冷たいよ、寒いよ、痛いよ、泣きたいよ。
その言葉を口にしてしまえば私はこの世界で一人立っていることなど出来ない、
周りの優しい人は私に大丈夫と声をかけてくれるだろう。
それは私を戦場に行かせなくさせるだから、私は決して口にしない。
例え、それが今私のすぐ傍にいる人でも。


「神子に会った」


はい、ページを閉めて下さい。これでもう、終わりです。
と教師が言う終わりに良く似ていた。
何かが私の中で終結した。

私と知盛と将臣の三人で、外交のために訪れた。
理由はと言えば、中立であり続けた、熊野への視察。
源氏と平家とどちらにつくのかそれを聞きにいく。
オレとしては、熊野には中立でい続けて欲しいんだ。と甘い言葉を吐く将臣らしさに
小さく笑い、天を見れば綺麗な空に清清しい空気木々の木漏れびが優しくて、確かに
この美しい風景が続いていて欲しい、戦火に巻き込みたくないと
言う将臣の気持ちが分からなくもなかったけれど、
私は《鬼姫》として甘いことは言えないし、時代の流れは確実に源氏を飲み込み、
消え去ってしまうことを知っている平成の子供として、敢えてその流れに逆らおうと思う。
それの一歩として、中立であった熊野をぜひともこちらについて欲しい。
駄目ならば、平家につくことは阻止しなければいけない。
懐に入っている自身の武器をぎゅっと握り締めた。
それから、知盛を見る。彼は相変わらず眠たそうな目をしていてうつらうつらとしていた。
彼は、あの日彼女に出会い彼女と剣をあわせたと聞いた日。
彼は退屈そうな目を一転して、目をギラギラと輝かせた。
気に入ったのだとうっすら笑うその姿に、それが、定められた運命であるようだと、私も笑った。
悲しいと、取られてしまうと、もう二度と私のところにいてはくれないのだと、正直そう思った。
だけど、彼は今でも私の傍に居る。
それから少しして私は彼のモノであって、彼は私のものではないことに気付いた。
前なら、私は逃げただろう。リズの時と同じで、彼が私を見ないことに子供の心で
そのくせどこか大人だから泣くことも訴えることもせず、そのまま消えただろう。
ならば、なぜ未だ私はここにいるのか。あの時と違い私には背負うものが多すぎる。
部下もいる。だが、そんなことは建前で、部下なら私とともに生きてくれるだろう。
と考えるよりも先に彼らに言われたのだ。
何があっても、平家を裏切ることがあっても、
付いていくし、どちらも嫌で平和に暮らして生きたいと願うなら、
我々も剣を捨て共に生きていくと。彼らはよく私のことを知っている。
私は、見栄っ張りでどうしようもなくカッコつけてしまうこともあるけれど、
一人でも大丈夫といってしまうけれども、
本当は一人はとても寂しくて、立っていられなくなる事を。いい部下を持った。
ならば、なぜ?私はまだ過去になりつつある未来を見ているからだ。
彼ら、いや彼は運命とやらで神子と繋がっているらしいだから・・・所詮打算しかない。
部下がいくら私を愛してくれても簡単に捨てれてしまうほどの酷い女だと自覚はしている。
目に広がるのは、ブルー。

「おい、

「・・・・・・何」

「目を開けて寝るなよ」

「うん、ここどこ?」

「宿だよ。宿」

私は思考の海に泳ぎに行っていたらしい。なかなか帰ってこないことを心配した
母親(将臣)と父親(知盛)に見つめられていた。
母親は心配して、父親は疑わしげに。
子供は二人を見つめて一言、ごめんなさいを口にした。
そしてお腹が減っただ。そしたら二人ともどこか安心して笑う。
その姿に安心して私も笑うのだ。


ああ、潮の香りがする。








2009・9・19