ですが、
この数日でめげそうだ。精神攻撃と疲労で死にそう。
「うん、頑張ってるよ」
私がの、私を抜かした答えに、彼女は満面の笑みで、
それに良い笑顔を向ける男たちはクソだ。
もうそろそろ学園を辞めようかと思ってます。
じゃないと、私本当に過労死しそうです。
ええ、本気と書いて、マジで。
2・火薬委員会会議
「はい、ここで火薬委員会会議を始めたいと思います」
そんな一声、火薬委員会による のための会議が始まった。
説明しよう。彼ら火薬委員会の役員は皆年も年齢も思考もバラバラだが、
ある一つのことが共通していた。
それは、 が皆好きだということだ。
今回の天女さま騒動で、彼らが思ったことは、変な転入生という間違った認識しかない。
だが、しかし。
ここで が関わってくると話は変わるのだ。
お世話係で、彼女が任命されたときの衝撃は、計り知れず、
彼らの顧問の土井先生に、涙ながら、怒りながら、脅しながら、
などなど色々な方法で止めさせようとした。
理由は、ずるいの一言に尽きる。
土井先生は彼らの攻撃に胃を痛めはしたが、
忘れてはいけない彼も火薬委員に所属している顧問である。
つまり、彼も火薬委員と同じということだ。
しかし、彼は大人で教師であったので、彼らのようにはせずに機会を計っていた。
好機に転じる機会を。
「と、いうわけで、は、とうとう退学届けの文を書き始めた」
「確かに、あれほどの量をやっていれば、過労死するだろうな。さすが懸命な判断だ」
「さすが、じゃないよ兵助くん!!どうしよう。このまま辞めちゃうなんて僕いやだよ」
「大丈夫です。タカ丸さん。だから、僕らの出番じゃないですか」
「ああ、三郎次。出来たか?」
「ええ、抜かりはないです。
久々知先輩も先輩の代わりのお世話係は、用意できましたか?」
「ああ、雷蔵と三郎がやってくれるらしい」
三郎次が懐から出した紙を上から下まで、兵助が確認し、
土井が確認して、二人とも頷いている。
それを、伊助とタカ丸が眺めていたが、タカ丸が、口を開いた。
「でも、そう簡単にあの子いいっていうかな?」
「どういうことですか?」
紙から顔を上げて兵助がタカ丸をみやる。
「だって、彼女がやってると思ってることが違う人がやっていたなんて、
そればれちゃうからごねるんじゃないかな?その後も何かしてきそうだし」
タカ丸の言った言葉に、どうしようとどうしようと、伊助は土井に縋り、
三郎次は考え事をしている。
しかし、兵助だけは、表情を変えずに言い放った。
「だから、俺らがいるんですよ。
あの女が付け入る隙がないほど、みんなで、 を守れば良い」
そう言った彼はとても眩しく、強い引力があり、みんなそれに頷き、
「みんなで 守ろう 彼女を」を掲げた。
3・よくお世話しました、これからお世話になります。
「と、いうわけで退学届けの前に我が火薬委員に入らないか?」
そういった彼の目は至極まともだった。
土井先生に呼ばれて言った場所は火薬部屋だった。
私の実家が、火薬の調合から、武器の整備までしているいわば武器屋さんなので、
最初は火薬の話かなと思っていたのだけれど、
入ってすぐ火薬委員のみなが正座しており、そして入ってすぐ土井先生に
扉を閉められた。・・・・・・・・・罠だ!!!!!
そうして、なぜか私も正座して、足元には伊助くんがいる。
大変ぬくい。横にはなぜかお茶とお饅頭をいそいそ用意して、
あ、食べたいですか?じゃぁ口開けてくださいと、食べさせてくれる気満々の
三郎次くんで、肩をもんでくれているのがタカ丸さんだ。
髪結い師は、サービスで肩もみもしてくれるそうだ。
第一声が、うわ、ガッチガチ。だったので今まで相当の疲労が溜まっているのだろう。
そして、土井先生が、胃薬をすっと出してくれた。一日三回。と言われ置かれた。
ありがたく頂戴しておこう。で
目の前にいる久々知くんは最初に戻るが、奇天烈な話をしてくれた。
正直、なぜ自分がこの待遇なのかよく分からない。
癒されるし、つかの間の我が侭から逃げれたのでありがたいが、
なぜ退学届けを書いているのを知っている?
