世界は常に動く私の世界も常に変わる。
だけど、貴方の世界は変化しない。だから、私は変化を求めない。
雪がとけ春になった。
はまだ旅を続けていた。前と違うのは一人になったということ。
自分の持ち物が母の形見の短剣。彫刻家に貰った櫛。安物の簪。
そして絵描きが残した商売道具だけになったこと。
前の持ち物は絵描きのため金を工面するときに消えた。
今はただ重く冷たい物へと変わっている。
それと、変化を解いた。
銀髪で黒目の女の変わりに黒髪で赤目の少女が現れた。
変化したときの年齢に近くなっていた。
もうすぐ10年経つ。時がもうすぐ動く。
は歩き出した。
絵描きの残した筆と紙を持ち絵を売り歩いた。
絵描きの意思を残すために。
『。絵は人に感動を与えるんだよ。僕も絵によって変われた。
誰かどこかで僕の絵を見て感動を与えられたらそれはとても素敵なことだね。』
その言葉を胸にしながら
それから月日が少し経ち。
売るといつも完売しは絵描き『』として名を馳せていった。
専属にならないかと言うものも少なくなかった。
それを全て断りは絵を描き売りそして旅を続けた。
その日もすべて売れは店じまいをし帰ろうとすると
「私は、藍 龍蓮。この絵を描いたのはお前か?」
派手な服をき頭に羽を生やした人物がに尋ねた。
「それをどこで?」
「うむ。素敵な崩れ具合の小屋を訪れたときに拾った。そなたがこれを描いたのだな?」
「そう。」
「そうか我が同士よ!私はいたく感動した!この感動を一曲作った。聞いてくれ。」
そういってその人物は横笛をとり吹き始めた。
近くにいた動物は落ち、周りいた人々は蜘蛛の子を散らすように逃げた。
そうして満足そうに拭き終わると、
は、龍蓮に見据えていった。
「真っ白で何もないけど。それを分かった上でそこまで気に入ったならあげる。
貴方の感情は素直で真っ直ぐ。とても分かりやすい。
私は 紅 。『』では失礼する。」
商売道具を持ってどこかいこうとするの腕をつかんで龍蓮はとめた。
「待て!素晴らしい。私の曲を真に理解したものは初めてだ。一緒に仙人になり伝説をつくらないか?」
「なぜ、伝説をつくりたい?」
「残すためだ。」
「私は残したくない。それに仙人もなりたくない。」
「う〜む。ではこうしよう。私の夢を手伝ってくれ。」
「・・・・なぜ私にそこまで固執する。」
「理解されたのは初めてだ。」
「・・・・・・天の才だつ子供。藍家の決定を覆すことの出来る人物。
忠告しよう。私は異端だ。害を及ぼす。何も言わず去れ。」
「嫌だ。何が何でも一緒に旅をする。」
「・・・・ならもう何も言わない。行こうか。龍蓮。」
「!!ああ。行こう。」
そうして、またの世界は変化していく。
それが当たり前だと分かっていてもなぜだか心に霧のようなものが掛かった気がした。
矛盾しているその感情をなんと言うか知らずに。
一つだった影が二つに増えた。
****
自分のことを理解してくれる人が現れたならば、世界はどう変わるのだろうか?
奇抜な服装と髪に色とりどりの羽を飾った
黙ってれば美少年のそれは一枚の絵を持ち、近頃有名な絵師『』に会いに行った。
各地に旅を続けている自分でさえ『』の居場所は特定できなかった。
話を聞いたのは偶然。
宿屋での男の話。
有名な絵師『』がこの町にいる。
男は絵を握りしめた。
この絵とであったのは風流な建物に出会いそこに一泊泊まった時。
寝床の下に落ちていたくしゃくしゃになった絵。
それを見たときの感動を自分は忘れなかった。
何もないまでの純粋な白それでいて何か渇望している。
その男は思った。この絵の人物ならば私を理解してくれるのではないだろうか。
それは直感であったが、興味を抱いた男は捜したその絵を描いた人物を。
そして浮かび上がった人物
『』
ここ数ヶ月で上りあがり風景画しかかかない絵師。
男はついに『』たる人物と対面した。
顔の造形も素晴らしいことながら驚いたことにまだ自分より幼い少女だった。
黒い髪を古びた簪一本でまとめ、目は赤くそれでも中に蒼い炎を感じた。
「私は、藍 龍蓮。この絵を描いたのはお前か?」
その言葉は自分の世界を徐々に変化させる始まりだった。
2007・3・21