赤い実が弾けた。パンと弾けとんだ。
赤くて、大きい
こんな色初めて見た。とても綺麗な赤い色。
それが何か分からなくて、よくよく目を凝らして見れば、


それは人の首だった。





ごろんと転がっているのは、私を殺そうとしたもの。
なんで首だけになってるのか、
なんで血がべっとりと自分についているのか、分からないことだらけで。
ぬるっと暖かい液体に触れて、半分になった槍の先端に同じものがついていた。
ゆっくりと記憶の糸を解いていけばしっかりと手に残る肉を引き裂いた感触、最悪だ。

こみ上げてくる吐き気に胃の中を全て洗浄するのではないかというくらいの量と、
生理的な涙が出てくる。
すべてがすっきりとしたときには、言いようの無い後悔と恐れ。

「私が、殺した・・・のか。いいや、殺した。覚えている、手がしっかりと殺してる。
なんで、私は」

今度は生理的じゃなくて感情のままに涙を流した。
それからさっきからずっと立っている女に、こんな目に合わせた女に、苛立ちが向かう。
血だらけの槍を放り投げて、思いっきり襟を掴んで地面に叩きつける。
興奮しきった私を女は冷たい目で見ていた。
感情なんてない人形みたいで人の形をした化物だと思った。
手をグーに強く握って下に落とそうとしても女は目すら閉じようとしない。
どこかそれを望んでいるように微笑んだ。

「・・・・・・なんで殴らないの」

「・・・・・・殴られたいと思うものを殴る趣味ないから」

一気に馬鹿らしくなって女の体からどくと首に近付く、開いている目を閉じさせて手を合わせて祈った。
祈りながら泣いて謝った。


ごめんなさい。ごめんなさい。


---次は殺されないように。


--------次は幸せであるように。


--------------------ごめんなさい。


謝っても許されはしれないけど。
涙を拭って、落ちている槍をみた、血の海のなかでそれは確かに血をすすっていた。
気持ち悪い。これが神だと言うならば、悪魔の方がいっそう紳士だ。
捨ててしまうはずだったのに、私はそれを手に持ちそこを出ようとした。

「待ってよ。待ちなさい」

「なに、まだ用があるの?」

「それは呪いのしなよ。あなたはもう使ってしまった。殺す前に声を聞いたでしょう?
あなたはそれを持ち続けなければいけないし、人を殺しつづけなければいけない。
じゃなければ、命を奪われる。だけど、一つだけ助かる方法があるの」

「お前はこれ以上何がしたいんだ。助けろとか言うし死ねばいいといったかと思えば
人を殺させてあまつさえ、今度は呪いだと、助けると?信じると思ってるのか?
お前の目的は何なんだ!!」

「・・・・・・最初のが本当よ。ルシ様を助けてほしいの。
私ではその槍に触ることができても拒絶されてしまう。
その槍は人を選ぶ。あなたは選ばれた使い手として。
私は選ばれなかった、力が欲しくても男には負けるし、私にはあなたのような能力もない。
恨まれても殺されてもいい。ルシ様を助けてよ。今のあなたならできるの。
力があるもの。お願い、助けてよ」

女は地面に崩れ落ちたその姿だけはただ一人の人間を思う人の姿で
彼女の本来の姿の様に見えた。

「ルシに何かあるの?」

「あのかたは大将を殺して火をつけ死ぬつもりなの。私はルシ様ほどの力がないけれど
予知夢が見える。本当よ!」

彼女の必死な表情からは誰からも信じてもらえなかった、
いいや信じてもらえないと思っているようだった。
確かに誰も信じないだろう、
ルシは大将に愛され重宝されわがままのかぎりをつくしていたのだから。

でも、誰にでも二面性はあるもので。



女が殺されてもいいと思うほどに、私をここまでしたのが絵空事だなんて思えなかった。


「分かった。ルシを助けよう。だからお前は住人を非難させろ」

もう、やけくそだったのかもしれない。
人殺したし呪われたし、この際いくつくところまでいってしまおう。






ちょっと前まできていた場所を歩く。この場所がいかに大事かわかるほどの造りで
床は汚れていることはない。学校の廊下とは大違いだ。
今その場初をブーツで歩いている。泥がついているブーツで廊下を汚しているわけだが
燃えるらしいからいいかと、納得しながら歩いていた。
腕のなかには二本になってしまった槍があって、まじまじとみる。
さっきまであった血はなくなり今では黒色に戻っている。
やはり、これは呪われている。人の生き血をすするとは、
がしかし、呪いのアイテムとして折れるとはどういうことだろう?
呪われて最強武器っぽいのに脆いって使えなくないだろうか。
しかも、私の命までかかっているらしいし・・・・・・すべて女の嘘なきがしてきた。
思えば女は嘘つきだ。最初から最後まで嘘で、槍はただの安物で、ちょっとしたマジックで
ルシは助けをもとめてないで死ぬつもりもなかったらどうしよう。

そう思えば歩みも遅くなってくる。

やっぱり、逃走しようかな・・・・・・そう思ったときだった。
目の前から炎が上がる。空気が乾いて木造だからすぐ火がまわるな。
なんて妙に冷静な感想を思うほど自分がパニックになっているのが分かった。


「なんてこった、っちょ、ルシーーーーーーーーーー!!!!!!!!」




出来れば夢のなかで終わらせてほしかった。









2009・2・26