とうとうきた。きてしまった。

自分が望んでいたものが。望んでいないそれが。
やはり自分と言う存在は、なんと歪な姿であろうか。


化け物?それもいいだろう。私だって自分がなんなのか分からないのだから。



はその日。いつもどおり仕事をしていた。
庭の手入れから料理の手伝い。
今は各部からの仕事を処理していた。

段々日が経つにつれて増えている気がする。

は、自分の机に置かれている書類を見た。
三山。
今日も徹夜だ。


ふと筆を止め目を細めた。

何度目だろうか。普通の生活をしていれば嗅ぐはずのない匂い。
は静かに窓を開けた。

外は、漆黒。月すらのみこまれてしまった。
焔だけが、風にゆれ怪しく揺らめいている。


段々質が悪くなっている。
食事すら、まともに食べさせてくれないくらいに。

いくら毒に耐性があったとしても毎回は勘弁して欲しい。
暴力、暗殺まだそこまで入ってない。いつ入るか分からない。

慣れている。


私はいつも・・・・・・いつもそう生きてきた。



休める場所などどこにもない。
私が生きている間にそんなものなかった。


いや、違う。

忘れるはずがない。


私には確かに居場所があった。今でも鮮明に思い出せる。
暖かくて懐かしくてなによりそこにいたいと願った。
思い出すと胸のなかにずんっとしたものがあらわれる。






揺れる揺れる。風に焔が。






私は弱くなった。居場所を得て居場所を失いそして、

何をいうつもりだろうか。

何を言えばいいのだろうか。

分からない。

私は何も理解してないまま。
あの頃と変わらないまま。


あの時と同じ乾いていて寒くないのに寒い風が私の頬を撫でる。


母様に言われたあの言葉。

私は母様を・・・・・・愛していたんだろうか。

それとも愛していなかったんだろうか?


今、誰かそう例えば姉様が死んで、私は泣くだろうか?

分からない。


「私はいらない」


子供だったころに言った言葉。
今でも言えるその言葉。


こんな歪で醜い姿を美しいと言う人の気が知れない。





なんだ。そういうことか。


私は本当に化け物なんだ。






揺れる。揺れる。揺れる。何が?心?






「本当に不気味じゃ。こやつの傍にいるものの気が知れぬな。」


本当は、


全部、


夢だったのかもしれない。


なんて


自分がつくった空想で、


私は本当は一人で、


鳳珠も、龍蓮も、叔父上も、


全部、全部


焔が、影をつくる。どちらが本物?






揺れる。揺れる。揺れる。揺れる。もうそのまま止まってしまおうか。







「何をしている?」


視界が現実に戻っていく、霧がかかっていた思考が晴れ渡っていく。
声がしたほうをはむいた。


何で貴方がここにいる。


「ただ風にあたっていただけです」


ここまで近づかれて気配さえも気が付かなかった。
どうやら闇に飲まれかけていたらしい。
らしくない。睡眠不足と栄養不足といったところだろうか。
それとも未来に少し絶望していたのかもしれない。



「どういうご用件で?」


貴方には、会うつもりなんてなかった。だって私は貴方に膝をつけれない。



「王」


彼が肩がピクリと動いた。









2007・10・26