生き抜くことの最低限の能力を身につけた
師とも言える葉 棕庚のところへ訪れた。

「黄仙。行って来る。」

「化けたな。まっ今のお前なら死にはしないだろう。行って来い。」
は髪を銀髪に目を黒く変えた10歳上の少女に変化していた。
それは黄仙の目から見ても本人だと言われなければ分からないものだった。

「行って来ます。」
はその言葉にまたここに帰って来いと言われた気がした。
少しだけあった感情がそれに答えるようにに訴えかけた。
しかしはそれに気づくこともなく、
ただ、真っ直ぐと自分の思う道へ後ろを振り向きもせず進んだ


門をでて少し歩くと子供の群れがいた。
自分が加わることの出来なかった者たちが楽しそうに走り回っていた。


そこをぬけ自分家の前まで来ると二胡の音が聞こえた。


自分はこれ以上に綺麗に弾くことが出来るだけど、
あら削りだが気持ちが伝わってくる姉様の音のほうが美しいと思った。
そう思って以来は姉の出来るもの全てやらなくなった。


理解した後は、家族の前で何かするということすらしなくなった。



私はいつか置いてかれる。

美しく強く優しく成長するだろう姉様に。
今を生き皆を守りたいと願う静蘭に。
それを守り優しく広く深く包みこむ父様に。

私には生きる理由などない。
ただなんとなく生き、時に流れるだけだ。

母様は私に教えたかったと言った。
生きてほしいと。
屍ではなく生きている人になって欲しいと。


それが母様の最後の願いなら叶えようと思った。

それはなにもしなかった私の生きる理由となり,
何も感じない少しも楽しくない世界を抜け出し
新たな世界へと旅するきっかけになった。


二胡の歌が止まった。
父様か静蘭に何か言われたのだろう姉様は違う曲を弾き始めた。


壮大でゆっくりとした曲
それはまるで自身のようであった。


時に流され生き、
悲しみを絶えても嬉しさ起こらず
嬉しさ絶えても悲しみ起こらず

時に流れ流れ行く旅人は
すべて知らず
生き生きる

神の子と人は言う
何も感じぬ旅人を哀れ哀れと
神は言う

持って生まれた才のぶん
それ相応の苦しみを
与えさせたは神の戯れか

今日も旅人は
生き生きる
何も感じぬその心で
母の願いを叶えるために


はその場を後にした。
もう会えなくなったとしてもの心は何も感じなかった。
ただ風が強く、肌寒さを感じただけ。











2007・3・14