ここはどこだろう?
問いかけるよりも吐き気を感じるほどの居心地の悪さに
足を動かしていた。



桜が満開だ。

どこもかしこも桜 桜 桜
うっとうしいことこの上ない。
いくら美しくともここまでくると有害だ。


いらいらと視界を占めるそれを、なんの遠慮もなく燃やした。
どこからともなく現れた焔は自分の力であらつれて、自分が異質だと思わせるものだけれど
自己嫌悪におちいるよりも
忌々しいとこの場所を葬ることのほうが勝った。


燃やしても燃やし尽くしても桜はどこから来るのか私の視界を遮って





とても懐かしい声が私を呼んだ。
あの寒い日から月日が経ったなんて信じられないくらい
もう会えるはずのない人物がいつもの少しはにかんだような笑顔で私に笑いかけた。
必死で走っても手を伸ばしても届かない。何か自分が必死に叫んでる。

すべてすべてを桜が遮る。



伸ばしきった手が彼に触れた瞬間。

彼の体は花弁となって風に流され消えた。
手の中にあった花びらがするりとすり抜けて、ただ立ち尽すことしかできなかった。


知っていた事実を目前に叩きつけられた。
星を掴んだ気でいてもそれはただ手を高く上げて何も掴んでいない。
視界がどんよりと黒く歪んで音が聞こえない。



どれだけそこにいたか一時間だったか二秒だったか
時間の感覚するつかめていない。
混沌とした流れのなか誰かの腕が私の体を包んだ。


「見つけた」


なにかがざわりと体の奥底でうごめいた。
すべての嫌悪感の正体を知っても、体も心も動かない
人形みたいだ。



「何も心配することない」


少し冷たい手が私の顔に触れる。
それは教える このまま目を閉じてしまえば楽になれることを



でもそれじゃあ。


何も変わらない。まだ私は動かないととまれない。




声が聞こえる。温かい声。
人形が人間に変わる。
帰らなくちゃここにいては駄目。



体から炎の柱を出現させた。
ちらちらと舞っているものを燃やし後ろにいた人物が離れた。


桜しかなかった場所に光があらわれた。
そこから聞こえる声に導かれるように後ろを振りかえらずは走った。



「いずれまた迎えにいく」




その声すら聞こえなかったようには走り続けた。
走り続けた光の先には仮面のドアップがあった。


、起きたのか」


「・・・・・・ほぉじゅ?」


「まったくいらぬ世話かけさせて」


「きせん?なんで」


「わしはこれから用事がある。この美人さんに聞け」



黄仙はそういうとさっさと箱を担いで出て行った。
はその様子をぼっーと眺めながらも自分の状況把握をしていた。


「心配かけた」


鳳珠は何も言わずにの頭を撫でた。
冷たくない温かな手の温もりに ずっと張り詰めていたものが緩んだ。


頬に何かが流れ出している
曲線を描きそれは布団に跡を残した。











2008・4・20