悪雲に包み隠された雲をさえぎるような雷が走った。
「旦那様。産まれました。可愛い女の子です。」
それまでそわそわして落ち着きがなかった邵可はそれを聞くなり
愛する人の元へと走った。
扉を開けるとそこには愛しい人薔薇姫と生まれたばかりの一人の赤ん坊がいた。
邵可は薔薇姫の下へいくと
「薔薇姫。頑張ったね。見て僕たちの可愛い子供だ。」
「背の君。将来この子は美しくなるぞ。」
「もちろん。君の子供だもの。名前はどうする?」
「ずっと考えていたのじゃが、このこの名前は
それから4年。
「。〜。どこじゃ?」
「はい。かあさまなんでしょう?」
顔は薔薇姫と変わらず今は幼くかわいらしい顔をし
瞳は父親譲りの赤い瞳を宿した
4歳児とは思えない受け答えをしたのが紅 紅家直系の次女。
「うむ。秀麗がの今日は皆一緒に寝ると言っておったが熱が出ての。」
いいずらそうに薔薇姫はに話した。
「わかりました。ねぇさまといっしょにいてあげてください。」
「・・・すまんの。」
「?なぜあやまるのですか。」
「秀麗ばかりかまっていてとあまりかまってやれぬ。」
薔薇姫はすまなそうにを見た。
「なにをおっしゃてるのです。ねぇさまはからだがよわいんです。
わたしよりもゆうせんさせるのはあたりまえです。」
なんだそんなこととばかりに顔もかえずはたんたんと語った。
「そうか、。お主は。」
薔薇姫はのその様子を見ながらある結果に行きつき
それから少しつらそうな顔をした。
その様子に理解が出来ないはただ母親の顔を眺めることしか出来なかった。
「奥様。お嬢様が。」
遠くから家人静蘭の声が響いた。秀麗の様態が悪くなったようだ。
「・・・今行く静蘭。。きっといつか分かる日が来る。」
「?」
そういって出て行った薔薇姫を不思議そうな顔をしながら見送った。
そして、時が来た。
その日もまた雷雨が降っていた。
家人は慌てて部屋を行ったりきたりで医者やらなにやらの
出入りも激しかった。
は一人その部屋を訪れた。ちょうどそのとき皆でではらっていなくなっていた。
「かあさま。」
「か。すまんの。もうわらわは長くはない。」
「そうですね。」
「・・・悲しいか?」
「なぜです?わたしもかあさまもいずれいきつくとこはおなじです。
いまのわかれはこのせかいでのわかれです
わたしがそちらにいったときにまたあえます。だからいってらっしゃい。」
「。そうだな。また会えるな。特にお主とは。わらわの血を色濃く受け継ぐお主なら
だが、生きているうちに色々とお主に教えたかった。」
「薔薇姫!」
父親が入ってきたところでは後ろに下がった。
「・・・・・背の君。頼むぞ。守ってくれわらわたちの家族を。」
「ああ。守るよ。」
「秀麗あの子はきっと自分の夢をかなえる。」
「ああ。」
「静蘭は昔の過去にとらわれずに生きていける。」
「ああ」
「そして、はきっと・・きっと感情を持てるようになる。」
「・・ああ。」
「背の君、ありがとう。お主といられて幸せじゃたぞ。」
「私もだよ。ありがとう。」
「愛してる。我が唯一の愛しい人。」
そういって薔薇姫は邵可の握っていた手から力を抜かし目を閉じた。
「・・・私も愛してるよ。私だけの薔薇。」
邵可は涙を流しながら落ちてしまった手を握り締めた。
それから少しも経たないうちに静蘭が入ってきて、その光景を眺め静かに涙した。
「かあしゃま」
いつのまにか病床から抜け出した秀麗も邵可に近づいていき。
動かなくなった母をゆすりながら死を理解し
大声で泣き喚いていた。
だからこそ
その場にいたは異様だった。
涙を流さない自分には理解した。
母が言っていた意味を、自分には感情がほとんどないことを。
涙を流し続けている家族を横目で見ながらはその部屋を後にした。
今後の動きから
家人が家のものを盗み逃走する事も読めていたが
幼い自分の出来ることを把握し母の遺品で持てるだけもって部屋へ帰った。
あの部屋には帰れなかった。
自分だけが違うのだと言われているような気がしたから。
2007・3・13