が、女体化したということで俺達が預かることになった。
彼、いいや、今は彼女は男の部屋だというのに、そのまま着替えようとするから
仙蔵が血の海だ。いっけね。ですまないものもある。
風呂は俺達が風呂に入っている間、体を拭いてもらうことにした。
風呂に上がった仙蔵は、白い顔を赤く染め、最初は風呂に入ったからだと思ったが、
自分の部屋の襖に、伸びてる白い手がカタカタ震えている。
「なにをしているんだ?仙蔵」
「お、お前は、想像しなかったのか、この不健全男め。
ここでが、服脱いで体を拭いている。
どうしよう。まだ拭いていたら、私は、責任持って結婚しなければならない」
と、自身の言った言葉に閃いたようだ。
すぐさま扉を開ければ案の定、服をちゃんときたがいた。
「・・・・・・残念だったな」
責任はとれないようだ。と言おうとしたが、そのまま鼻血をだして倒れた。
素晴らしく良い笑顔で。
「寝着GJ」
俺は頭を掻いた。この調子で、どうやって一週間過ごせというのだ。
「どうかしました?」
「いや、こいつの頭が少し可愛そうなだけだ」
「ああ」
とどこか哀れみの目で見られているというのに、仙蔵はそれすら満足げで
み、見られてる。の視界に私が映っている。と幸せそうな顔をしていた。
その後、は、押入れの中に入って寝ると言っていて、
それは、女の身であまりにもと止めたが、俺達の押入れは、
いつもどおりではなく、広くなっており、上の段には羽毛布団。
下の段には、の服やら本やら置いてある。
「じゃぁ、おやすみなさい」とあまりにも普通な態度だったので、
どうやったんだということも聞けず、思えば5年は組の食堂
が俺達の部屋に繋がっているからくりも、仙蔵のおかげで気にならなかったが、
今思えばどうなっているのだろうと疑問がわいた。
寝る準備は出来ていたが、俺にはまだ夜の鍛錬があり、
仙蔵もまだ寝る時間ではないはずだと、
作法委員長でもある仙蔵にのカラクリのことを聞こうとすれば、
「文次郎。私は今日寝れる気がしない。
そして、お前がいないとなにをするのか自分でも分からない。
だが、しかし。にき、きききき嫌われたら、私は生きていけない。
今日のお前の鍛錬は中止だ。伊作特製文次郎用睡眠薬をくれ」
仙蔵の目は血走っていた。
そして、俺は無言で仙蔵に薬を渡し自身も飲んだ。
もう深く眠って全て忘れたいほど、今日は色々と疲れた。
朝、目が覚めると味噌汁のにおいとご飯のいい匂いがした。
深い夢の中にいたので、
「あ、おはようございます。朝ごはんできてますよ」
と朝日の中光り輝いて笑う少女が、誰なのか分からなかった。
俺っていい嫁貰ったなと寝ぼけたことを考えていた。
顔を洗ってふんと頬を叩いて、俺は仙蔵のようにはならんと意気込み
現実をちゃんと思い出して戻れば、まだ仙蔵は起きてなくて、
はじっと仙蔵を見つめていた。
起きていなくて、良かった。また医務室行きだったろう。
「仙蔵先輩って早起きなイメージあったんですけど、まだ起きないんですね」
そりゃそうだろう。あの睡眠薬を普通の奴が飲んだら、昼までぐっすりだ。
伊作の薬はえげつないほど利くから。
「仙蔵先輩って綺麗ですね」
そうポツリとが言うと、あ、そういえば魚焼いてったけと、囲炉裏の方へ移動する。
俺は、布巾をそっととると、仙蔵の鼻の血を拭った。
すげえ。狸寝入りをしているわけでもないのに、体はちゃんと反応してやがる。
ここまで、仙蔵に刷り込まれているの思いに、
本当になんとかならないものかとため息を吐いた。
こいつが、こんな風に壊れてしまうほど
人を好きになるなんて思いもしなかったから、友人として応援はしたいのだ。
「潮江先輩。朝ご飯出来たんで、仙蔵先輩起こしてくれますか」
「おい、仙蔵。起きないと特製朝ごはんは、食えないぞ。俺が食うぞ」
「な、なんだと、文次郎がを喰うだと!!おのれ、あの年中モンモン男。
あいつのアソコをちょん切ってやる!!」
いや、どちらかというと、前の仙蔵に戻って欲しい。
切実に願う。
【もはや危険物扱い 3】
今日実習あるんでしょう?俺昼ごはん握っときましたんで、どうぞ。
と渡された握り飯は綺麗な三角形だ。あいつ、本当にいい嫁になるなと、
口を開けて食べようとすれば、「待て」と横のパートナーである仙蔵から止められる。
なんだよと、見てみれば、凄い眼圧で睨まれた。
「文次郎。これをは握ったと」
もはや、こいつの口から出てきた名前に嫌な予感しかしない。
「私は、昨日と朝、悔しい思いをしていた。特製の私のためのご飯だぞ?
