「これは、由々しき事態だ」

土井が、6年生、もとい6年ジャーの会議室に来ると、ダンと、黒板を叩いて言った。

「このところ、忍術学園の任務が減っている。
どうやら、悪の組織と名乗っている篠神先生率いる、
いや情報によるとが率いる組織は、
規模を拡大しながら、我々の任務を奪っているらしい」

力を入れて話している土井と違い、聞いている方には温度差があって、
せんべいを食べながら、各々だらだらしている。
その姿に、こめかみがピクピク動いている土井を放って、
のんきな声が聞こえた。

「それって、どういうこと?」

伊作の質問に、本を読んでいた仙蔵が答える。

「つまりだな。任務がない。収入がない。このままいくと潰れるってことだ」

「へー、ってそれってやばくない」

少々驚いた顔で言う伊作に、土井は声を荒げた。

「さっきから言っているだろう!!
おまえらはここでくさっていないで、そろそろ作戦なり立てたらどうだ?」

土井の言葉に、伊作は、机に伏せた。

「だって、第一次審査落ちちゃってやる気ない」

「行ったのか、伊作」

伊作の呟きに、耳をピクリと動かし反応したのは仙蔵だった。

「はじめで、バレた」

「・・・・・・・そうか」

「行ったのかってことは、仙蔵は行ったの?」

「・・・・・・お前と一緒にするな。間者となるために侵入するためにだな」

「へー、じゃぁ、別に様と一緒にいたかった訳じゃないんだ。良かった」

僕は、純粋に様に会いたかったんだ。と乙女オーラ全開の伊作に、
無言で、仙蔵は本を投げた。命中して、そのまた後ろの棚からモノが落ちてきて
下敷きになった伊作にフンと息を荒らげて、そっぽを向いた仙蔵に、
他の者達が、伊作の言った「第一次審査」に興味が移った。

「そんなものあったのか、知らなかった」

私も、行けばよかった。と、ごねる小平太に、ボソボソと長次がしゃべった。
他のものは、明確に聞き取れなかったが、長年一緒にいる小平太には聞き取れた。

「え、長次も行ったのか?ずるいなぁ」

ずるいずるいと連呼すれば、伊作を棚から抜け出させていた留三郎が、会話に参加した。

「俺も行ったぞ。伊作が暴走しないように見張っていた」

「ずるいんだよ。留さんってば、面接まで受けれたんだよ」

「「「「はっ?」」」」

皆に白い目で見られて、たじろいた留三郎は、
話題を転機するために、伊作に話題を振りなおした。

「それは、伊作、馬鹿正直に名前を書くからだろう?」

「私は書かなかったぞ。でも、最初で落ちた」

「・・・・・・・・私も」

仙蔵と、長次の嫉妬に満ちた視線に、うっと威圧されたが、
空気を読まないで、伊作が留三郎に尋ねた。

「名前なんて書いたの?」

ほっと、息を吐き出して、安堵したのもつかの間、
留三郎は苦虫を噛み潰したような顔して、名前を言った。

「錫高野 与四郎」

「誰?」

「風魔で喜三太の仲いいやつ」

「あー、なるほど彼か、確かに似てるよね」

伊作の返答に、徐々に暗くなる留三郎に、
なんかあったのか?と仙蔵の聞くと、留三郎はもっと顔を暗くして、
その時のことを話した。

「・・・・・・面接の時に、
「あれ?ああ、そっか。なるほど。なるほど。そっくりショタコンズか。
んー、どっちか、わかんねーな。
でも、どのみちショタコンはいらないから、不合格」って」

顔を覆って、隅で体育座りをして「俺はショタコンじゃない」と呟く留三郎に、
伊作と仙蔵が、顔を見合わせて、肩に手をポンと置いた。

「ドンマイ」







【グリーン忍者戦隊 6年ジャー 4】







それまで、黙っていた彼らの話に、土井がとうとう叫んだ。

「って、お前らはなにをしている!!」

「何って、がいない学園は、味噌のない味噌汁ですよ」

仙蔵がしれっという言葉に、うっと詰まったのを尻目に、
切れ長の目を細くして、土井を見て、冷たい視線と言葉を投げかけていく。

「どうせ、学園長が篠神先生のなにかを取ったとかしたんでしょう?
我々が戦わなくても、学園長が謝れば終わる話ではないですか?」

「うっ、胃が痛い」

と、胃を押さえている土井の横から、粉末の薬と水がおかれた。

「これはこれはご親切に」

水と粉末を飲み終わり、くれた人物を確認して、目を見開いた。

「お前は」

「敵からのものをなんの疑いもなく飲むとは、なんと体たらく。
貴様らが、我らの敵かと思うと、反吐がでる」

!!」

黒いマントをヒラリと揺らめかせ、いつもの柔らかな顔が、
少々キツイ目の顔となり は立っていた。
先程まで、そこにいるとは分からなかった、
そこにいるだけで、かなりの存在感だ。
文次郎が、距離をとり戦闘態勢をとる中、
小平太は、花を周りに飛ばしながら、に飛びつこうとしている。

