今日、金の髪を見た。ああ、あの人もここにいるのかと
何度も何度も見かけるけれど、私は彼を探すことはしなかった。

神子が舞った日、私は彼女を見かけた。見かけたような気がした。
その場所へ急いでいってみたものの、砂利道だけが続いていた。
熊野に入って、彼女らしい人物を見たような気がした。
昔から、気配に敏感であるからもしかして彼女が私を避けているかもしれないと思ったが、
抜けているところもあるので探してみた。


彼女を忘れた日はない。それは神子のことだ。
彼女を忘れよう思わない日はない。それは彼女のことだ。
ふっと庵に帰るたびに思い返してしまう。
短い間の滞在者で、まるで猫のようなきまぐれで表情がコロコロ変わる娘。
あの後彼女が帰ってこないことに気付いた私は、黙って見送ってしまったことを後悔した。
春になれば、一緒に花見でも楽しもうかと思っていた。
お団子を喉につめないように言わなくてはとか、服はあれでいいと言ったけれど、
年頃の娘のものをと思っていた。押入れの中には密かに買ったものが隠れている。
何度それを捨てようと思ったか分からない。
そして、一度だけ神子のため以外で逆鱗を使った。あの子に会うために。
それほどまでに思わせる彼女が得体の知れないものだとしても。
会いたかった。



俺は無理やりと一緒に外出した。
約束どおり、望美に会った。望美も会いたがっていたし、
だって会いたいと俺は勝手に思っていたんだ。その結果がコレ。
望美に先生と呼ばれた大きな身長と金の目が印象的な美しい男に会ったときだった。
二人とも目を合わせたまま見詰め合っている。


「・・・・・・」


「・・・・・・」



もしかの、一目ぼれか!!とやきもちするほどの時間二人は見詰め合っていた。
声を先に出したのはだった。

「久しぶりだね。リズ」

「ああ、元気そうでなによりだ。

そう言って二人は目を細めた。

はそれから、最初の無理やりが嘘だったかのように、頻繁にこの館に来た。
静かに座る先生の膝の上に、は定位置と言わんばかりにそこに座っていた。
正直、

「気に食わないって顔してるよアンタ」

ちらりと横を見れば赤い髪が目に映る。

「ヒノエか」

沈黙。

「あの二人は、昔なじみらしいよ」

「聞いた。でもあの懐きようおかしくないか」

「オレはアンタのほうがおかしいと思うけど」

何がだと聞く前にヒノエは言葉を続けた。

「好きな女が誰かのものになるのを止めようとしないのさ、アンタ」

「オレとはそんなんじゃない」

「ハイハイ、余計なお世話ってのは分かってるけどさ、盗られたって知らないよ」

そのまま立ち去って行ったヒノエの言葉が頭を廻った。








2009・9・19