久々に家に帰れば、静蘭と違った美形がいた。
そいつが私を指差して嬉しそうに手をとる。
その姿に怒って焦っている、静蘭に、驚いている姉さまと父上。
私の記憶に彼はいなくて、頭をかしげた。
硬くて厚い手を武芸者の手だけれど、記憶をくるくると回してみたものの、
一向に出てこなくて、表情が乏しい私の顔を見て奴は笑った。
「かわんねぇな。いや、あんときは髪の色とか違ってたけどよ。
ありゃ、かつらか何かか?」
彼は、私が旅を続けているときに会った者だろう。
ああ、嫌な気がする。
それ以上、口を開いてしまってはダメ。
彼は、顔を右、左と向くと私に聞いた。
それは、宮廷で何日何人悪口や陰口を言われるよりも聞いた。
よりによって、私の核心に触れた。
「なぁ、あんときのツレはどうしたんだ?」
ふっと、口の端が上がっているのが分かる。
今、私は笑っているのだろう。
私には感情がない。だとしたら、これはなんなのだろう。
黒くて深い沼が私の足にへばりついて、沈めていく。
「ツレ・・・・・・彼なら、」
口にしなくてはいけないの?
「もう「すまん!」」
大きい声に驚けば、男は髪をかいて謝まりの言葉をいった。
なにがおこったのかわからないけれど、周りが彼の言葉で笑っているから
冗談をいって誤魔化したのだろう。
静蘭が彼を叩き、父様も姉さまも笑っている。
彼が姉さまを守る人だと決めた主上の評価を一つ上げた。
軒下で、ゆっくりと星を眺めた。
まだ、傷口が痛むものの、痛覚を感じないように思えば耐えれた。
微動だにしない星を眺めて、は呼んだ。
正確には、柱の後ろに隠れている彼だ。
名前は、浪 燕青。
大柄な彼は、中身も大雑把だが、よく人の気持ちを読む人物だと思う。
たった一回、彼曰く二回目の出会いにして彼の印象は好印象だった。
少し分が悪そうに、そろりと出てきた燕青は、
「ばれてたか」
と、言うとの横に座った。燕青はを見たが、彼女は最初と変わらず
星だけを見ていた。まるで、自分のことなど興味もないように。
いかん。
燕青は、暗くなった考えを消しように頭を振った。
彼女の性格から、嫌な奴は傍に置かない、だとしたら自分はまだ領域に入れただけ
良かったんだ。そう思い、の横顔を見ていた。
上の姫さんと違って、きっと母親似なのだろう、陶磁のように滑らかで白い肌に
大きな紅い瞳、ふわふわと風に漂う黒い髪、だんだんとイイ匂いも。
そう思いはじめて燕青はまた頭を振った。そういうことじゃなくて、
自分は誤りにきたのだ・・・まぁ、仲良くなりたいという気持ちはゼロではないが、
それはさて置き言わなくてはいけないことがある。
燕青は気持ちを落ち着かせるとに声をかけた。
「あ、あのな」
「うん」
「最初のこと悪かったな、その、嫌なこと言わせようとして」
「いい、けど、感謝する。正直助かった」
は、顔を燕青に向けて話した。その顔には表情というもの全てなく
なまじ綺麗なだけ人形や妖怪を思わせ、
星の光で浮かびかがる彼女の体は、細く力をこめてしまえば
すぐに折れてしまいそうだった。
燕青は、自分の体からぞわりと得体の知れない何かが駆け巡っていくのを感じた。
「私は、貴方と、一体いつであった?」
その言葉に、目を大きく見開き少し照れた燕青はそれを隠すために、大きな声で
いつもより早い話した。
「それはな、俺の師匠の借金が
これが、彼らの出会い。
2009・3・25