得がたい光があるならばそれは至高の赤。それでも奥底からにじみ出る純白の白。
それらの相対した光の輝き。




いつもと同じ時刻に主人が帰り、暖かな食事が用意された。
ただ、いつもと違ったのは。

主人がすべての食事を済ませると料理人が呼ばれた。

「これは、貴様が作ったのか?」

料理人の男はカチカチで、にもしこういわれたらこう言えと言われた通りに言った。

すると、主人は仮面越しでも分かる柔らかな雰囲気で、

「これほどうまい料理は食べたことがない。大変美味だった。次も期待しているぞ。」

料理人はあっけに取られた。
だが、頭を動かすと、直ぐに自分の過ちに気づいた。

「ちが

だが、料理人のなかで悪心が働いた。自分の手柄にしてしまえばいい。
そうすれば、料理長までいけるかもしれない。

料理人は、主人に真っ直ぐ目を向けると口を開いた。




は、料理人が用意してくれた部屋でのんびり絵を描いていた。
あの男の気持ちを汲んで、料理を作ったが、
昔それで追放され、殺されかけたことを覚えている。

良ければ、誰の目にも付かず一週間でここから出れるが、
悪ければ、あの男の変わりに料理を作り続ける羽目になる。
だが、あの純粋な目の持ち主は、自分の考えている以外のことをしそうだ。

もう一つの可能性。
それは、

「ただいま。主人は喜んでくれたよ。」

「良かったな。」
は、自分の思うとおりにことが運んだのを見て筆をおいた。
この男ならこれを選ぶと思っていた。

そう。

「それで、「失礼する。私はここの主。黄 奇人だ。」」

少ないもう一つの可能性を。

料理人は真実を主人に話した。
なんでそうなったかの理由や、そしてその結果まで。


仮面をつけた男が入ってきてもは驚きの顔を映さなかった。

「はじめまして。」


「・・ああ、今日の料理大変おいしかった。それに私の家人を助けてくれたこと感謝する。」

そういって仮面をつけた男、黄 奇人は頭下げた。
自分のことに初対面で驚かない人物にやや驚きながら。

「気にしないでください。助けたのは自分の責任もありました。」

開いた扉から、風が入り込み書きかけていた絵がすべて飛ばされその一枚が黄 奇人の
足元へ落ちた。

「・・・・・これは。」

それを見るなり固まった奇人に対し料理人は、絵を見て何か思い出したらしく。

「あ、そういえば絵の代金払ってなかったな。」

「いい。あれはお前のものだ。それに代金なら、ココの宿泊代や料理代でもらってる。」

「え、だって作ってもらってるわけだし・・・やっぱ悪い。」
それに、料理といっても自分の腕ではたかが知れている。

「悪くなかった。」
は、黙々とすべての絵を集めるとポツリと呟いた。


料理人はその言葉一つで自分がやってきたことが正しかったと思わせるくらい
なぜだろう、少女から放たれた言葉に重みがあった。


そして、ずっとさっきほどから固まっていた奇人は、
ハッと何かに覚めたようにその絵を持ちに迫った。

「お、おまえは、いや、貴方は『』でいらっしゃられると?」

「ああ、私は『』だ。」


奇人が次に言葉を言う前に料理人は驚いて、自分の持っていた絵を懐からだし。

「え〜〜。本当に?やっぱ料金払うよ〜。まさか『』なんて思わなかった。
ただ、皆が寄ってたかって買っていって自慢してるから。まさか『』だったなんて!」

・・・・運のほうが強い男なんだな。やはり。


その後。この場所でいい。といったが主人・黄 奇人が許さず、
立派な客室へと移動した。

そこでずっと被っていたマントを取ると。
奇人は、しばらく動きを止めた。

「・・・・・・若いな。その年で旅をしていたのか?」

「色々と知るためにな。」

言葉使いは奇人が普段通りでいいと許してくれた。

「家族は?」

「いる。だが、詮索は無用だ。鳳珠。」

真実の名前を教えられた。というか絵を描くときに後ろに名前を入れて欲しいといわれ
そこで本名を知ったわけだ。
どう呼べばいい?と訪ねるとその名前でいい。と言われた。
鳳珠は、かなり『』の崇拝者らしく。気に入られている。

「・・・・分かった。」

鳳珠は、一方考え込んでいた。
会話のなかで見え隠れする少女の賢さ。それにこの容姿。
どこかで見たことがあるような気がしなくもない。
が、一度見たら忘れなさそうな容姿をしているし勘違いかと思い直していると

「鳳珠は、官史・・いや、上の位のものだな。」

「ああ、尚書だ。」

「そこに積み上げられている書簡からだ。」

そんなに自分は顔に出ていただろうか?
質問する前に答えを先に言われた。

「・・・だからか。」

は、鳳珠に面識はないはずだが懐かしい気配を感じていたことの理由が分かった。
あの人も、たしか尚書になっているはず。たぶん同期だから。友人・・・と言ったところか。

自分たち家族以外はぺんぺん草しか思っていない人物が他人にかまうことなどあるのだな。

「なにがだ?」

「懐かしいと思っただけだ。私の父も宮城で働く文官だった。」
そういっては、書簡を覗き込むと。

「・・・・・・ココ。それとココ。間違っているぞ。」

鳳珠は、その書簡を覗き込むと確かに言われたとおり間違っている。
何十桁の計算をすぐさま出来るとは。
鳳珠は、なぜその若さで旅の中、が生き残ってこれたのか。分かった気がした。

彼女は、自分が良く知る人物と同じ。


天の才たる子供だった。


鳳珠は目の前にいる少女のその稀有な能力を純粋に欲しいと感じた。








2007/4/5