信じあえる仲というのは、どういうことだろうか?
同年代?境遇?
私は、同じ立場で接することだと思う。




仮面の冷たさが肌で感じられる。
前までなら気にかけもせず、そんなことより仕事。だったが、
あの人に出会ってからは、ひどく感じるようになった。



その日も仕事で夜遅くに帰ってくると、
習慣となったようには、鳳珠の寝室で絵を描くか、本を読んでいる。

一度は、先に寝てもいい。と言ったこともあったが、

「主人がより先に寝ることは、私の品性の問題に関わる。」
といったきり話を聞かない。

せめて、寝室ではなく自室にと思うが、

「帰ってきたか確認できない。」
と言われるだろう。

信頼されているのだろうが、私は男で自分が女であることを自覚して欲しい。
それとも男だと思われてないのかもしれない。

鳳珠は、ため息を吐いた。


「どうした。鳳珠。何か悩み事か?」


「いいや。なんでもない。少し疲れただけだ。」


は、そういう鳳珠に触ろうとしたが手を引っ込めた。
そしてじっと仮面を眺めていると。


「どうかしたのか。。」


「・・・今日。あの人に出会った。」


「どうだった。」
鳳珠は、変態の友人を思い出しながら、
あいつは兄上大好き。姪っ子大好き。だから心配は要らないと思うが。


「変わらないな。あの人に相変わらず嫌われている。いや、前より嫌われたかもしれない。」


その言葉をいつもと変わらない顔で淡々と喋るものだから流してしまいそうになったが。


「嫌われているだと?」
鳳珠は驚いた。あいつは、先ほども言ったようだが兄馬鹿。姪馬鹿。
それ以外はペンペン草しか思ってない奴が、
邵可様の子供のを嫌っているだと?!


「理由は分かる。私は家族を捨てた。」
やはり無表情で語るに、鳳珠は触れようとした、抱きしめようとしたが。
一瞬感じた仮面の無機質な感触にその手を引っ込め手を握り締めた。


目の前にいる小さな少女を私は恐れていた。
近くなればなるほど、否定されることが、拒まれることが。
そんなことはないと思っても人は移ろいやすくもろい。
ゼロの可能性もなければヒャクの可能性もない。


彼女との壁を感じる。
自分から造ったものだが、それを壊したくて、壊したくなくて。
やはりその壁からも仮面と同じ無機質で冷たい感触が手を伝ってくる。



そうして私の世界は反転した。
意識を失う前に誰かの声が遠くで響いていた。


目を覚ませばそこは白い天井があった。
そこが自分の寝室だと気づくまでに時間が掛かった。


何が起こったんだ?


必死に記憶をたどれど、といたときのことまでしか覚えていない。


「起きたか。」


直ぐ傍に当たり前のようにがいてそのくらいのことで
混乱していた自分が嘘のように落ち着いていった。


「私は、いった    」
鳳珠は、言葉を発しようとしたが、重要なことに気づいた。


仮面の冷たい感触が感じられなかった。
いつも感じない自分の指の感触だけが生々しく感じられた。

言葉が切れたことに不審に思いながらが鳳珠に近づこうとすると


「ち、近づくな。」
鳳珠は片手で顔を隠し怒鳴った。
言った後後悔した。は動きを止め、静かな重い沈黙が降りかかった。


「なぜだ。」
その一言だけが静かな部屋の中で響いた。


「見られたくない。」


「何をだ?変わったところなど何もない。」


鳳珠は、少し指の隙間を空けてをみた。
相変わらずの顔で、首を捻って考えこんでいた。


「私の顔は特異だ。失神するものまでいる。」


そういって隠していた手を取った。
賭けだった。
もし彼女が拒否したら私は、


「?変化は見受けられない。・・・ああ。分かった。」
は鳳珠に近づき顔が触れ合う所まで来た。
呆気にとられ何も言うことも出来ない。


コツン


そうしているうちにおでことおでこを合わせて


「・・・やや熱が高い。やはり今日は休みだな。」
と呟やいた。

はっと頭が動いたとき鳳珠は先ほどの光景を思い返していた。

なぜそういう行為をしたのかはまったく分からない。
だが、先ほどのは


「鳳珠。今日は休みだ。疲れがたまって熱が出ている。」


「・・・平気なのか?」


「仮面をかぶっていようが、いまいが変わらない。ならば私が変わることがあろうか?
変わったことと言えば、体調がおかしいとき簡単に調べられるようになった。
だから私は、そのほうが(素顔)いいと思う。」
らしい考えだった。


鳳珠は、自分の顔に触れた。
今は、あの無機質で冷たい感触はない。
ただ暖かな感触だけが顔に残っていた。





ちなみに



「なぜ熱をおでこではかるのだ?」
鳳珠は仮面をはずしに問うた。
まさか熱がある人物全員にしているのではと心配したが。


「ああ。私の友人がな、信頼し合える人にだけはこういうはかり方をすると教わった。」
と至極同然に答えられた。


「・・・・・・」
鳳珠は迷った。
それが嘘であることを教えるべきか。教えないべきか。
だが、自分を信頼してくれていることに喜んでもいた。


鳳珠のなかでまたの情報が加わった。
人との接し方を知らないため、時に間違った情報を
・・・主に友人から教わっている。








2007・4・22