それからの木籐たちの動きは早かった。
まず、を峰の部屋から出さないで、
篠神には峰が一週間は帰れない内容の任務を学園長に渡し、
恒例の「行って来ます」の篠神からへの抱擁は、

「会えないだけ、会えた時嬉しさが増すだろう?
でも、寂しいから手紙にしたよ。頑張ってね」

というに無理やり書かせた手紙でどうにかクリア。
奴は、嬉々として戦地へ赴いた。
一番厄介な相手をどうにか回避できた木籐らは、
自家製の「ましょまろ」という南蛮のお菓子を食べた。
曰く、ようやく分かったからとなにか哀愁を漂わせてたけど、
ほのかに甘くて柔らかくて美味しい。
今度売りに出してもいい。と思えるほどのできばえだ。
のほほんと4人が寛いでる中、木籐のいった台詞で、平和は崩れた。

「あー、言いにくいけど、木籐、今から帰らんといけんのよ。
あっちの年末の調整あるし」

と言えば、まったく分かっていないをのけてピシリと固まる二人。

「もしかして二人ともダメなん?」

藤野は口元を覆って何かを考えており、
峰は、一瞬崩れた顔を戻して、冷静に言い放った。

「いいえ、大丈夫ですよ。
小煩いじじ、ばばどもや会いたくもない奴らばかりですから、
藤野、あなたも報告があるんでしょう?行っていいですよ。僕が学園に残ります」

と、峰が言った瞬間、後ろの峰の部下が騒ぎ始めた。
峰の目がせわしなく動いているし、矢羽音が飛び交う。

「うるさい!!僕は行かないと言っているだろう」

ととうとう峰が叫べば。

「ダメです。今、下手なことして他の候補者に
揚げ足をとられることは避けたいんです。我慢してください」

と、あっちもとうとう言葉で返した。
5年間一緒にいて初めて峰の部下の声を聞いたことに、
少々感動すれば、やはり空気が読めていて読めていないが口を挟んだ。

「峰。大丈夫だから、みんな行ってこいよ。部屋から出なきゃ大丈夫だって、な?」

部屋から出なければ、大丈夫だったのは一年前だ。
もはや、の存在は学園に広まりつつある。
一週間どの学年も実習もないのに、
の周りに人が集まらないわけがない。
ちらりと二人の様子を見る。峰はダメ、藤野もあの青い顔はダメだろう。
しかし、こうも無防備なを置いていけるわけもない。
このままいけば、帰ったときには誰かに襲われている。
だからいって、誰かに頼めるわけもない。
ちっと、舌打ちをしたくなれば、は、あ、そうだ。と手を打った。

「そんなに心配ならさ。仙蔵先輩は、俺が女になったこと知ってるから。
俺のこと頼んどくよ」

あはは。それにしても、面白い先輩だよな。俺が名前呼ぶと、顔真っ赤にして、
挙動不審になるんだぜ。もしかして、嫌われてるかなと思ったけど、
これは産まれてこのかたこうだから。気にしないでくれ。
いつか慣れるから、無視とかしないでくれって泣かれた時には、
後輩のために性格を変えようなんていい先輩だなって思ったもん。
ん?何?木籐、手を挙げて。
なんで知ってるかって?
朝、仙蔵先輩にあったら、女になってる。とうとう妄想がここまで!!
て奇声を発しながら鼻血出して、そのまま倒れたんだ。
保健室連れて行こうとしたら、後ろの先輩が、
触れるな酷くなるから、俺が運ぶからってさ。麗しい友情だよな。


木籐たち三人は目を見合わせた。
・・・・・・・・・・うん。
少々不安は残るものの、彼はを襲うまでには一週間以上かかりそうだし、
それ以前に鼻血を出さずに触れるようになるまでに一週間以上かかりそうだし、

彼は6年で天才で、のことを除けば優秀な忍たまなのだから。
後ろにいた奴もセットで、のことは頼もう。
この学園で、今の所組めば、かなうものなどいないのだから。





【もはや危険物扱い 2】







「と、いうわけですみませんが、お願いします」

と言って と思われる女性は、ふかぶかと土下座をした。
朝、俺がみたのはに偶然を装い出会い、案の定鼻血を出している仙蔵で、
ようやく冷静になり起き上がったとき、が女だったと訳分からない
ことを言っていたので、授業を休ませた。
女だ女だとしつこく言うので、心配になった俺は一緒にいれば、
どうやら仙蔵が言っていたことは間違っていなかったらしい。

