私にも大切なものが出来た。
だから、守ろうと思う。貴方が、母様が守ろうとした家族を。
は貴陽に着いた。
先王の時の爪あとは残っているものの、あまり変わらない土地。
は、頭からずっぽり被ったマントを深くかぶり一目がつかないようにある場所へ向かった。
その場所は以前よりも古びたが、の記憶どうりのただずまいで、少し酒のにおいがした。
は誰も他に誰もいないのを確認すると、奥へ行き、後ろを向いてなにやら作っている老人に声をかけた。
「黄仙。帰った。」
葉 棕庚は、振り返るとはマントをとり前に置いてあった椅子に座った。
「・・・綺麗になったあ。。」
「世辞はいい。」
「中身はあんま変わってねぇようだが、・・・その分だと少しは掴めたのか?」
「ああ。」
「・・そうか。まぁ。お帰り。」
「・・・・・・ああ。ただいま。」
葉 棕庚は、初めて返ってきたただいまと言う言葉を聴いて微笑んだ。
意味が分からないと言って言わなかった言葉を口にするようになった。
それだけで、に少し感情を手に入れた証拠だった。
まだ、顔には表れていないが少しずつ変化している様子に
まるで子供の成長を見守っているような気分を覚えた。
そう浸っているとが葉 棕庚を見つめ尋ねた。
「黄仙。今の宮城での騒ぎ。お前と同列か?」
「・・・相変わらず。その目の確かだな。」
「やはりな。やり口が複雑でそれでいて綺麗だ。」
「褒めてどうする。で、どうするんだ?」
「・・・動くとしたら、明日の夜。」
それから翌日。
は宮城に侵入していた。
警備が甘いな。そう思いながらは
後宮の仕えの格好をして自分と似ていながらまったく似てない気配へ向かった。
緑の葉が揺れながら、梅の鮮烈な赤と芳香を放つ場所に老人は立っていた。
「わしは、この場所が一等好きじゃ。のぉ、そう思わんか?」
は気配を消すのをやめ老人の前に現れた。
「・・・・さぁ。分からんな。」
「その瞳その容姿。薔薇姫と邵可の子供だな?」
「お前は、・・・至高の色を持った仙人か?」
「ふん。どうやら秀麗と同じではないようだな。」
「当たり前だ。同じ人間などこの世には存在しない。
そして、お前の書いた筋書きはこれが必要不可だ。」
が取り出した包みをみて
「・・・・・・お前は、そうか。黄仙の匂いがすると思えば噂の弟子か。
くくく。面白い。お前はそれで何を私に求める?」
「何も?ただ、巻き込んだその分ぐらい働いてもらう。」
「はははは。噂は本当だったか。面白い実に面白い!!」
そう笑いながら霄 瑤センは、老人の姿から若者の姿となりに近づいた。
「惜しいな。先に見つけていればよかった。」
「運命には逆らえん。私の師は黄仙だ。」
「その瞳、見えているな?」
霄 瑤センは、のあごを掴み顔を上げさせ瞳を覗き込んだ
「・・・・・少しだ。人の気持ちなど読み取れんからな。」
「だがおまえは、自分のなすべきことを知っている。違うか?」
霄 瑤センは、老人の姿となり包みを持ちながら梅の木にいた。
「薔薇姫のやつ、いいものを残しおったわ。くくく。久しぶりに手ごたえのある。」
と一人呟くと今日の夜、はじまる準備を整えに行った。
その顔には笑みが浮かびながら。
今日の出来事は回避は出来ない。必要なことだから。
けど、最悪の状況にはならないだろう。
は、そう思い。
今日の宿と食事確保のため家から離れた場所で絵を売った。
貴陽でも『』の名は売れており日が暮れる前には一枚となった。
もういいかなと思い仕舞おうとすると、
「ま、まってくれ〜。それ買うぅがっ・・・・・・。」
絵を買いにきた若い男性が、止まっている軒に頭をぶつけて動かなくなった。
これは、私のせいだろうか?
は、その男の近くまで行くと、息はしているが完全に意識は飛んでいる。
しょうがない。そう思ったは、周りの人にこの男が住んでいる場所を訪ね送っていった。
この少し注意力不足の男は、運がいいのか。
それとも何かしらの腕が良いのかしらんが、けっこういい場所に勤めているな。
彩七区の黄東区。
は、門番に男を渡し、そして求めていた絵を渡し帰ろうとしたが、
掴まれた。そう、気絶していた男に・・・。
そして、今なぜか厨房で料理を作っている。
「すいません。本当にすいません。」
男はに頭を下げ謝った。
どうしてこうなったのか。といえば。
怪我とここまで送ってくれた礼がしたいと言い、男は料理人ですぐ作りますんで
と半ば無理やり連れてこられた。
腹は減っていたしいいかと思えば、
やらかした。
男は、なべの中に手を突っ込んでいた。
一体何を見ていたんだ?どうすれば突っ込めるんだ?詰問することより
治療を選んだは、綺麗に包帯を巻き。
「全治一週間。安静にしていれば直る。」
といった途端男の顔は青ざめ。
「そ、それより速く直りませんか?私しか今料理できる人物がいないんです!!」
こっから長くなるので簡潔に言えば、
料理人の上の人物が、里に帰り、そのまた上が病気。
で、最後に自分と下使いしか居なくなってしまった、その男は料理の腕はいいのだが、
いかせん自分の性格のせいでうまくいかなかったらしい。
後一ヶ月もあるのにどうしよう。これでは主人に良いものがだせない。と、泣きつかれた。
熱意が伝わった。いい物を出したいではなく喜ばせたいという純粋な気持ちだった。
は、
「一週間だけだ。」
そういって厨房に立った。
2007・3・31