「で、宣戦布告をしたけれど、何をすればいいんだ?」
の言葉に固まった皆は、とりあえず、仕事をしようということになった。
仕事、悪の仕事とは、一体何か?
「じゃぁ、よろしくな」
大きな荷物をそれほど苦でもない顔をしては運んでいる。
実際のところ、怪力の彼にとってその荷物は、軽いものであった。
悪の仕事、忍術学園の敵なので、忍術学園に来た任務を来る前に
かたっぱしから奪うということにした。
今回は簡単なやつで、荷物を依頼主までに送り届ける任務だ。
冷やしてあるプリンの出来が気になったは、
すぐ終わらそうとスピードをあげて森の中を走りだした。
後ろから荷物を奪おうとしている奴らの待て!!の声が聞こえないほどの
速さで。
「・・・・・・・早いな」
依頼主はその速さに驚き、まじまじと荷物を確認した。
荷物は、どこも壊れていないし、封を破られてもいない。
「敵にあわなかったのか?」
「敵?そんなものいない」
が、にぃと三日月の形をした笑みをたたえると、
依頼主は、彼の直接的表現を、比喩表現だと勘違いし、
「目に入らないほど、とるに足らない、私の足元にも及ばない」
と解釈した依頼主は、敵がそんなに弱くないことも知っていたので、
先程からの態度を変え、尊敬のまなざしで、を見た。
「な、なんと頼もしい!!次からも貴殿に頼もう」
そうして、悪の組織は、瞬く間に噂が広まった。
【グリーン忍者戦隊 6年ジャー 3】
「はーい、第一次期間限定の悪の組織入隊者希望者は、
ここに、氏名、生年月日、住所、血液型、得意な技を記入して。
住所不定者は、不明と記入すること。
あ、それと、忍術学園の生徒は不可。
記入が終わり次第ここに提出して、横の部屋に入って、一時から試験があるから」
ガヤガヤと悪の組織本部もとい、峰の別荘に大勢の人がいる。
の噂を聞きつけて、入隊したいという志願者だ。
それに、木藤が、ナンバー札と、入隊の試験金をとりながら、
峰の部下も手伝い、せっせと軍資金を稼いでいる。
「もう、簡単でほぼ元でタダなんて、最高な稼ぎだし、
あ、用紙がなくなった?あーじゃぁここで終了」
ペーパーテストを受け終わったらあとには、
藤野が、面接をしていた。
「あんたとあんたは、のファンクラブ二桁の人だよな。
一応言っておくけど、に変な気を起こしたら、契約違反で、ファンクラブ脱退だから」
「「ウス、わかってます」」
「うん、良い返事だ。合格。あとは、字を綺麗に書くこと。
あ、そこのやつは、あんたは、満点だったよ」
「はっ、あ、ありがとうございます」
「でも、駄目だ。あんたウスクレドキ城の忍頭でしょう?
をスカウトなんて百年早い。連れてって」
ズルズルと、何かを叫びながら連れて行かれる男を
横目で見ながら、数表してぎゃぁぁぁと叫び声が聞こえた。
藤野は一回ため息を吐き、小さな声で、
「峰は一体何をしているのやら」とつぶやくと、
にっこりと笑顔を貼りつけて、叫び声で震え始めた男を指さした。
「あんた、分かっているだろう?」
そのころ、城の頂上で、は一人もくもくと、月餅を作っていた。
下の騒ぎなど、お菓子づくりをしている時のには聞こえていない。
「できた」
月餅ができたときには、期間限定の悪の組織入隊者は決まっていた。
峰が、階段を上りのところへくる。
「、おや?いい匂いですね」
「峰、月餅ができたぞ」
出来立ての月餅を嬉しそうに見せるに、
同じく嬉しそうに峰は微笑んだ。
「そうですか、ところで、何個ありますか?」
「言われた通り、55個だ」
「うん、じゃぁ、。いや、司令官。彼らに先導を!!」
コツコツと少しだけヒールの高いブーツの音が鳴る。
いつの間にか作られた社の上に、は登った。
下を見れば、50人の男たち。何十の男がを見てうっとりし、
何十の男が、を見て体を引き締めた。
は、すっと視線を補足して、左手を高らかにばっと広げると、それと同じく
が着ていた黒いマントも広がった。
「おまえらはなぜ、俺に従う?俺の存在は悪だ。
それを知らずについてきたものなどいないのだろう。
ならば、おまえらは、人ではない。動物だ。
おまえらは俺の指示を待ち、俺を待つ。従順な獣になれるか?
なれないものは、今すぐ立ち去れ。
そして人になるのだ。
俺に必要なのは、人ではない。
俺に必要なのは、俺を満足させ喜ばせる道化などではない。
覚えておけ。ここに夢などない。希望などない。
あるのは、俺だけだ。俺と言う存在だけだ。
それでも付いてくるものは付いてくるといい!!
その先の保証などないが、俺はお前らを受け入れよう」
は、叫び、最後に妖艶な笑みを浮かべた。
それは、清らかと間逆で、深みに入れば入ってしまうほど
抜け出すことができない笑みだった。
しーんと静まった会場で、のふわっとマントが元に戻り終わり、
少しして、高らかに大声が響いた。
「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおお、!!!!」
214人中合格者50名。
この場所から去ったもの50名中0名。
まさに、ここから悪の組織の本格的な活動が始まった。
「月餅配り終わったよ。あーつかれた」
藤野と峰とが集まっている部屋に、木藤がつかれた顔で、
どかっと床にあぐらをかいた。
「だから、俺も手伝うって言ったのに」
の言葉に、木藤が手を横にふる。
「は司令官だし、あんなこと言っておいて、下っ端みたいなことさせらんない。
キャラ重視。キャラ重視!!」
お茶飲むか?と言われた言葉に木藤がうなずけば、
はお茶の準備をしに、その場から外れた。
木藤は、の後ろ姿を見ながら深い溜息をはく。
「夢も希望もないっては言ったけど、
本当に、あいつらの根性には頭下がるし、どこまで、美化されてんだろう」
の演説が終わった後の彼らの
今回の萌え話を聞いていた木藤はやややつれていた。
「あははは、あれか?悪キャラもまた魅力的☆に丸つけたやつらだから、
大丈夫だと思っていたけど、かなりノリノリだったな」
藤野は、晴れやかな笑顔を浮かべている。
それを恨めしそうににらみながら、木藤は、胸もとから一枚の紙を出した。
「うん、なんか悪の組織の歌まで考えてるし。ゴロとかも提供された」
ほれっと、出せば、峰がまじまじと見る。
「ほぅ、なかなかのできですね」
木藤は峰の賞賛に、方杖をつきながら同じくゴロの書かれた紙を見た。
「相変わらず、仕事はやいし」
木藤の言葉に、藤野が反応する。
「なんだ、知り合いか?」
木藤は、また、胸もとから厚さ3cmはある本を取り出した。
「あいつは、オンリーの大御所。
今年は新刊はこれでいくらしー、キャラ替え見事です。
今度はこのセリフを言って欲しいってほら、これ」
「・・・・・・・・すごいですね。この量」
渡された本に引いている峰から、藤野が本を奪う。
「だけど、ありがたいな。そろそろネタつきてきたし」
パラパラとめくって、速読している藤野の後ろから、が現れた。
お盆の上には、新しいお茶の入った湯のみ4人文と菓子がついていた。
「なんの話?」
みんなの前、湯のみとお菓子を配り終わると彼らは言った。
「の今回のセリフに感動したって話」
「月餅がうまいって話」
「これからどうしようって話」
とてもいい笑顔で笑いながら。
2010・3・23