6年生が、自爆した。
立花先輩を本気で怒らすと、自慢の焙烙火矢を一切使わずに、
あそこまで武道派で知れらる二人を徹底的に打ちのめさすことができるのか。
と立花先輩に畏怖と尊敬を抱く前に、を見て、見事な鼻血を吹きだし倒れた。
立花先輩は、と出会ってから、キャラが変わったと思う。
なんか、微笑ましくなった。
そして。
「3年は危ないから、木の陰に潜んでなよ」
「うぜぇのが来ましたね。4年は、穴でも掘って顔でも見といたらどうですか?
穴掘りとかナルシストとか、キャラ濃すぎるんですよ」
今、綾部と、伊賀崎が壮絶な争いをしている。
「ヘビ好きなんでしょう?私は、先輩のほうが好き。勝手にそこの首のと結婚しとけば?」
「はっ?何言ってるんですか?蛇と結婚なんて出来るわけないでしょう。
電波なら何言っても許されるとか思ってないですよね?
というかどさくさにまぎれて、僕の先輩の名前使わないでくれますか。不愉快です」
うわー。初めて見た。完全戦闘体制で、いつもの無表情じゃなくて、
怒っているのが丸わかりの綾部と、ぺらぺら人と、しゃべる伊賀崎。
火花散って、後ろに、もぐらと蛇が見える。
「先輩は、私の方が好み」
「そんな戯言だれが信じますか。名前呼びされてないくせに」
おっと、蛇の威嚇に、もぐらが穴を掘った。
「邪魔」
「あなたこそ、邪魔です。毎度毎度邪魔ばっかりしくさりやがって」
二人とも、獲物をとり始めた。後ろの淀んだ黒い空気がまして、
「行けージュンコ」「踏子ちゃんアターック」の声が聞こえた。
【彼と天女の勝手な戦争 9】
「なんだ、富松、そこをどけ」
「い、嫌です」
「おまえには、見えないのか。あの私よりも素晴らしく美しい先輩の姿を!
ああ、涙がこぼれていらっしゃる。この滝夜叉丸以外にそれを拭うものはいない」
「そんなこと言って、先輩になんかするんでしょう?
4年生はアイドル学年って言われてるけど裏では、
「手を出すのが早いね、さすがアイドル」っていわれてるんですから」
「だ、誰がそんなことを!!」
「あ、俺っす」
「お前か!!」
「いいじゃないですか。そのお綺麗な面で、他の男とよろしくやっていてください。
先輩は、用具委員のお母さんなので、あげれません」
「人のことを、尻軽みたく言うな。私は、純情一途だ。先輩しか・・・嫌なんだ」
「うわーカマトトぶるなよ。滝夜叉丸。
だから、三之助に裏でウザ夜叉丸って言われるんですよ」
「・・・・・・お前はさっきから聞いてれば、どうやら私の輪子ちゃんの味を知りたいらしいな」
「なんですか。言葉じゃかなわねぇからって力で服従すか?
そうやって、先輩も服従させて犬プレイさせるなんて、いやらしい!!!
さすがアイドル学年、いいですよ。望むところです」
先輩を変態にさせてたまるか!!との掛け声と、
変態なのはお前の頭だ!!との掛け声が混じりあい、
うぉぉぉぉと叫びながら、戦ってる。
4年と3年の仲が悪いのは知ってるけど、あんなに悪かったけ?
