「我が魂の伴侶としての証だ。私の代わりとして持っていてくれ。」



「・・・・・・悪いことは言わん。それを捨てろ。」





天候は快晴。
吏部試が今年は行われず、各部署での研修が始まる。
白い服を身に包みこんだは、挨拶をしてから行こうと思い
鳳珠の部屋に訪れた。
部屋の中にいたのは二人。
一人はいるべき人。もう一人は、招かざる客人。
招かざる客人こと、紅家当主が居ることはまだ分かるが、
の背中に張り付いているのが、天つ才藍家の象徴であり、最後の切り札の藍 龍蓮。
彼がなぜここにいるかは彼曰く魂とは引き裂けないそういう運命とのこと。
言ってしまえば、彼にしか分からないということだ。


部屋の中に、とても濃い人格をしている四人がそろった。
そして会いたくてもなかなか会えない人物がそろったとも付け加えておこう。


今その部屋は静かでそれでいて身も凍るような寒さが吹き荒れている。
お茶を運ぶ人手がカタカタと振るえ、仕事が終わるや否やすばやい動きで部屋を退出した。
褒め称えるべき仕事根性である。

毎度ながら、この三人会えば会ったで喧嘩ばかり繰り返している。
鳳珠と黎深だけでも喧嘩は絶えなかったが、龍蓮も入りグレードアップした。

龍蓮はべったり張り付きを口説き、
鳳珠は無言で龍蓮をひっぱかしたかと思えば
黎深はずっとけんか腰の小言を永遠と繰り返すそして時には物が飛んでくる。
そんな中、表情を変えないが静かにお茶を飲んだり
本を読んだり、三人の相手をしたりしているわけだ。
そんな彼女は、普通のいじめぐらいでは気付かないくらい強い精神力を持っているだろう。


しかし、彼女が疲れないわけでもない。
心底休めるのは寝に入るときだけだ。

馬が合わないなら一緒の空間にいなければいいのに。

と彼女は何度も思ったが、言った途端。誰と一番いたいんだと言われたことはまだ記憶に新しい。



ようやく行くことを告げ門まで行こうとすると、


「では私もそろそろ旅に行こうと思う。」


そして冒頭に戻るわけだ。

龍蓮はにソレを渡すと、ぎゅっと抱き「また」といい
笛を吹きながらどこかへ歩いていった。


本当にギリギリまで一緒にいた龍蓮の姿を見送ると、
は渡されたものを、髪に差し込んだ。
鳳珠はぎょっとしてをみ、


「つけるのかそれを。」


「ああ。龍蓮に悪い。嫌な気はしない。」


「だったらコレももって行け。」


「しょうがない。哀れなお前に私からもほどこしてやる。」


・・・・・・は羽と仮面と扇を得た。


なんだろう。
私に物を持たせるのがはやっているのだろうか。
それともそんなに物欲しげにみていただろうか。
私は知らないうちに欲しいと思っていたんだろうか。
色々と考えが頭に回ったが、深く考えるのをやめはそれを懐にしまった。




休みはたくさんあっただが、休めた気がまったくしないのはなぜだろう。
そんなことを考えながらも、
鳳珠から言われた集合時間に余裕をもって、
まだ、人通りの少ない道をのんびり歩いていた。
渡された書簡は目を通すこともなくゴミとして燃やされていた。








「・・・・・・遅い。おい。上二人の奴らと知り合いなんだろう?」


碧 珀明は、隣にいる人物を睨んだ。
今年からはじまった初めての女性官史であり、幻とされる称号 彩華をとった今噂の人物である。
膨大な視線や罵倒の言葉も物とせず、美しい整った顔が歪むことなくただ立っていた。

珀明が声をかけれたのは、の髪に付いている羽だ。
忘れたくとも忘れられないほどの影響力と破壊力が、
近寄りがたいという彼女の雰囲気を打ち破ったのだ。

名前は、秀麗もいるし下の名前でいいといわれてこともあるが、
あの龍蓮とずっと一緒にいられる強い精神力と広い器を尊敬したことと、
話していくうちに、悪くない頭と余計なことを喋らない彼女を気に入っていた。
だから自分も下の名でいいと言った。
彼女はじっと廊下を眺めながら珀明の問いを答えた。


「そうだな。姉とその友といったところか。」


「ならば、なぜお前がここにいてあいつらはここにいないんだ?」

ざわざわとした音が大きくなりすぐに静かになった。
の珀明への答えは消えてしまい。は静かに二人の様子を見ながら


「妨害といったとこか?
しまった。まさかこんな子供だましみたいな手を使うとはうかつだった。」



髪に木の葉をつけ服装が少々乱れた二人がそこにいた。



秀麗に向けての嘲笑と陰口が広がっていく。
珀明は眉間にしわを寄せを見たが、蔡礼部尚書と魯礼部官が来たことで視線を逸らした。



はただ静かにその二人を見それから、今から来る二人を見据えた。
子供のいたずらレベルの嫌がらせを馬鹿にしながら。












2007・8・17