「待て、貶されているのに、嬉しそうに行くな。小平太」

どうにか、文次郎が、小平太を捕まえている中で、
後ろでは、胸を抑えながら、頬をやや紅潮させている伊作に、
まだ体育座りだった留三郎がもっといじけていた。

「どうしよう、留さん、僕Mになりそう。
様に犬になれって言えば、犬になれる」

が・・・俺の可愛いが、ぐれた」

どうにか小平太を長次に任せて、文次郎がに叫んだ。

「なんのようだ!!」

「なんのよう?そっちが何もしないから、こっちから仕掛けることにしたんだ。
ありがたく思え」

ふっと口元を上げ、上から目線のに仙蔵が叫んだ。

「巫山戯るな!!私たち6年に一人など見くびるなよ。 
なんて、嘘だから、本当はものすごい会いたかった!!」

「おしい!後ろのセリフさえなければ完璧だ、仙蔵」

もうちょっとだな。頑張れとよく分からない応援を文次郎がしている中、
は、後ろのセリフを流して、そのまま話を進めた。

「フフフフ、巫山戯ないで、お前らが俺の相手ができると?
真剣にさせたかったら、させてみろ」

懐から出てきた、煙玉が爆発する。

ドォン

ようやく視界が開かれた時には、留三郎がにお姫様だっこをされていた。
留三郎は、なぜ自分が宙に浮いているのか。
なぜ、の顔が近いのか、理解できずに、変な声を漏らした。

「ふぉぉおう?」

「黙れ。黙らないと、口をふさぐぞ?」

そういった瞬間、留三郎は両手で、口を抑えた。

「「それ、交換希望!!」」

仙蔵と伊作が手を上げる中で、文次郎がに聞いた。

「食満を捕まえてどうするつもりだ」

「もちろん、人質だ。
お前らが嫌がる顔を見るのが、俺の唯一の楽しみなんだ。
楽しませろよ」

のセリフに伊作がハイ、ハイ、ハイ!!と手を上げて異論を唱えた。

「待って、こういう時は、色的にピンクじゃないの?
どうして、どんな晴れるのか、雨降るのかどっちなのかハッキリしろよ。
ゴラァって言う色なの?てか僕じゃダメなの!!」

涙ながらに訴える伊作をどけて、仙蔵が叫んだ。

「待て、色でいうなら、青だっていいだろう。6年ジャーで、参謀的な
役割だぞ。内容を知りたいなら吐き出たせればいいし、
二粒美味しい私をなぜ連れていかない」

伊作が後ろから仙蔵に詰め寄る。

「仙蔵、邪魔しないでよ」

「そっちこそ、邪魔するな」

と喧嘩を始めた二人の様子をみて、小平太が手を上げた。

「私も、私も!!イエローだからえーっと・・・・・・・カレーが食べたい」

「・・・・・・・」

ポンと置かれた長次の手に、小平太は静かに言った。

「なんだ、長次。私は悲しくないぞ。
別にイエローの役割が、カレーカレーって言う事でも」

後悔なんてしてないさ。
私がイエローで、長次がグリーンだとしても、私たちは私たち。
そうだろう?と、二人で熱く手を、組みかわしている中で、

「その前に、食満を連れていかれると困る。
今屋根裏の修繕中で、雨漏りが直らんではないか」

文次郎が、に言った。

「・・・・・・雨漏りが、それはいけない。
寝ている時に水がたれてくるとか、・・・・・・地獄だな。
・・・・・・お前には、恩がある。一回きりだ。次はない。行け」

と、簡単に下ろしたに、文次郎がこのままここで捕まえようとに近づき、
鳩尾に拳を入れようとしたが、その手を取られ、反対にくるりと回されて、
さっきの留三郎と同じような格好をさせられた。

「その代わり、お前を連れていこう」

「なんで、俺なんだ」

キッと上にある顔を睨むと、は文次郎の言葉に、
一瞬間が開いて、ふっと力が抜けた笑みをみせた。
それは、いつものような笑顔に似ていて、
幼い子供のようなえみだったので、文次郎は言葉をなくしてに魅入った。

「お前が、俺と来るのを一番嫌がっているからだ」









2010・3・23