俺、別に小松田さん嫌いじゃないよ。
嫌いじゃないけど、時々この人はどうやって生きてきたんだろうと不思議に思うことが多い。
小松田さんは、普通に本当普通に掃き掃除をしていただけなんだ。
俺は、その光景を廊下で見ていた。
寒いのはあまり好きじゃないけど、暑いのよりまし。
だって、寒ければ服を着込めば良いけど、暑いのは肌までで終わりだし、
それに脱いだら、脱いだらで、組の奴らが、急いで服着せてくるしで、
一度怒ったら、俺達の前だけならどうにかなるけど、他でやらないでね。
これは、のためなんだからと、逆に怒られた。
なんだ、俺の肌は目に悪いのか?
それとも、なにか出しているのだろうか?
・・・・・・まぁ、それは置いておいて話は戻るが、
この寒い中小松田さんが鼻歌歌いながら、気分よく掃き掃除をしていたわけだ。
・・・・・ついさっきまで。
いまは、俺になったけど。
理由は、大きな穴に落っこちて、捻挫して、仕事は
そこらへんにいた俺に託すということになりまして。
どうして、目の前にある印に気づかないんだろう。
あんまり成績よくない俺だってちゃんと分かったのに。
あ、そうか。鼻歌だ。鼻歌で、気分がよくなって、それで落ちたんだ。
なーる。
と、俺は、彼の代わりにさっさと小気味よい音を立てながら、
上から紅葉し落ちた葉を集める。そろそろ冬だなぁ。
と、冷たくなった鼻をずっとすりながら、俺の脚の半分の量になった落ち葉を見ていた。
うーん。これをどうやって捨てようか。
冷たい風も吹いてきたし、ゴミいれを持ってくる前に、風で飛ばされてしまうと
考えていれば、見知った一年が見えた。彼らは俺に気づくと手を振って
元気よく名前を呼んだ。
「先輩〜」
「福富、山村」
「何してるんですか?」
「ほにゃ〜落ち葉一杯」
「あ、分かった。先輩。これで焼き芋食べる気だったんでしょう?」
「あ、だったら、さっきおばちゃんが、お芋さん一杯あるって行ってたよ〜」
「先輩。取ってくるんで、僕らも食べていいですか?」
いいもなにもその案があったかと、今閃いたのポーズをしていた所だ。
だけれど、俺の言葉をキラキラ眩しそうな目で見ている一年に、
俺は、優しく頭を撫でて。
「ああ、待ってるから。とっておいで」
と言った。時に人は嘘も必要だ。
たとえ、捨てることしか考えていなくて、ぼーとたっていただけでも、
彼らが焼き芋の準備をしていると思えば、焼き芋の準備をしているのだ。
別に、小さい嘘なら可愛いもんじゃないか。
と、誰に言い訳するわけでもなく。
俺は二人が来るまで突っ立てれば、下坂部が、誰か知らない一年とともに俺を発見した。
「こんにちわ。先輩」
「ん、こんにちわ。下坂部」
「こんにちわ」
と挨拶した1年はこれまた下坂部と同じように青い顔をして、
それ以上に痩せこけた頬が目立った。
「ぼく、1年ろ組二ノ坪 怪士丸。図書委員です」
「俺は、5年は組 。下坂部と同じ用具委員だ」
「先輩・・・。ああ、平太が言っていた先輩ですね」
「下坂部が?」
「はい、甘い先輩で、食べたら美味しいって」
「・・・・・・いや、しょっぱいと」
「うん。違うよ。怪士丸。食べたらとても美味しいだよ」
「あ、ごめん。とてもを忘れてた」
「うん。君たち、当事者を置いて話さないでくれる?」
などと、たわいもない話をして、いや、半分怪談もので、
なぜ、この子達はそんな嬉々として話すのか。
おかげで、寒い中寒い気分になっていれば、
聞き覚えがある声が俺の名前を呼んだ。
良かった。そろそろ、夜寝れなそうだったんだよね。いや、もう寝れないかも知れないけど。
と、ぱっと声の方を見れば、人が増えていた。
「途中で、みんなに会って、でみんなも一緒に」
「名前なんていうんですか?」
「5年生なら三郎先輩知ってますか?」
「委員会はなんですか?」
「からくりに興味ありますか?」
などと、一気に話されしかも詰め掛けるものだから。
完全に押された俺は、そのまま落ち葉に突っ込んだ。
「大丈夫ですか?先輩」
「うーん、ありがとう。下坂部と二ノ坪」
俺は、腹筋の力で起き上がり、心配そうに覗き込む他の一年にも
大丈夫だと笑った。
そして、一人の少年がさっき言っていたことを通訳してくれた。
「みんなも一緒というかその量じゃ、みんなで食べた方が良いな」
「5年は組 だ」
「三郎くんね・・・・・・うん。知ってるよ。よく、部屋にいるし」
「委員会は、用具委員、よく物壊すけどね」
「からくりは、興味っていうか、よくあんなの作れるなって感心はする」
一つ、一つ返せば今度は名前をどっと言われ、
俺の頭じゃ到底覚えられない量に、
藤野に後でリストを作ってもらうかと、苦笑して芋を焼いた。
そういえば、こんな大勢で焼き芋を食べるのも懐かしいと思っていれば、
くいくいと下から引っ張る感触がして、下を向けば
下坂部が俺の裾を引っ張っていた。
「どうした?」
「先輩、これ半分上げます」
「ん?だけど、下坂部のだろう?」
「いつも、貰ってばっかりでだから」
本当小さい子って和むよね。昔の焼き芋は、こんな可愛くなかったよ。
大きな大人が、子供のように芋に群がって、大きな芋を奪い合っていたよ。
差し出された、小さな芋の半分に、俺は、笑みを隠しきれなかった。
そんな俺の様に、目の前のいる下坂部が首を傾げて、
俺は、下坂部の両手に握られている一つの芋を手にとって。
「ありがとう」
と微笑めば、彼の青い顔が少しだけ赤くなった気がした。
周りを見れば、美味しいねと顔を向け合い嬉しそうに微笑んで、
あ、それ俺だよとか、しんべい食べすぎとか、
忍術学園という名前と違った世界の笑い声が聞こえた。
俺は、その光景に目を細めながら、
こんな日も悪くない。と微笑んだ。
2010・1・23
【ダイ11最終リク。ここまでかかってしまってすいません。
そしてこれが、ほのぼのかどうか、あれ1年は組は?これは平太夢じゃないか?
などなど色々怪しいですが、ひなたさんさんがお気にめしていただければ、幸いです。】