二人で任務ならば恋人役、又は夫婦役が多い。
は常に笑顔で、時には怒り泣いて照れて全身全霊で私を愛すが、
その姿は本人ではない。
それでも体はなので嬉しくない訳でなかったけれど。
あの時から、彼女が演じているのは昔の彼女自身で、
目の前で愛しい人は私ではないことを知ったから、複雑な思いだけが残る。
18歳。もはや嫁がいて子供がいておかしくない年齢である私が、
5歳も年下の少女にまごついているのは、
恥ずかしい話、本当に好きになったはじめての相手であるからだ。
前のほうがもっと自由で、もっと簡単に人の心を奪えていた気がする。
体を奪って、甘い言葉の飴ときつい態度の鞭で大概は陥落させてきた。
だけど、体だけを奪って泣いてしまわれたら自分を殺したくなるだろう。
甘い言葉では相手は陥落しない。きつい態度の鞭などすれば離れていくのが怖い。
体も欲しいけれどそれ以上に心が欲しい。
だから、適当に理由をつけて私はを逢引に誘ったわけだ。
考えてみれば、は好きな食べ物とか愚痴などは言うけれど
その他趣味とか小物とかはさっぱりだ。
「で、どれが欲しい?」
巷で有名な小物屋に連れてきた。
彼女はムムムと眉間に皺を寄せて、ぱっと私に振り返ると。
「すみません、どれも欲しくないです」
有名な着物も、書物も珍しいものもすべてすいませんと申し訳ない顔をされる。
申し訳ないのはこちらだ。
これだったら事前に調査しとけば良かったんだ。
だけど、幼馴染の田村くんに聞けば、逢引自体ないものにされる気がする。
4年生はまだまだ子供で、授業も本格的な色には入っていないらしく
こういう駆け引きは弱いが、一人あの忌々しい金髪が強い。
いくらぽわぽわして忍びの腕は一年以下か同等であっても、
遊びは人以上してきたらしく、邪魔する具合が素晴らしく絶妙だ。
それに、4年にアイツがいる。
灰色のクネクネした見目麗しい無表情な少年。
彼は自分の気持ちに理解はしていないし、も嫌われていると思っている。
が、周りから見れば大体の気持ちは分かる。
そしては嫌いと言われながら彼を許すほど気に入って入る。
案外は綺麗なものに弱い。
それもあるけれど、どうやら・・・・・・いいや考えるのを止めよう。
今日は楽しい愛しい彼女と逢引なのだから。
すまなそうに謝る彼女の手を引いて、私の隠れ家的な甘味屋に連れて行こう。
彼女の好きな食べ物なら全て頭の中に入っているのだから。
団子よりもお饅頭。
お汁粉よりも、餡蜜。
前この季節になると、食べたがっていた金時の美味しい店に連れて行くよ。
手を繋げば、世界は変わる。
知っている道、暗い道、同色ばかりな世界が少しだけ色づいて、
冷たくも温かいとも感じない自分の手が誰かの手を握るというだけで
自分の体温をちゃんと分かるから。
ああ、でも格好悪いな私。
どんな危険な仕事もこなしてきたのに、どんな窮地でも手に汗なんてかかなかったのに、
たったこんな小さなことで汗を止める術すら分からなくなる。
後ろを向いて、汗かいている私の手を誤魔化そうとしたけれど、
相変わらず鈍くて私の思いに気づかない彼女は顔を真っ赤にさせて、
彼女の手からも汗を感じるから、幸せで笑みがこぼれる。
同じように緊張してくれている姿は、任務のときのにはなかった姿だから、
これが本当の自身だから。
胸の中あたりがふわんと軽く、じんわりと温かくなる感覚に、蕩けてしまいそうだ。
手を離さないで、いられる関係がいいな。
手を離しても傍で歩いてくれればなおいいな。
私の横で小さくはにかむがいればもう何もいらないと時々思うんだよ。
馬鹿だな男だと、
女のために仕事を捨てた男を鼻で笑っていた私が
幸せだからと言って、クナイを鍬に変えて、血のにおいを土のにおいに変えた
彼の気持ちが分からなくもないんだよ。
任務じゃなくて、ちゃんとした夫婦になろうといつか必ず言うから。
今はもう少し待ってくれ。
ちゃんと君が私を好きになってくれるか、自信がないんだよ。
いくら好意をほのめかしても冗談だと笑うから、揺らぐんだ。
でも、そろそろ敵も現れたし、タイムリミットはもう目前。
美味しかった。また行きましょうと、鼻歌を歌っている彼女の「また」で
気分が高揚する。
そんな帰り道のことだった。
小汚い老人の露天商。まったく儲かっていないようだ。そうだろう。
一体それにどんな意味があるのか分からないものがずらりと並んでいて
私ならいらないと一笑してしまうものに、彼女の足が止まった。
そして、それらをじーっと見て、徐々に目が輝いていくのが分かる。
「・・・・・・素敵!!!」
耳が麻痺したのかと思った。が、は、そのまましゃがみこみ、
老人に鼻息荒く話しかける。
「お、おじさん。緑の箱と白の箱と赤と・・・いいえ全部あるだけお願いします。
ええ、全部。あ、あとその横の、ネジそう。
大中小を入れている筒も、見せてくれませんか?」
ほとんどを買った彼女の荷物は大量で、
ほくほくとだらしない顔している彼女の顔も可愛く
重いからと言って無理やり荷物をとり、彼女の部屋に行けば、
彼女の部屋には所狭しと箱が並べられていた。
今日、一つ彼女の趣味が分かった。
【好きなもの・・・・・・ガラクタ、箱や筒ネジ瓶など】
変わっていて普通なら引いてしまう趣味も
今度から、お土産は甘いものとそれにしようと、重要な情報にはや代わり。
つまり、それほど愛しいわけです。
2009・12・18
【リク8段。お待たせしました。
途中まで出来ていたけど、なかなか完成しなかった品物です。
ちょっと、ノロケすぎた気がしなくもないけど。ルカさんのお気に召したら幸いです】