懐かしい香りがした。
それは昔、日常的だった香り
は静かに目を瞑った。
時に流されるままに生きることがなかった昔。
時に流せるままに生きなければならない今。
どっちが、滑稽かな?
は鬼と出会ってそれからしばらして、
時は動いた。
「来たか。」
は光り輝く方向へと飛び立った。
「私と一緒に来い!神子よ。」
「私は、」
「あかね!行くな。」
「神子殿近づくのは危険です。」
「八葉か。お前らごときで私を止められるか?」
「問題ない。」
・・・・つまらない。くだんない。
茶番に付き合ってる暇はない。
どちらにつくか、などあの子がいる場所に決まっている。
は、かの鬼の元へと降り立った。
鬼は戦闘を終え移動し一人だった。
「鬼よ。」
「お前は、・・・・また会ったな小娘。なんだ私を咎めるか?」
「いいや。私の探し人のところに案内してくれ。」
「なんだと?」
「・・・・・破壊の神だ。」
「お前は、何者だ?」
「分からない。だが、黒き龍を守るものそれだけは確かだ。」
「・・・・連れ行こう。」
鬼はを抱き上げ瞬間移動した。
そこは薄暗い洞窟で炎の火だけが妖しく色ずいていた。
鬼はを下ろし尋ねた。
「小娘。名はなんと言う。」
「そういえば約束していたな。私はだ。鬼よ。」
「・・・・・・アクラム。」
「なんだそれは。」
「私の名前だ。鬼では分かりずらいではないか!」
「分かった。アクラム。」
「なんだ?」
「特に意味はない。」
「だったら、呼ぶな。」
アクラムは、目の前にいる少女に戸惑った。
初めて会ったときもそうだが、この少女は自分を壊すのがうまい。
手を額に置きため息を吐いた。
「アクラム。」
「・・・・・なんだ。」
「蘭はどこだ?」
アクラムは驚いた。感情なんて顔に出しそうにもなかった少女が
不安そうなそれでも嬉しそうな顔をしていた。
なぜか、アクラムの心に後からじわじわと来るような鈍痛を感じた。
蘭が、元のままではないと知ったら・・・この娘は。
馬鹿な。私が人を心配するなどと・・・ありえない。
ただこいつが計画で使えるかどうか心配なだけだ。
アクラムは意味深な笑みをたえ、
「こちらだ。」
そういって奥へと進んでいった。
暗い洞窟の中その少女は瞳に何も映すことなくそこにいた。
は、蘭の姿を一目見異常なことは分かったが、駆け寄ると。
「蘭。・・・蘭。」
は蘭に暖かく柔らかに語りかけた。
アクラムは、が絶望に色ずくことを予期した、けど、彼女は。
「大丈夫。今度は何があっても離さない。守るから。」
そういって抱きつく姿に、アクラムは色々な感情が混じっていた。
その中で一番強い思いが、
これは使える。
そう思い、アクラムはに語りかけた。
「龍神の神子だ。それさえ手に入れば蘭は元に戻る。」
「・・・龍神の神子。」
「そうだ。私の元につれてきさえすれば、」
「蘭が元に戻る?・・・乗ろう。アクラム。」
そういったの顔には決意が浮かんでいた。
アクラムはその姿に少しだけ痛みを覚えた。
だがそれを振りきり、妖しい笑いをしながら、手を引いていった。
の手は傷だらけだったが、柔らかく暖かかった。
2007・4・2