とても綺麗な人を見た。
将臣くんと夢で約束して逢えるって分かってとっても嬉しかった。
知らない場所に知らない人達、しかも戦いに巻き込まれて『龍神の神子』
だなんて、大層な名前までついちゃったんだから。
譲くんも傍にいてくれたけど、やっぱり弟との感覚が抜けなくて、
同じ年でどこか頼れる将臣くんがいるって知って逢えるって分かったら、
足も自然と速くなっていた。
「はやく、朔ー」
「待って、望美」
ここで知り合えた、朔を急かして望美は、階段を駆け上がった。
一番後ろは、ゆっくりと歩いて話している九朗に景時がいて、
神子待ってと白龍先輩早いですと譲がいた。
皆にはやくと声をかけて先に目当ての場所に行くと、
そこで、私はとても綺麗な人を見た。
前に流した長い黒髪を三つ編みにして片目を覆い隠している。
目は片方しか見えないけれど、大きな瞳は黒くて透き通ってて、
肌は白くて、唇の赤さが際立った、
自分よりも年が上だらう、大人っぽさを感じる。
けど、蒼い髪の男性と笑う姿は子供のようで、
桜の花弁が、彼女をより美しく引き立てていた。
蒼い髪の男性を見て現実に戻され、たぶん彼であろうと名前を呼んだ。
そうであって欲しかったのもある、彼女を紹介してほしいと思ってしまったから。
やっぱり思ったとおり、自分が知っている幼馴染で、少し大人びていたけれど、
中身は彼のまんまで安心して、
綺麗な女性は、 というらしい。
将臣くんに向けての笑顔と違った綺麗で艶やかな笑顔。
綺麗って言われて顔が真っ赤になるのがわかる。
さんのほうが綺麗ですといいたくても、照れて言えなくて、
白龍に真剣な顔で言われて、もっと恥ずかしくて、
さんはいなくなっていたから、周りを見渡してみる。
譲君は、将臣くんと話していて、九朗さんと景時さんは、二人で話しながらも、
本当は横目でさんをちらりとみていて、
さんは、そんな視線に気付いたのか、二人に微笑を向けた。
二人は、すぐに視線を逸らしたけれど、ちょっと頬が赤いのが分かる。
それから、さんは、どこか遠くを見ていて、表情が抜け落ちた顔に、
桜に連れていかれるんじゃないかと思うほどの儚さでかけよりたいけど、
どことなく誰もを拒否しているような、
それでいて綺麗な光景で近づくことさえも出来なかった。
白龍が行ってくれてよかった。
私が言ったら、彼女はあんな風に笑ってくれなかっただろう。
さんはきっと、子供好きなんだろう。
どこと優しい眼差しで優しい手つきで白龍をなでていた。
「おーい。こっちに来いよ」
横にいる将臣くんが急に大声をあげて、さんを呼んだ。
さんと白龍は手を繋いだまま、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
将臣くんに、白龍と違う笑顔を向けて、
私、彼女と仲良くなりたくって、それより先に仲良くなっていた将臣くんが羨ましくって
「ずるい」
といえば、前よりも大きくなった手で頭を小突かれた。
「もっと上がいるんだよ」
言っている言葉が分からなくて、口を開く前に将臣くんは、もはや横にいなくてさんの
横にいた。それから、いい笑顔で、私たちについていくことを言って、さんの綺麗な眉が動けば、
一緒に行こうと言うとさんは、素早い動きで将臣くんの頭を叩いて
「馬鹿が」凄い形相で、睨んでいた。
なんて、野生的で素敵と朔が呟いていたのは聞かなかったことにして、
一緒にまだいたいから、
「お願い、さんダメですか?」
ちょっと瞳を潤んで上目遣い、さんがたじろいだのが分かった。
「あ、あの私ももっとあなたとお話したいのですけれど」
急に大声を出して徐々に声を小さくさせて顔を真っ赤にさせた朔に、
「私も、ともっと傍にいたい」
ダメと子供特有の可愛いさで近寄る白龍に、
さんは、髪の毛をくしゃっと掻き揚げ、大きなため息を吐いた。
横では将臣くんが笑ってる。
「ハハハ、どうやらお前の負けみたいだ」
嬉しそうに笑う将臣くんを睨んで、私たちのほうを向いて仕方がないと笑って。
「どうぞよろしくお願いします」
これからが楽しみでしょうがない。さんがいればきっと何かが変わる。
2009・6・22