型をとればいいか、腐らないように加工してとっておけばいいか。
どっちがいいと思う?」
「黙って食べとけ」
もしゃりと口に入れると、塩が丁度よく中に朝の残りだろうか、シャケが入っていた。
豪勢だ。もしゃりもしゃりといつもよりゆっくり咀嚼していれば、
黙って握り飯を見ていた仙蔵が口を開いた。
「そうか、溺れるという手もあるな」
「溺れる?」
「桶一杯に詰めてそこに顔を埋める。の手の温もりが味わえる至高の一品だ」
「お前は、自分でもなにがしたいかよく分かってねぇだろ」
といえば、う薄ら寒くなるほどのものすごい笑顔で仙蔵は言った。
「はっきりと言おう。私は今ものすごく浮かれている。
忍者なら、宙に浮けると言っていた幼い文次郎に嘲笑することもなく、
お前は組でいつも浮いていると笑っていえる」
「・・・・・・今のお前の方が浮いてるぜ。そろそろ正気に戻ろうか」
と、彼らは実習で隠れていることを忘れて大声で喋っていた。
しかし、周りのものは彼らの(仙蔵)異様さに気味悪く近づくことをしなかった。
一方はというと、急に舞い込んできた暇に本を読みながら寝転んでいた。
彼らの服の洗濯も暇だからやってしまったし、夜ご飯の仕込みも完璧だ。
あとは、何をしたら良いのか。とごろごろとそのまま回転してみると、
前は簡単に動けたのに、上手く回れない。
あれ?なんでだろうと思って自分の体を見れば、胸が邪魔している。
あれ?俺って胸なんてあったけ?
あ、そうだ。女になったんだっけ。と、いまさらながら冷静に自分の体のことを思い出した。
フニと胸を触れば、ふかっふか。男のロマンの柔らかさ。
だけれど。は触っていた手を止めた。
これは、違う女の子を触るからいいのであって、
自分の体を触っても虚しいだけだ。と深いため息を吐くと、
「あー気晴らしに菓子でも作るか」
とは藤野から送られたぴったりの忍服の腕をまくった。
黄緑色した服を身にまとった少年が二人、長屋を歩いている。
一人は、口を開けて、一人は飄々と歩いていた。
二人の間に会話はなかったが、その代わりにぐぅぅぅぅ〜と腹の音が鳴る。
「左門、凄い音した」
「三之助の音も凄い」
二人は顔を見合わせた。さっきまでいた彼らの保護者の富松 作兵衛が、
厠に行っている間に先に食堂で席をとっておこうと思った彼らは
食堂に向かっていた。だか、決断力のある方向音痴と無自覚な方向音痴が
歩けば、彼を待つよりも先に目的地につけるはずもないのだ。
「しっかし、食堂もとうとう逃亡するようになったんだな」
「不思議だな。真っ直ぐ進んでいるだけなのに」
だが、彼らは自らが迷子だということに気づかずずんずん真っ直ぐ歩いてく。
そこにふわりと香った臭いにすんと三之助が鼻を鳴らした。
「ん?おい、左門いい匂いがしないか?」
「お、どれどれ」
ドドドドドと忍術学園らしからぬ音が聞こえたと思えば、
パァーンと勢いよく襖が開かれた。
一体、なんなんだろうとは目を見開いたが、
あっちも同じように目を見開いている。
あまりにも長い沈黙に、はどうにか会話をしようと
当たりさわりのない言葉を口にした。
「え、えーと、こんにちわ」
「こんにちわ」
「誰ですか?」
「俺? だよ。君たちは」
「三年ろ組神崎 左門!!」
「同じく次屋 三之助っす」
素性が分かった所で、彼らの腹の音がまたぐーと大きな音を立てた。
は、出来上がったお菓子と、自分の食べるぶんの昼ごはんをちらりと見てから、
二人を見て。
「えーと、食べていくかい?」
そういえば、彼らはこっくんと頷いた。
素直な子は大好きです。
2010・1・31
【何が書きたかったのか。どこかいってしまってる仙蔵と苦労人文次郎と
迷子コンビが書きたかった】