それは、ほんの序文。
俺たちがある種血なまぐさい会議と名ばかりの、
の素晴らしいところの言い合いになっていた時だ。

「ふはははははは」

突如、鳴り響いた笑い声に俺たちは、部屋を飛び出した。

「な、なんだ」

「なんだ、なんだ、と聞かれても答えてあげないあまのじゃく」

「お、おまえは」

「こんばんわ、みなさん、いや、宿敵グリーン忍ぶ戦隊6年ジャー」



そこには、先ほどまでの噂の人物。 と、
その後ろに、5年は組がいた。
の服は、真黒で、詰襟のような服を身にまとい、
いつものような困った笑みではなく、不敵に口元をあげた。

「あまりにも、遅いのであいさつ代わりに来てみれば、なんだその体たらくは、
我らの敵がそのようだとは嘆かわしい」

いつも先輩には尊敬語を使うが、乱暴な口調になっている。
そして何よりも目が違う。のほほんと柔らかな雰囲気が剣呑で鋭く光っている。
一体、これは誰だ。と茫然としながらようやく口が動いた。

「な、なにを」

横では、伊作が震えている。無理もない。
あそこまで熱をいれた人物が、こんなにも変わってしまったのだ。
彼の中で、すさまじく脳処理が行われているのだろう。
しかし、彼はもはや ではない。敵だ。

「き、」

「き?」

「キャー超かっこいい、なにそれなにそれ。いつもの甘甘な様も最高だけど、
今日のちょっと悪な様も、最高!!
今すぐ脱退するから、僕を連れて逃げて!!」

「・・・留三郎。伊作を落とせ。話が進まない」

「おう」

そう、敵だとまじめに思っているのは、俺だけらしい。
手刀で黙った伊作をじとっとみながら、まじめな空気が変わってしまったことを、
ゴホンと咳払いをして戻し、俺はに最終確認をした。

、いや、 と、5年は組。俺たちにはむかうことがどういうことか、
分かっているのか?」

俺たちの敵だと、お前は認めるのか?と顔をあげれば。

「おや、どうなるというのか、レッド。君が体を持って教えてくれるのか?」

な、何だと。早い。
の顔が近くにあり、食われるような冷たい目に、負けることのない絶対の自信の笑み。
顎をとられ、ふっと笑われ、顔が赤くなる間もないほど。

、触るなら私だぁ!!」

な、何だと。もっと早い。
小平太が、俺との中に入った。
に飛びかかるような姿で。よし、小平太そのまま捕まえろと思ったが。

「ふっ、しつけがなってない犬は嫌いだ」

クーン。
暴君は、耳に犬耳がついたかのように、その一言で、なりをひそめた。

「そうそう、犬はおとなしいのが一番。そう従順な犬ほど好ましい」

は、クツリと笑うと、そのまま小平太の頭を撫でた。
奴は気持ちよさそうに、頭をすりよせている。
か、完璧に懐柔されている。

「小、小平太。何してる!!敵だぞ。戦え」

「小平太、羨ましすぎるぞ。私に変われ」

仙蔵を見れば、なんだお前はこっちを見るな暑苦しいと視線で言われた。
さっきからまったく反応しないと思えば、その鼻血の拭いた後で、
悶えていたことがうかがいしれて、うん。なんだろう。
いつもの、お前だ。と安心すればいいのか。ちょっと、現実をみようか。
奴は敵になったんだ。敵。しっかりしろ。最上学年。ふがいないと言われても
本当にしかたがないと思えばいいのか判断付かない。

「両方とも、嫌だ。すっごい気持ちいい」

「な、なんてグダグダ」

頭が痛くなって押さえれば、椿の仮面を付けた一人がの傍により言う。

「司令官。そろそろ」

「そうか。では、挨拶も済んだことだし、俺たちはここで失礼しよう」

「ま、待て、。お前は一体何がしたいんだ」

留三郎の言葉に、は止まった。
一拍の間で、彼は、いつも俺たちの知っているの顔をして、ほほ笑んだ。

「なぁに、ちょっとした子供の悪戯ですよ。留三郎先輩。
では、さようなら」

!!!」

に近づこうとする留三郎の前に、狐の面と、炎の面。

「おっと、司令官の邪魔はさせないし」

「何もしないのならば、何もしなければいい。それが賢明だ。
我らに盾突くなどと、100年早いと思え」

「お前ら、何をしている。行くぞ」

「「「はい、司令官」」」

そういうと奴らは、空気にとけるように消えた。

「き、消えた」

「く、なんて奴だ。忍術学園にすんなり入ってこれるとは」

ぐっと握りこぶしを握れば、小松田さんが、
誰かが書いた外出許可書を持って、立っている。

「え、入室許可書書いて、外出許可書にキチンと記入して帰って行ったけど?」

ペラリと俺たちに見せると、確かに彼らの名前がきっちり記入してある。
脱力感が体中をめぐった。

「小松田さん」

「あはは、恰好良かったなくん。これってなんの遊び?」

小松田さんは、意味も知らずに笑う姿に、ポンと土井先生から粉末の薬を手渡された。

「敵も敵だが、味方も味方だ」

「ああ、本当に、恰好よかった。本気で。
サイン貰ってくるとか、どう思う?レッドの言うとおりだ。みんなふがいなさすぎるぞ。
いくら私たちの・・・私のであっても、相手は敵。わざわざ布告までしてくれたのだから。
あの服とか、マジいい。似合ってた。
私たち6年に盾突いた。これは、まさしく戦いだ」

「・・・・・・仙蔵。いや、ブルーよ。本音と建前を混ぜるな」

本当に、土井先生の言うとおりだ。








【グリーン忍者戦隊 6年ジャー 2】








さかさかと、落ち葉が落ちている帰り道に、仮面を外した後ろの三人に聞いた。

「と、言う感じで、宣戦布告してきたけど、どう俺出来てた?」

くるりと聞けば、まず狐の面をもった木籐がうなった。

「うーん、もうちょっとこう「俺に甘えるだと?くっ、いいぜ。骨の髄まで溶かしてやるよ」
ぐらいまでのほのかな甘さも欲しー」

「ほのか?」

次に、椿の面をもった峰が手のバッと伸ばして、振付で俺に伝えた。

「いえいえ、「いいか。貴様ら、これは聖戦である。勝ちたいと思うな。勝て!!」
ぐらいのきつさがあっても」

「聖戦?」

二人は、完全俺で遊んでるよね。そんな嬉々として語らなくてもいいのに。

「藤野は、どうよ」

木籐に言われて、炎の面をトントンと肩に叩き、そうだな。と口の周りを一回すると。

「きっちり首元までしめるよりもさ、ちょっとはだけた方がいいと思う」

「「駄目。きっちりから垣間見えるチラリズムが大切」」

「あ、そう」

二人に言われて、若干引き気味の藤野の姿に俺は同感した。
苦しんだよね。この詰襟。

なにはともあれ、宣戦布告!!











2010・3・8