たとえば、雪を掴むみたいに、
掴んだと思っても、掌で溶けて居なくなってしまうそんな存在だった。



私がと共に旅をするようになって、色々と彼女の人となりを知れた。


第一に無欲。



龍蓮とが次の町へと歩いていたとき。
盗賊と出くわした。

「金をだしな!そうすりゃ命だけは助けてやる。」

そういって近づいてくる男たちに龍蓮は横笛を出したが、
に止められた。

「金だ。」

そういっては金の入った袋を男たちに投げた。

「へ。随分物分りがいいじゃねぇか。」

男たちは袋をとり、はその横を通り過ぎようとした。


しかし、欲の強い盗賊は、

「待ちな。お前なかなか綺麗な面してんな。俺らと一緒に来てもらうぜ。」

そういっての腕を掴んだ。

龍蓮が横笛を取出すよりも早く
は盗賊の男ののど笛に短剣を突きつけていた。

「去れ。欲ばりすぎるとお前の身が滅びるぞ。」

盗賊の男はまさか少女にやられるとは思っても居らず、

「け。うるせえ。おめぇらやっちまえ。」

そういってからは速かった。
はものの見事に男たちを沈め、そして立ち去った。

お金の袋を取らずに。



「なぜ、渡した?」

「使う分だけはとってある。あれはかえって邪魔だ。使うものが使えばいい。」

そういってはいつものように絵を描き始めた。


は金や人の欲しがる欲には無頓着だ。
自分も無頓着ではあるが、はそれ以上だった。



第二に異常までのその才能。





は何でも出来た。
見たもの聞いたものすぐに覚えることが出来た。

そこは自分と変わらないが、


その日も龍蓮は笛を吹いていた。
その横でが絵を描いている。いつもの光景。


だがその日は違った。
龍蓮の笛の音に我慢できなくなった人が野次を飛ばしたのだ。


龍蓮はその言葉に動じることなく笛を置こうとしたとき。
横から自分の笛に合わせる音が聞こえた。

二つの不協和音は混じりあい美しい音をなった。
そして、吹き終わった後の拍手の渦。

龍蓮はのほうをみて言った。

「すごいな。私の笛の音に合わせれるとは。いたく感動したぞ。」

「龍蓮。私の音が空っぽだから合わせられただけだ。
龍蓮の音は素直でますっぐで時々難解だけど、美しいと思ってる。」

そういってまた絵に向かっていくを、龍蓮はなぜだか喜ばしいと感じた。
口元にかすかな笑みをたえながら、そうか。と呟いた。




そして旅をして幾ばくか経った頃。

龍蓮は、初めての笑みを見た。

それは、儚くも美しく龍蓮の心に色々なものを残した。
複雑に絡み合った感情。
どういっていいのかさえ分からなかった。


嬉しい。

驚き。

感動。

・・・・・痛い?

が笑った姿を見て龍蓮はに対する感情の変化を捉えていた。












2007・3・24