「ももももももももも、文次郎」

「落ち着け仙蔵。息をゆっくり吸って吐け。大丈夫大丈夫だ」

が女体化したことよりも、
冷静な男と言われた仙蔵がに関してこうも酷くなることのほうが受け入れがたい事実だ。
の後ろには5年は組。
通称「完全別世界の住人」
忍術学園にいながら、忍術学園の管轄にはいないよく分からない存在。
目のあたりにすれば普通の5年の姿に安心した。
説明も分かりやすく。端的に言えば、
先生は任務で出かけ、彼らも各々任務があり。
そんなさなかに、なんらかの現象でが女体化した。
一週間で元に戻るが、男だらけの忍たまに一人女性というのは、
あまりにも危なく、だといって、一週間で戻るのに、
くのたまに入れるほど状況を大きくしたくない。
が女体化したことを隠密にでき、信頼も置ける人物に俺達が選ばれたというわけだ。

「話は分かった。つまり一週間をかくまえばいいわけだな」

「そうです。よろしくお願いします。ああ、注意ですが
が、何者かに食べられたりしたら、
あなたたちを色々な意味で許しません。それで」

「峰。その頼み方を間違っているぞ。
お願いします。潮江先輩。潮江先輩のアレばらさないんで、
一週間必死に守ってください」

「・・・・・・二人とも脅してるし、あーでも、のことよろしく。
二人はやると思えばやるますんで、じゃぁ、。ちゃんといい子にしてなよ?
押し倒されたら、ちゃんと言った様にしときなよ」

「うん。俺、頑張るよ。だから、頑張っていってらっしゃい」


「「「行ってきます」」」

・・・・・・そういっての笑顔に三人は笑顔で俺達の部屋から消えた。
俺は侮っていたのだ。彼らの笑顔であるのに頼んでいる姿勢であるのに、
底冷えするような雰囲気。まさしく彼らは噂どおり。
「完全別世界の住人」なのだ。
と、俺は冷や汗を隠せなかったが、ぎゅっと裾を引っ張る存在に気づいた。
顔を赤くさせて、震えながら息が荒い仙蔵だ。

「どうしよう。文次郎。が傍にいる。それだけで、ドキドキする」

「まずは、ゆっくり近づこうな。ほれ、ゆっくりゆっくり」

「ひゃあ、こっち見た!!」

すまん。前を見ててくれ」

「あ、はい」

「ほれー大丈夫だ。頑張ってるぞ。仙蔵。今の所鼻血は出てないぞ」

まずは、これをどうにかしよう。仙蔵のこれまで積んできたイメージが崩れてしまう。
この一週間。触っても鼻血出さない。声をかけられても、赤くならない。
他と同じ普通の仙蔵に、戻すんだ。
そろそろと、ゆっくりながらもに近づいた仙蔵を見ながら俺は、そう決意した。


「あ、そろそろ飯にしません?」

「さ、触った触ってしまった。どうしよう。手が洗えない。どうしようか?文次郎」

だが、手を掴みながら真っ赤になり震えている。仙蔵。
お前はどこの乙女だ。本当触れたかどうだか怪しいぐらいで、
掴まれたらどうなるんだ。お前。

「食堂もなんなんで、俺ご飯用意できますよ。よっと、ここを押して」

が、床の一部を押すと、壁から食堂が出てきた。

「な、なんだコレ」

「ちょっと、無理言って繋げて貰ったんですよ。5年は組の専用食堂と、
で、ちょっと作りますんで、待っててください」

と、いそいそと服を紐で括る姿に、気持ちが和んだ。

「どうしよう。文次郎。
私、嫁が見えるんだけど。ふ、ふふふ。とうとう妄想がここまで」

「大丈夫だ。仙蔵。お前の妄想俺にも見えている」

そうか。仙蔵をここまでするくらいな男だ。女になれば無敵に違いない。
その後、食べた飯は食堂のおばちゃんと違う味だが、とても美味しく、
おかわりはいりますか?とそっと茶碗を受け取り、このくらいでしょうかと気が利き。
終わった後、食器の片付けをやるといったが、
これから色々迷惑かけますからと譲らなかった。
最後には甘味までついて、美味いな。といえばちょっと照れくさそうに笑って嬉しいですと。
の風貌は地味ながらも家庭的でどこか可愛らしい姿に
こんなのが嫁ならばとつい思ってしまった俺よりも、



「嫁になって下さい。頼みます」



と鼻血で土下座していた仙蔵の方が重症だ。














2010・1・27
【リク1段女体化GO!!場所は6年い組なりました。陥落者のなかで、
一番安全な場所だと思う。仙蔵はああだし。本編では、文次郎はまだ春到来?なので】