「こら、。なにしてるんだ」


うるさい女だ。飯を食って何が悪い。


、そこは違う」


だから、なんでこうなるか一から教えろよ。コラ


。お前はやる気あるのか?」


あるわけないだろう。勝手につれてこられたんだぞ。


〜〜〜〜!!!!」


私よりも小さくて、可愛らしく、消えてしまいそうな儚さで、
恐ろしいくらいの美少女が口にする。
こうしろ、ああしろと。
外見にそぐわないわがままっぷりで、自己中で、歪みのない命令慣れ。
その度に耳を手で塞ぐものの、巫女である彼女の声は
とても透き通ってて、手を通過して直接耳に響く。




私は今、巫女とか何とか言う少女・ルシを背負って山道を歩いている。
いくらルシが軽いといっても紙でできているわけではないので、段々と重く感じる。
ルシは私がヒィヒィいっている背中から
早くしろとか、まだなのかのろまとか、文句しか言わない。
だったら自分の足で歩けといえないのは、
ルシが足が悪く、しかも生まれながらの盲目だからだ。
彼女の世界には光が感じられないはずなのに、ちゃんと私の顔を覗き込んでくる。
いわく、巫女ならば気配くらいお手のものらしい。基準がよくわからない。
イライラとしてきた私は目の前にあった木の枝を蹴り倒して、背中にいるルシに言う。

「あ〜もう、うっさい。わがまま娘が!人を足代わりにするな」

「何言っておる。お前がここにいられるのは全部ルシのおかげぞ」

「うぇぇい。恩着せがましく、ありがとうございます」

答えが気に食わなかったらしく、
ルシは、私の髪を引っ張りながら、くどくどと説教を始めた。
こうなると長い。突っ込むと余計長くなるので、放置という方法をとる。


「お前は、どれだけルシに助けられたか、一から説明してやろうか?
初めてあったときに、ルシが一言言ったから、大将に殺されずにすんだのだぞ?
名前を聞いてるのに、答えないからルシが

名無しの権米なのでしょうぞ。っといって笑いをとれて、首がつながってるのだぞ?

次にルシの代わりの舞姫に、とつれられてきたお前が、
まったく踊れず、やる気もないのに、
ルシが教えるといったから、どっかに捨て置かれることがなかったのだぞ?
なのにお前ときたら、文句ばかり。ルシをもっと崇めたらどうだ?」

「はいはい、だからこうして野原につれてきてるでしょうが」

私はなにもない野原に、敷物をひくとそこにルシをおろす。
自分が彼女を壊れ物のように扱っていることに、思わず涙しそうになった。
確かに、ルシが言ったように私には何もできない。
舞だって盲目であるルシのほうが上手い。

「お前にできることなぞ、ルシの足がわりしかない。
きっとお前は、大柄な、男のような女で、器量もさぞ悪いのだろうな」

「・・・・・・見えてないのに結構なこというね」

悔しいことにルシに言われれば、何も言い返すことができない。
ルシは、テレビの女優とかそこらのアイドルよりもウン万倍、綺麗でかわいい。
どうすればその細い腰は出来上がるのか、
そしてその細さで胸と尻はちゃんと綺麗な形にしあがってるのか。
謎でならない。
昼食を取り終われば、ルシは見える範囲にいて風に当たって楽しんでいる。
そうしていれば、わがままだということも許してしまいそうになるほど綺麗だ。
ぼうっとご飯を食べた後の特有の居心地のよさを感じながら、
頬づえをついて小さな疑問を口にした。

「まったく分からないな」

「ならばルシ聞け!ルシに知らないことはないから、
お願いしますといえば教えてやらないこともない」

急にこっちを向いて言い放ったルシに目を開いて驚く。
かなり距離はあったのにルシには丸聞こえだったらしく、こちらに歩いてくる。

「ルシって耳いいよね」

「まぁ目が見えないからな」


愚問だったようだ。しかし、そんなことを気にせずルシは私に質問を要求する。
どうでもいい内容なので、言うほどではないというもののルシのしつこさに負けた。
ため息と共に私は自分の疑問を口にした。


「ルシってさ、なんでこんなに覚え悪いし、やる気だってない、
ちんしゃくで大柄な器量も悪い女にさ。こんなにしてくれるわけ?」

一瞬、ルシが目を見開いた気がしたが。

「お願いしますがないぞ」

きっと勘違いだろう。

「・・・・・・おねがいします。ルシ様」

「様は余計だ。一言で言うならお前は変だ。ルシが変だと思うものは少ない。だから」

「なるほどね」

おもちゃってことかね。本当にこの時代の人たちが考えることは分からない。
よっこらせと腰を上げれば、ルシが私を見ていて、小さな声で何かを言ってたけれど
ルシのように耳が良くない私は聞き取れなくて

「?なに?」

「〜〜〜っさ、さっさと足になれ!この馬鹿者」


はいはいといえば、はいは一回だといいながらも全てを委ねてくる。
この時代の人はよく分からない。でも、ルシのことはなぜか嫌いになれなかった。
思えば、一番穏やかで、緩やかな時間だった。


ある夜。
いつもならば綺麗な部屋の主であるルシが寝るのを確認して
馬小屋みたいな私の寝る場所に帰るはずだった。

おやすみと言って今日も容赦ない扱きに耐えた自分の体をはやく休めようと
急ぐ足をルシが止めた。

、今日限りでお前はルシの傍にいなくていい」

そう言ったルシの目は氷の様に冷たくて、







だから、何でって言うことも出来ずに分かったと言うことしか出来なかった。






2009・2・21