【雷の裏】
。
私はなにか間違っていただろうか?
彼女が泣いた。
秀麗が泣いたなら、泣かせた奴を殺しに行く。
彼女が泣いたなら、・・・・・・殺しに行く。
結果は同じなのになにか違うような気がして。
それよりも。
が愛しているといった男を調べることが先決だ。
彼女はなぜここに来たか?
色々と調べなければいけない。それは紅家当主として
なぜ愛しているといった奴が傍にいないのか。それは・・・・・・たぶん叔父としてだ。
もやもやする気持ちを追い払い黎深は影を呼んだ。
報告書。
無機質な紙から伝わる文字という伝達手段が、
こうも人の心を狂わせることができるとは。
黎深は紙を読むとすぐさま燃やした。
真実を知らなければ良かったのだろうか?
そうすれば、いつものように接して・・・・・・。
知らないうちに手から血が流れていた。
巧妙に隠されていたその事実を。
を探し出せない理由はその姿かたちにある。
だから黎深は似た容姿を探させた。
何十件という中から調べ上げたその少女の最後。
『銀の髪と黒目を持った少女
売れない絵師と行動を共にし雪の降る日から二人とも行方が分からなくなった
売れない絵師の名を 』
彼女が名乗っている名前を思い出して、黎深は考えを確信へと変えた。
そしてその足で鳳珠邸を訪れた。
なぜだか、無償に会いに行きたくなった。
むやむやとした気持ちとなぜだか安心した気持ち。
そして、がいなくなるのではという不安を抱えながら。
あの日。
雷の中で。
わらわは、久しぶりにわが子に会った。
彼女はやはりわらわの思ったと通り血が強く受け継がれてしまったようだ。
それでも彼女が今まで奴らに見つからなかったのは、黄葉のおかげだろう。
彼女は美しく育っていた。
わらわに似た顔で背の君の瞳を持ちそして、
「。変わったな。体だけじゃなく心も。」
体だけじゃない心も。
綺麗になった。
彼女は元々誰もよりも真っ白だった。けど、それは危うい色を含んでいた。
今はそれが少しだが薄れていた。
「そうですか。私は変われたんですね。」
彼女は少し嬉しそうな声色を持って相変わらずの表情のまま私を見据えた。
「。わらわはおぬしを愛しているよ。」
そう。
ずっと言えなかった。いやわらわ自身拒否されることを恐れていたのだ。
彼女は愛を知らなかった。
それを否定されるのがどれほど怖いか。
「を変えたのは、一人ではないようじゃの。」
今を生きている。
それだけで、かの男だけではないこと分かりきったこと。
嗚呼。
おぬしは気付いてなかったのか。
天才と呼ばれても人の気持ちには鈍感で・・・・・・そうじゃの。
わらわも少しことを急かしすぎたようじゃ。
それにまだ時が十分じゃなかった。
おぬしまだかの男のことを・・・・・・。
。。
わらわは秀麗だけじゃなく、おぬしにも幸せになって欲しいのじゃ。
その願いがどれほど高慢か知っている。
わらわはおぬしを捨ててしまったのも当然じゃ。
自分の気持ちを優先した。
かの男がにしたことをわらわは出来なかった。
そのわらわがかの男を忘れて違う人間と生きて欲しいと思うのは高慢だろう。
それでもわらわはに生きて欲しいのじゃ。