それと、火薬委員って。
彼らは私を過労死させるつもりだ。いまでさえ、きついというのに、これ以上。
と半泣きになれば、みんなが慌てて。
「兵助くん。言葉が足りないよ〜」
「そうですよ。ほらぁ、泣きそうじゃないですか」
「久々知先輩。焦りすぎです!!」
と言われて久々知くんはしょげた。後ろにショゲって音がでるほど分かりやすくしょげたもので、
なにやらこちらが悪い気がして、いいフォローをせねばと思っていれば、
土井先生が頬をかきながら私にことのあらすじを説明をした。
「。久々知がいいたいのはな、
お世話係を辞める手段に火薬委員に入らないかということだ。
お前は、火薬の扱いにも慣れてる。だといって火気の類の武器を使うわけでもない。
委員会があれば忙しいから、あの子の世話係は違うものになるだろうし。
お前に悪い話じゃないと思うんだ。どうだ。先生の方は私が掛け合っておく」
そう言われて、周りを見渡せば輝く4人の目。
私の答え?そんなもの決まってる。
「その話、お受けします」
ありがたかい申し出だ。もう彼女とは関わりたくないレベルになってきている。
だけれども、私は断り方を知らない。理由を作ってくれてしかも言ってくれるなら万々歳だ。
なによりも、あんな期待された目をみて断れるなら、最初から彼女のお世話係だって
断れたのだ。
今日から、私・ 。
彼女のお世話係改め、火薬委員になりました。
4・学園の中心で世界を眺める
「何を見てるの?兵助くん」
「ああ、タカ丸さんか。学園を見ているんですよ」
「へー楽しそうだね。一緒に見ても良い?」
「みんなも呼んできて下さい。みんなで一緒に見ましょう」
「分かった。すぐに呼んで来るねぇ〜」
そんな会話が織り成されていることなど私は知らなかった。
彼らは至極満足そうな顔をして、私を見ていることを。
「あ、ねぇ、仙蔵君」
と可愛い私が、話しかければ、彼は忙しそうに早足で私の目の前を通り過ぎる。
「すいません。今ちょっと忙しいので」
「立花先輩。どうやら火薬委員と、きり丸がタッグをくんだようですよ」
「なんだと?」
よく分からない話を、三木くんとしている。
おかしな人たち。私がわざわざ話しかけるなんて光栄なことを忙しいで
終わらしてしまうなんて、後悔しても遅いわよ。
もう、話しかけてあげないんだから。
そっちがヘコヘコして媚びて、わびるまで許してなんてあげないんだから。
私は違う子に声をかけた。
「ねぇ」
そう言って手を挙げて話しかける私は、まだ気づいていない。
一つ一つ、雫が円を描いて広がっていることに。
5・おかしいものは、おかしいのです。
「なぜ、 に頼みごとをするとお前らが入ってくるんだ」
イライラと目を釣りあげながら火薬委員を見ている立花くん。
怖いなぁ。だけど、おかしいよね。
「だって、ちゃんは僕らの委員会だからね」
ねーと、伊助と顔を見合わせて頷く。
その様子にもっと怒気を発した立花くん。
「おかしいだろう。急に火薬委員に入った途端。今までやってくれた調合をしなくなるなんて」
次は、三木くん。確かに火器を使う者にとっては死活問題だよね。
ちゃんは、火薬さえ渡せば、その人用に調合もしてきたから。
だけど、おかしいよね。
僕らが何か言う前に、横で集まってる違う人たちに、きり丸くんが声を荒げた。
「いやーおかしいのは、今までですって。
ほら、先輩は武器の手入れから、
直しまでこんな完璧にしてくれるんですよ?
それを無償だなんて、ああ、恐ろしい。タダ怖い、タダ怖い」
綺麗な磨かれたクナイの姿や、手裏剣の姿。その姿をみて、みんなの声が止まった。
「だったら、いくらだ」
根負けしたのは、潮江くん。
潮江くんは、鍛練とか良くするから、武器の質は重要だって良く知ってるから、
きり丸くんに言えば、目がきらりと光った。
「そうっすね。相場、こんくらいでしょうか?」
その言葉に、兵助くんが口を添える。
「それと、のできる量というのを考えると、一週間で、このくらいだろう」
「あと二三人っすね」
その数字にみんなが、慌てた。
「まて、それでは実習に間に合わない」
「先にしてもらいたい方は、特別料金を払ってください」
とゼニの指でゼニの形を作るきり丸くんにとうとう、多くの忍たまが切れた。
「馬鹿も休み休みに言え!!」
「嫌なら、頼まなきゃいいだけの話です」
兵助くんが冷静に返しているけれど、彼らはやんややんやと怒鳴りつける。
ああ、おかしい。おかしいよね。僕の横にいた三郎次くんが、
声を震わせて僕の名前を呼んだけど、ごめんね。限界。
「ねぇ、君たちは、ちゃんをなんだと思っているの?便利屋さん?」
こちらに集まった視線に、一言。
「ふざけんじゃねぇ」
6・目利きの価値はいかほど?
