憂いを帯びた流し目、髪を結わず流したままで青い服をきた男は、ため息を吐いた。

三兄弟から来た手紙を開いたたまま。

「龍蓮が、か。」

どうしてこんなに紅家と縁があるかの、不思議に思いながら、立ち上がり身支度を整え始めた。





。」

朝から仮面をつけた男・鳳珠と一緒に朝食をとっていると、
呼びかけられ顔を上げると、

「ココの部屋の本を好きなだけ呼んでもかまわない。
それと、もし」

「・・あの方が来たときは言ってくれ。貴陽に来たのだから言わなくてはならないことがある。
来なければ、私から会いに行こうと思ってる。」

は、一週間たってもここにいた。
一重に鳳珠の説得によるものだ。

なぜそんなに一所にいようとしない?やら、ここに不便な場所があったら言ってくれ。やら。

ついに折れたは、真実を語った。
それは、鳳珠と過ごした中で彼が信用置ける人物だと理解したからこそであった。


それから、鳳珠の行動は早く。
あの人対策から、本が好きなことも知ったので本やら、紅家の影の動きも教えてくれた。
それと、

「お前の姉が、今日家に帰るらしい。」

家族の情報。

「そうか。」
はそう一言だけ漏らすと手に持っていたお茶を飲み干した。

その顔には、何も浮かぶことがなくいつもの無表情だった。

鳳珠は、彼女が無表情の理由も知っている。
それは、彼女にとって一番の秘密ごとだろう。

それなのに、自分は。
鳳珠は、仮面に手を触れた。
無機質なそれは冷たい感触しか自分に与えなかった。



鳳珠が、宮城へ働きに言っている間。
は、本をあさり読んだり、絵を描いたりしていたりしていたが、
今日は、マントを深く被り裏門から抜け出した。

今、どう動ているのか、鳳珠に聞いた話を信じていないわけではないが
偏るのだ。一方方向しか聞いていない。

他の方向からみた話を聞きには町を降りた。




薄水色の髪をもつ整った顔立ちの男が、片手に菓子を持ちながら
ぶつぶつと呟いていた。

今の自分の待遇から養い親へ言えない愚痴まで呟いていたが。
ぴた。っと立ち止まり


「ここはどこだ?」


おかしい。本当におかしい。やっとあの馬鹿が仕事をしてくれるようになり
張り切っていたら、赤い扇を持った自分の養い親に、

「秀麗への退院祝いにこれかってこい。」
といわれ宮城から放り出された。

呼び出すことも出来るのになぜわざわざ買いに行かなくてはならないんだ?
・・・・いや、ただの八つ当たりだということは分かっている。

あの馬鹿が、秀麗にあ、あんなことをするから。
男・絳攸は、片手に持った菓子を握り壊さんとするぐらいこの原因になった奴に
怒りの衝動を抑えまずは誰かに道を聞こうと周りを見渡せば、

・・・・・誰もいない。

荒地のようなところに一人ぽつねんといるだけだった。
絳攸は、しょうがなく進み始めると、もっと人がいなそうな場所にたどりついた。

山。そして道なき道。
出て行ったのが、朝なのに今は夕暮れまじか。

絳攸は、泣きそうな気持ちを抑えて叫んだ。


「ここはどこだぁ!!」




その頃、は無事情報収集も済み帰ろうとするとなにやらいい感じの山を発見した。

そろそろ、書くものを増やさんとな。

そう思い山へ入っていくと、男の必死な声が聞こえた。
その声がするほうを見に行くと

髪に葉っぱをいくつも付けながら、かなり疲れ顔の男。
腰につけてあるものからかなり高官。

なぜ、そのような人物がここにいるのか?
その答えは男自身が語っていたので、は隠れていた藪から出て。

「・・・・・こちらだ。」
そういって男の手を引くと、何も言わずずんずんと進んでいった。

絳攸は、いきなり出てきた。何者か分からない人物に手をつかまれ連れてかれていくことに
最初は呆気にとられたが、直ぐ立ち直り。手を振り払って

「お、お前は何者だ。」

「・・・ただの通りすがりだ。お前は迷子だろ?」

「ヴ。ち、違う俺は迷子などでは。」

「そうか。道が分からないかと思っていたが違かったのか。」
というとスタスタ進んでいく。

絳攸は慌ててマントの裾を引っ張ると、
マントが頭からずり落ち、その人物の顔がありありと表れた。

少女だった。
十人並みではない容姿に、赤い瞳。髪は簡素に一本の簪に結われているだけの少女。

養い親の指導の下で瞳を見る癖がついた絳攸は見てしまった。
赤い瞳に熱い炎を抱かず、ただ純白な世界を映し出している瞳を。
魅入られそうになったが、少女はマントを被り瞳を隠してしまった。

もっと見たかったのに。そう抱いた思いを打ち払うかのように頭を振った。

初めて会うが、初対面ではないような。
どこか見知った顔に疑問がわきながらもこんな印象が深い顔を忘れることはないと思い直している間。

少女はスタスタ歩いていた。
絳攸は、そのことに気づくと急いで少女に追いつき。

「・・・・なんだ?何かようか。」

「お、俺は。」
絳攸は悩んだ。ここで言わないと彼女はいってしまうし、自分は迷子のままだ。
だが、あることを言うこと、認めることは自分の性格上許せない。

「なんだ?」
絳攸は、立ち止まり前の人物を見据えていった。


「俺の家に来い。」









2007・4・7