蘭。私の主人にして唯一の友達。
私は 。
私たち一族は代々武士の家系で今も根強く昔の習慣が残っている。
私たち一族はたった一人のために生きるように、守るように幼少のときから訓練させられている。
一人を命に賭けて守るそう、たとえば戦う相手が肉親でも恋人でも伴侶でもだ。
職種は色々だが大体が力を必要としているところとなる。
ある物はボディーガードまたあるものはマフィアお抱えの暗殺者。
私たちは一人のものに仕える。
自分が決めた人ただ一人に。
私は蘭に仕えると決めた。
命を賭けて守ると、
それなのに私はこの世界で蘭を失った。
今でも鮮明に覚えている。
満開の桜の下で、蘭の長く黒い髪がたなびいていた。
黒と薄桃色の色が織り成す光景は一枚の絵を見ているように美しく、
蘭の髪についた桜の花びらを取ろうとしたとき。
強い一陣の風が吹いた。それは別れの風だった。
桜は意思を持ったかのようにうねり蘭が視界から見えなくなり
全てが終わったときには遅かった。
蘭はいなくなっていた。
無我夢中で探した。
それこそわたしの持てるもの全てを使っても蘭は見つからなかった。
人は困ったときには神だよりというがまさにその通り私も神に頼るしかなかった。
行き着く先は誰であろうと同じなのだ。
私の力は無力であった。
ただ、私の唯一の人物を救いたいだけのことができないなんて。
その帰り道私は壊れかけていた小さな祠を見つけた。
私はそのとき自分にその姿を重ねたのだろう。
そっと触れた。
すると私の体は光に包まれこの世界から煙のように消えた。
目が覚めるとそこは白い空間。
何もない白だけしかない空間。
「ここは、私は祠に触れそして」
【目が覚めたか選定者。】
「誰だ。」
【我らは太古より人々に神と崇められしもの。選定者よ。時はお主を選んだ。】
「どういうことだ?」
【それは自ずから分かるもの。ただ答えられよ。受けるか受けまいか?】
「受けなかったらどうなる?」
【なにも。ただ、お主の求める人には永遠に会えぬ。】
「!受ければ蘭に会えるのだな。」
【是。ただしお主は だ。それでも受けるか?】
「受けるに決まってる。私が、今生きているには蘭のおかげだ。」
【ならば行け選定者よ。太古の歴史が眠り神の眠りし地へ。そして選べ。未来を。】
言い終わると白い空間は黒い闇が占め自然がありのままに残っている地へと変わった。
「蘭。必ず見つけ出す。」
その思いを胸には一歩その地を踏みしめた。
2007・3・20