いやーすげぇな。
その一言に尽きる。俺は、土井先生からいい儲け話があるなんて
日頃言わないこと言われて来てみれば、なんて宝物。
うはうはしながら、銭を数える。
「ごめんね。きり丸くん手伝ってもらっちゃって」
「いえいえ、俺はちゃんとゼニもらってるんで」
「いやーそれでも悪いよ。あの人たち怖くなかった?」
と苦笑しながら、手を止めることのない。
それなのに、一分の狂いもない正確無比な動き。
シュシュと、同じリズム刻んで、クナイは研がれていく。
「あ、ありがとう」
「はい、きり丸くんも」
「どもっす」
タカ丸さんから、渡されたお茶をずずっとすすり、
金の計算を終わらせた俺は、先輩の質問を思い出した。
ちらりとタカ丸さんを見れば、久々知先輩にも
お茶を渡し、ふわふわした雰囲気と猫のような笑みを浮かべている。
怖かったのは、今そこにいるタカ丸さんだったりするんですよ。
あの暴動を、凍えるような極寒に連れていき、みんなを黙らせた。
こういう人が怒ると怖いとは本当だよな。
あははは、とから笑いが出そうになるのを抑えて、
「なんで、先輩は今までこんな凄い技術をタダでやってきたんっすか?」
「うーん?」
手にとって、細部を見ている先輩。
研がれたクナイはやはり美しくて、ほぅとため息が出る。
元が木の棒なら、出来上がったのは、家並みの差がある。
先輩の手は確実に金になる手だ。
その技術を盗んで覚えて自分もと思わなくもないけれど、
そうなるまでに、学園を卒業ができそう。つまり、俺には無理な話。
町に行っても生きていけるほどの腕前をタダなんて!!もったいない。
先輩は、クナイを持ち手の方から片目をつぶって、左右が対称であるか確認している。
「しがいない話なんだけどね」
ふぅっと息を吐き、先輩は、つぅーと中心をなぞる。
「初めてやったときの、ありがとうって言われたのが忘れられなかったの。
使い終わったときに、良かったって言われるのも、好きだった。
私にはこれくらいしか特技がなかったから。
ああ、でも、頼みごとが断れないっていうのが一番だったのかも」
と、コトンとクナイを置いて布で拭く。
ああ、だからか。納得いった。
クナイにしか目に行っていない先輩は知らないだろう。
火薬委員と土井先生がとても優しい眼をして見ているのを。
彼らが全員あなたが好きなのがすぐ分かる。
人のために自分を削る人を今の戦乱の世では、阿呆と言いますが、
俺は、金にがめつくて益を考える人なので、阿呆がとても羨ましい。
その打算のない不器用なまでの生き方を俺も彼らとともに好ましいと思うのです。
7.世界は私のために回転していないなら誰のために回転しているの?
このごろなんだかつまんない。私が可愛がっていた人たち、みーんな忙しいんだもの。
媚びて謝ってって人が多すぎて、私が話しかけてもいい人は少なくなちゃった。
だったら、補充すればいい。新しいもの。新しいものと探せば、
黄色くて綺麗に光る髪の毛と、豊かな長い黒髪を発見した。
あれは、だぁれ?
「ああ、タカ丸さんと兵助ですね。あったことありませんでしたっけ?」
特徴を言えばすぐ帰ってきた名前に、にっこり笑う。
「あいつら火薬委員なんですよ」
プラスの情報ありがとう。じゃぁ、今すぐ私をそこに招待して頂戴?
2010・3・3
【リクエスト。案の定長くなったので、前半と後半に分けました。
武器屋の娘で、趣味は武器の修繕などモットーは「包丁まで切れる包丁を!!」
気にって下されば、幸いです。】