名前を紡ぐそれだけで何かが変わってしまう自分が確かにそこにいた。
私が彼女との立場を明確に言い表せる言葉は、姪と叔父の関係だ。
それだけだった。
初めて出逢った日。
自分と同じ人間だと理解した。
違うのは、心が閉じきったまま誰も信じないのではなく開き方を知らない何も知らない雛鳥のような子供だった。
瞳が私を映し出した、それまで私は私を疑うことなく生きてこれた。
真っ直ぐとこちらを見つめ抑揚のない言葉で大人である私と対等の話をするのが
まだ姪でなければ。
なぜかそういう考えが頭に浮かんだこともあった。
関係を切りたいのかそれとも・・・。
もう無意識に彼女のことを考えなかった。
次にあったのは、
秋になりかけてまだ空気は熱くすっきりとした空が広がっていた。
それなのにそこは古臭く暗い部屋だった。
自分の保身しか考えない古狸・女狐屑の塊みたいものの集まっていて、始まる前から胸糞悪さしか覚えない。
そこの中心に最初からいたかのように彼女は座っていた。
腐った連中の視線にも言葉もないかのように真っ直ぐ背を伸ばし目は閉じられることなく
あの日のままそこにいた。
なぜだか安堵した。なぜだか恐怖した。なぜだか誇らしかった。
なぜ彼女がそこにいるかよりも先にそんなことを考えていた。
理由は、やはり腐った連中は腐った意見しか出さない。
藍家の対抗。天才に対抗するのは、天才しかいない。確かに彼女は適合するだろう。
だが藍家の天才児と違うのは彼女は女だった。
ならばどうして彼女をそうしようというのか。決まりきっている。束縛するためだ。
利益をもたらす人間を外に出さないようするため、紅家に繁栄をもたらすため。
彼女は一生を紅家に縛られる。
反対した。しかしその頃私の力はそんなに強いわけでもなく、彼女の背中には桐竹鳳麟文
それと紅い牡丹が咲いている。
牡丹の意味は、王者の風格、風格あるふるまい。
彼女は抵抗しなかった。
未来をすべてみえているようで、口を閉ざし何も言わなかった。
それから、彼女は家を出た。そういう気はしていた。止める気もなかった。
心の中に空洞が出来たとしてもその意味をしろうとすらしなかった。
戻ってくる気がない、そう思っていたのに帰ってきた。
なぜだと詰問するより、心が躍った。
けどなすことすべて許せなかった。違う男の所に居ることも、知らないやつのために泣くことも笑うことも。
朝議が終わるなりに、いいたい言葉を言おうとしたのに。
こちらを見ず去っていく。
イラついた。
追いかけて肩を掴むと彼女はそのまま倒れこんできて、何のつもりだというよりも
真っ青な顔で息が荒い姿をあった。
それからよく覚えてない。
白い服が段々と赤く染まっていく。
軽い重さに生きている温もりが、失われてしまうことを恐怖した。
あの日、背中を見て以来の彼女の体は、痛々しいほど傷ついていて
首筋には、誰かの痕があった。
時が止まった気がした。
今すぐ刺客を放とう、いや自分の手で殺したいと思うほど激情した。
彼女を傷つけたものを、攻撃されていることを知っていて放っておいた自分を。
あの禿げは、生半可に殺してやるものか。
この世の全ての地獄をみさせてやる。顔に出ていたのか、いつのまにか居た鳳珠が止めた。
この苛立ちをぶつけようとしたが、自分と同様な人間に言えるわけもない。
鳳珠は、仮面の下からでも分かるほど殺気を出していた。
その姿は、愛しいものを傷つけられた男のもので。
それと同様ということはどういうことか。
知っていた本当は、でも分からなかった。
分かってしまったら、関係を変えなくてはいけない。はっきりしないものへと。
2008.2.11