とポリポリ頬を掻いていれば横から雷蔵に名前を呼ばれた。
「三郎、ごめん。どうやら僕はもうダメみたいだ」
「!どうかしたのか?雷蔵」
私の言葉も間に合わず、とさりと雷蔵は地面に倒れた。
ばっと後ろを見れば兵助が泣いていた。
「ごめん、三郎、雷蔵。この責任はちゃんと取ろうと思う」
もしかして、を見れば。
「へ、兵助、なんてことを」
を見れば、相変わらず涙をぽろぽろ流しながら立っていた。
私は、理性がなくならないように、直視しないで頑張っていたのだが、
涙と別に白い液体のようなものが目に入ってつい視界の端に入れた。
途端、顔が真っ赤になる。な、なんてことだ。涙だけでも、はっきり言って、
立花先輩のようになるか、まじでどっか連れていって二人の世界であは〜んなのに。
雷蔵の姿を良く見れば、真っ赤な顔して、鼻血を出し地面に倒れている。
「な、なぜこんなことをしたんだ。兵助」
「だって、豆腐ぷれいしたかったんだもん。だけど、分かったことがある。
三郎。俺にかけるより、にかける方が、いい。
豆腐+ってもうベスト。そして、ちょっとアレみたくて、やっべ興奮する」
「穢れなき眼と、少年のような笑顔で、なんてこと言ってるのこの子!!」
やばい。この兵助。色々とねじが飛んでいる。
しかも、そういった後、やっぱり少年のような顔で、
凄いスピード出して、のほうへ移動してるし、
その後どうしようとしてるのか容易に想像できる。
駄目だ。阻止しなければと思うけれど、ガクリと膝が勝手に地面につく。
鼻からたらりと垂れる感触がして、手を当てれば、赤かった。
兵助、何気に、最強だ。あの壮絶な色気を前に、動くことができるなんて、
それよりも、私だって、したかった!!!そんな思いを残して私は地面に倒れた。
「!!結婚前提に、初夜よろしくお願いします」
「馬鹿か!!」
木籐が、綺麗に久々知の頭に踵落しをくらわした。
峰のほうは、に、薬を嗅がせて眠らせ、顔に袋をかけたところだ。
俺たちは、の顔を見る心配がなくなったので、目隠しをとると、
4年と3年は争い中。5年は、この動かなくなった豆腐馬鹿のせいで、
色々やられて地面に倒れてるし、6年はみな沈黙している。屍のようだ。
前よりもなんかレベルアップしているの最終兵器に、
ぞっと背筋が凍る気がした。それともう一つ。
「おやおや、楽しかったのに、もう終わらせてしまうんですか?」
「篠神先生」
この人は、の陥落者であるけれど、それ以上の狂った愛情をに向けている。
他の陥落者はみなほとんど自爆したというのに、
理性を保って、笑っている彼が恐ろしくてならない。
彼は、どれほどを愛しているのか。それとも、その逆か。
「そんなことないですよ。藤野くん」
彼は、俺に笑った。心の中を読まれたらしい。
「ただ、私くらいになると汚れてますから。
彼の、そんな姿年がら年じゅう妄想しているだけです。いまさら、涙ぐらいじゃぁ」
「っていいながら、をどこに運ぶ気だし!!」
木籐が、突っ込みながら、篠神先生がどこかへ持っていこうとしたを奪う。
どうやら、効いていたのだが顔が変わらないし、
この人は、興奮すると、静かになって口数が減るだけな人だと理解した。
なんだ。俺のとりごし苦労か。あー、なんか色々疲れたな。
と背筋を伸ばせばバキボキバキと音がしたが、俺の骨の音ではなくて。
「あ、あの」
すっかり空気で忘れられていた存在の天女さまが俺たちの目の前に降り立った音だった。
枝を何本か折って下に降りてきたようだ。この人何気に運動神経いいんだよな。
「今回のこと、すいません」
もじもじと顔を赤くさせて、言い訳を始める。
一体何が目的だ?と峰と木籐に合図を送れば、木籐が、凄く顔をゆがませた。
なんだ。一体と、思えば、目で合図される。視線を追え?
俺は、木籐に言われた通り天女さまの視線を追ってみると、あーなるほど。簡単だ。
「あ、あの。それで、お、お名前を教えてくれませんか?」
そう言って、裾を掴んだのは、篠神先生だった。
「篠神 悠一郎ですよ。お嬢さん。次はもっと面白くしてくださいね?」
「ハ、ハイ。私、精一杯がんばります」
「いい子ですね。私、いい子は好きですよ」
「す、好き」
どうみても社交辞令な言葉に、なお顔を真っ赤にさせて喜んでいる。
そこには、前から見ていた彼女の打算もなにもなく不器用なまでの本物。
確定。どうやら、天女さまは、死神に恋をしたらしい。
なんて不毛な恋だろう。
そして、これで、天女さまの勝手に起こした戦争は終わりを迎えた。
戦争は恋をしたら終わるらしい。
2010・2・24
【オチは、篠神でした。この後、やっぱり最大のライバルが主人公だと気づく。
リプレイはもうないけど、乙女心がねじれて、腐女子界のアイドルになるか、
主人公にその気がないことを知り、篠神の話を聞くために一緒にいたら、友になるのもあり
はたまた、それ以外もな続きも考えられますが、これで完結です。
かなり長くしてしまいましたけれど、梓さんが気に入ってくだされば幸いです】