恋というのは煩わしくてしょうがない
その感情というものを理解してからどうしていいのか分からない

いや、まえまえからだから…………私は随分と前から奴に恋をしていたようだ
深く考えてみれば…………いや違うそんなはずがない

一目惚れだったなんてそんなわけがない

頭の回路が異常なはやさで回転する
優秀な私の頭の答えはそれ以上考えるなということだ

そうだに恋して愛していたとしても私は変わりない
最初に彼女は姪だ
しかも好きな男がいて・・・星になっている男だが、
他の男からせめよられてもまだ奴を愛してるらしい

手元から音がすると思えばいつのまにか手の中の扇が壊れている

・・・おきにいりだったのに

次に彼女は私に嫌われていると思っているとこだ
それは長年思われているだろうし

あーもうむしゃくする
分かった後の方がこんなにも苦労するのか
・・・・・・鳳珠もそうなのだろうか

横にいる仮面を見れば相変わらずの面
いいや、今日のは嬉しい時の仮面だ

そうだろう。今日は、新進士任命式の日だ


可愛い姪っ子と悩ませ続ける姪っ子
それがどうなるのか
あの洟垂れ小僧の腕の見せ所だな
そして、はどうするつもりなのか
あいつは紅 桐麟としてここにいるつもりはない
『私は、紅 です。今の私は紅 桐麟ではない』といった
それは紅家の中心として王に従うことはないという意味
私の考えが正しければやつがここにいる意味は
それを考えてうすら寒くなった
やつはまだ囚われている 永遠の愛とやらに
あいつはもう自分のために生きようとしてない

ここにいる意味を失ったらやつは

扉が開く
光を差し込みながら、徐々に光の中から黒い影が輪郭を作って人となっていく
美しく堂々とした凛とした姿で秀麗が入ってくる
その姿に歓喜した
次の少年などどうでもいい秀麗の姿だけを目に焼き付けて
にまにました姿を隣から「その顔をさっさと隠せ」と言われた

まったく秀麗の美しさなかにも可愛さが残るその姿が分からない仮面は困る


思い嫌味一つでも言ってやろうとしたら
仮面が止まっていた
完全な停止だ 珍しいものでもみたと、その視線をみれば


スッと布の擦り切れる音が聞こえるくらい
中心にいる人物は光を放っていた

後ろからの光だと言ってしまいたい
紅い瞳はまっすぐ前を見据え
髪にはいつものように紅い珠がついた質素な簪と青い羽
ゆるいうねった前に垂らした髪は歩くたびにふわふわと羽のように風に揺れる
まっすぐで完璧な姿勢
そんな歩き方するものなどいくらでも見てきた
けど彼女のような自然であんなにも人を惹かせるものをみたことなのどない

急いで、予備にあった扇で顔を隠した
ほんとうに、恋とは煩わしく

まさかこの年で一回りも二回りも違う小娘に目を奪われたなんて
顔が赤くなっていくのがわかる
久しぶりにみたせいだろうか前よりも綺麗になっているような気がする
こんな所だれにも見られてはならないと危惧して横を見ればこちらなどまったく目にもやらず
だけをみている
ちっ、こんなときに仮面は便利だ
奴のあつい視線が鬱陶しくそれに無性にむかついて

「仮面のしたから感情が出てるぞ」

といえばすぐにこっちをむいて何かいようとしたが、
珍しいことに何もいわず黙った
その姿をみて黎深は思った

今はもうの姿は後姿にしかみえない

・・・お前が誰に囚われ続けても
誰が離してやるか、誰にもお前を譲らない





2008・9・13